農業機械用オイル

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オイルは、エンジンやミッションなどを保護する潤滑油、そして油圧機器を作動させる作動油としての役割があり、様々な農業機械に使われている。

農業機械で使われる主なオイルは、エンジン・オイル、ギヤ・オイル、作動油であるが、使用箇所や使用条件に合わせて、それぞれ適合したものが使われる。

潤滑油の働きと粘度
オイルの種類
各社純正油一覧表(日本農業機械工業会)

関連記載

エンジン・オイルの確認を長期間しなかった結末

第6回:トラクターのオイル交換について
第13回:田植機のオイル交換について
第21回:コンバインのオイル交換について
第28回:トラクターのエンジン・オイル交換について


◎潤滑油の働き(作用)と粘度



働き



オイルの働きは以下の作用がある。

オイルは、使用時間に応じて汚染、酸化、腐食し性能が低下するので、定められた時間で必ず交換する。

減摩作用
機械の摩擦部分はどんなに精密に仕上げても凸凹があり、直接接触するとむしり合って磨耗する。
また、凸凹がないとしても固体が直接接触して相対運動をすると分子間引力により固体摩擦を生じる。
そのため、摩擦部分に油膜を張って液体摩擦に変えることにより磨耗し難くしている。
冷却作用
摩擦するところは必ず熱を生じる。
そのため、摩擦や燃焼熱などによって生じた余分な熱を吸収している。
密封作用
シリンダとピストンの間は、ピストン・リングに入り込んだオイルが油膜を張り、圧縮漏れや燃焼ガスの吹き抜けを防いでいる。
緩衝作用
ベアリングや歯車など荷重がかかる部分に油膜を張り、圧力の伝道面積を増加させて単位面積当たりにかかる力を軽減させて衝撃力を和らげている。
防錆作用
金属に油膜を張り、空気、水分、腐食性ガスなどの錆の原因になるものから触れないように守っている。
清浄作用
金属粉、カーボン、酸化物などをオイル中に浮遊させて摩擦部分を清潔に保っている。
これらの不純物はオイル・フィルタによってろ過される。

粘度



オイルには多くの必要な性状があるが、粘度はもっとも重要な性状である。

粘度の高いオイルは金属の表面に作る油膜が厚く、大きな荷重を支える力がある。

しかし、その反面オイルの内部摩擦が大きいので動力損失も多い。

反対に粘度が低いと内部摩擦は小さいので動力損失は少ないが、金属の表面に作る油膜は薄いので減摩作用が不十分になる。



◎オイルの種類



エンジン・オイル



エンジンオイルは、潤滑(減摩)作用、密封作用、冷却作用、防錆作用、清浄作用があり、過酷な環境にさらされるエンジン専用に作られたオイルである。

エンジン・オイルの分類法は粘度による分類と性能、用途による分類の2種類がある。

粘度はSAE(米国自動車技術協会)規格で、性能、用途はAPI(米国石油協会)サービス分類が使われる。

また、排ガス規制対応でDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルタ)が装着されたエンジンには、JASO(自動車技術会)サービス分類も同時に使われる。


下記の表でWの付いているオイルは特に寒冷地用で、10W-30などの表示があるマルチ・グレード・オイルは特に粘度指数が大きく、全季節に対応している。


農業機械に使われるエンジン・オイルは、10W-30でガソリン・エンジンならSD以上、ディーゼル・エンジンではCD以上が望ましい。

また、エンジン・オイルにはガソリン、ディーゼル兼用のものがあるが、様々な種類がある農業機械にとってはとても有益なオイルである。

エンジン・オイルのSAE粘度分類

粘度 適性
SAE   5W 寒冷地様
SAE  10W
SAE  20W 冬季用
SAE  20
SAE  30 一般用
SAE  40 夏季用


エンジン・オイル用のAPIサービス分類

API
サービス分類
使用条件
SA 無添加純鉱油。
無負荷で油温も余り上がらない条件下で運転されるエンジンに使用する。
SB 添加油。
中程度の条件下で運転されるエンジンでスカッフィングの防止性、油の酸化安定性、ベアリングの腐食防止性を要求される場合に使用する。
SC 乗用車、トラックでブローバイ・ガス還元装置を取り付けていないガソリン・エンジンに使用する。
高温および低温沈殿物防止性、磨耗防止性、錆止め性、腐食防止性を備えている。
SD ブローバイ・ガス還元装置を取り付けた乗用車、トラックのガソリン・エンジンに使用する。
性能はSC以上であることが要求され、SCクラスの用途にも使用可能である。
SE 酸化、高温沈殿物、錆、腐食などの防止に対して、SDよりも更に高い性能を備えている。
SF 酸化安定性、耐磨耗性の向上を図り、特にバルブ機構の磨耗防止を主眼としたもので、SEより高い性能を備えている。
SG SFクラスより更に苛酷な使用条件に耐えられるように、耐磨耗性、耐スラッジ性を高めたもので、テスト方法もSFクラスよりも苛酷になっている。
SH SG性能に加え、オイルの消費防止性、せん断安定性、消泡性等が向上している。
ターボ・チャージャ、スーパ・チャージャ装着車に使用できる。
SJ SH性能に加え、低温時のエンジン始動性、オイルの消泡性、省燃費性などが向上している。
SL 2001年以降のガソリン車に適用。
SJ性能に加え、高温時のデポジット防止性、オイルの耐久性・清浄性・酸化安定性などが向上している。
厳しいオイル揮発試験に合格した環境対策規格。
SM SL性能より、オイルの耐久性、省燃費性、有害な排気ガスの低減などを向上させた環境対応規格。


ディーゼル・エンジン用のAPIサービス分類

API
サービス分類
使用条件
CA イオウ分の少ない良質燃料を使用する軽負荷のディーゼル・エンジンに使用される。
腐食防止剤、清浄分散剤が添加されたもので、軽負荷のガソリン・エンジンにも使用できる。
CB 比較的イオウ分の多い燃料を使用する軽~中負荷のディーゼル・エンジンに使用される。
腐食防止剤、清浄分散剤が添加されたもので、軽~中負荷のガソリン・エンジンにも使用される。
CC 過酷な運転条件下の過給機付きディーゼル・エンジンに使用される。
腐食防止剤、防錆剤、清浄分散剤が添加されたもので、過酷な運転条件下のガソリン・エンジンにも使用される。
CD 過給機付きで、高速、高出力で運転されるディーゼル・エンジンに使用される。
多量の腐食防止剤、清浄分散剤が添加されたものである。
CE 1983年以降製造のディーゼル・エンジンに対応。
CD性能に加え、デポジット防止性、オイル消費防止性、清浄分散性などが向上。
スーパ・チャージャ、ターボ・チャージャ装着車にも使用できる。
CF 建設機械および農業機械などのディーゼルエンジン用に開発された油で、CD性能をより向上したものである。
CF-4 1990年代の低硫黄(0.5%以下)の軽油を使用する大型トラックなど最も過酷な条件で運転されるディーゼルエンジン用である。
CE性能よりデポジット防止性、清浄分散性、熱安定性、オイル消費防止性を向上したものである。


ディーゼル・エンジン用のJASOサービス分類

JASO
サービス分類
使用条件
DH-1 酸化防止剤、清浄剤、摩耗防止剤が添加され 優れた酸化安定性、エンジン清浄性があり、コモンレール式燃料噴射装置を設けたエンジンに使用される。
DH-2 排ガス規制対応で、上記に加え、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルタ)やSCR(選択触媒還元)が装着されたディーゼル車に使用される。



ギヤ・オイル



ギヤ・オイルは、緩衝作用、冷却作用、洗浄作用、防錆作用があり、機械的負担が大きいミッション、ギヤ専用に作られたオイルである。

ギヤ・オイルは主に、管理機のミッションやトラクタのフロント・アクスル、そしてトラクタ作業機(ロータリ)などの油圧作動がない箇所に使われる。

また、油圧作動があるトラクタ、コンバイン、田植機のミッションには、これらの作用だけでなく、油圧作動油としての性能を合わせ持っている専用ギヤ・オイルが使われる。


ギヤ・オイルの分類法もエンジン・オイル同様に、粘度による分類と性能、用途による分類の2種類がある。

粘度はSAE(米国自動車技術協会)規格で、性能、用途はAPI(米国石油協会)サービス分類が使われる。


APIでの分類は、特にギヤの種類による潤滑条件を考慮して、ギヤ・オイルに要求される極圧性に重点を置いて分類されているが、石油留分だけではこれらのオイルが要求する耐荷重性能を引き出す事ができないので、極圧剤が多量に使われている。

農業機械用ギヤ・オイルの主な適合
(VGはISO規格なので、SAE規格との正確な比較は出来ない)

区分け 使用可能な箇所、構造 主な粘度 使用可能な主な箇所
油圧に使えない ギヤ 80W、90、140(GL4以上) 耕運機のミッション、トラクタのフロント・アクスル、ロータリなど
油圧に使える ギヤ、油圧シリンダ、湿式ブレーキ 80W(GL4以上) 上記を含む
ノークラッチ変速がないトラクタ、コンバイン、田植機のミッションなど
油圧に使える(TF) ギヤ、油圧シリンダ、湿式ブレーキ、パワー・シフト、HST VG32、46、56、68相当 上記を含む
ノークラッチ変速のあるトラクタ、コンバイン、田植機のミッション、コンバインの作動油など


アクスルまたはマニュアル・トランスミッション・オイル粘度分類(SAE J 306)

粘度グレード 粘度15.000cP
を示す最高温度
(℃)
※最低
(cSt) {mm2/S}
※最高
(cSt) {mm2/S}
70W -55 4.1
75W -40 4.1
80W -28 7.0
85W -12 11.0
90 13.5 <24.0
140 24.0 <41.0
(250) 41.0

※100℃における粘度


ギヤ・オイルのAPIサービス分類

API
サービス分類
性能、用途分類
GL-1 直留鉱油で十分使用できるような低荷重、低速度運転する自動車用ディファレンシャル・ギヤおよびマニュアル・トランスミッションで使用できる。
GL-2 荷重、温度および滑り速度がGL-1では過酷な条件で運転する自動車用ディファレンシャル・ギヤで使用できる。
GL-3 中程度の速度、荷重条件で運転するマニュアル・トランスミッションおよびディファレンシャル・ギヤで使用できる。(GL-1とGL-4の中間)
GL-4 高速低トルクおよび低速高トルク条件で運転する乗用車、その他の自動車用ギヤ、特にハイポイド・ギヤ用。
GL-5 高速衝撃荷重、高速低トルクおよび低速高トルク条件で運転する乗用車、その他の自動車用ギヤ、特にハイポイド・ギヤ用。
GL-6 高速高性能条件で運転する乗用車、その他の自動車用ギヤ、特にオフセットの大きいハイポイド・ギヤ用。
(2インチ以上のオフセットを有し、しかもそのオフセット量がリング・ギヤの直径の25%に達するもの)


作動油



作動油は、潤滑(減摩)作用、冷却作用、防錆作用、清浄作用に加え、熱安定性、消泡性、酸化安定性があり、圧力変動の大きい油圧作動専用に作られたオイルである。

自動車で言うなら、オートマチック・トランスミッション、パワー・ステアリング、油圧式ブレーキ、ショック・アブソーバなどに使われるが、農業機械では様々な作業機の油圧装置、トラクタのパワー・ステアリング、コンバインなどの油圧モータを使ったノークラッチ変速などに使われる。


トラクタやコンバインの油圧作動に使用するオイルは主にミッション・オイル兼用なので、前項で説明したように作動油兼用ギヤ・オイルが使われる。


作動油の粘度等級は、ISO(国際標準化機構)が定める工業規格でVGで表記される。

農業機械で主に使われる粘度等級は、VG32、46、56、68などである。



作成日:2008/11