今回は、クボタ・ロータリRS121SP(トラクタB72)の耕運軸受ベアリングの破損修理の手順を記載します。
ついでなので、チェーン・ケース側のオイル・シールとベアリングも交換しておきます。
第7回のオイル漏れ修理と基本的には同じ修理になりますが、 。
当然ですが、オイル・シールを外すのには、酸素アセチレン溶接でゴム部分を炙ってを燃やせば簡単に外せます。
また、ベアリングを外す(壊す)のには、酸素アセチレン溶接で酸素切断すれば楽に外せます。
主に必要な工具、道具:10㎜、12㎜、14㎜、17㎜ボックス・レンチまたはメガネ・レンチ、シノ、穴用スナップ・リング・プライヤ(直型CH4A)、軸用スナップ・リング・プライヤ(直型CS3A)、スクレーパ、中ハンマ、小ハンマ(出来れば銅か樹脂)、叩き工具(マイナス・ドライバ、鏨)、丸パイプ(オイル・シール軸部打ち込み用)内径45㎜程度、液体ガスケット(1215)、
カップ・ブラシ・グラインダ、コンプレッサ(エア吹き掃除)、灯油少量(洗浄用)、ウエス数枚
◎始めの状態
ロータリのオート入切レバー(自動耕深装置)を「切り」位置にします。
均平板を出来るだけ上げて固定します。
エンジンを始動し、ポジション・レバーを上げてロータリを適当な高さに上げ、エンジンを停止させます。
また、左右のサイド・カバーを外しておくと作業し易いです。(頭部12㎜ボルト、ナット各2個)
耕運軸を外します。
チェーン・ケース側は、耕運軸と継ぎ手が頭部17㎜のボルト4本で固定されているので、これを外します。
2本だけ完全に外さず緩めたままにして、ロータリを地面に軽く着くまで降下させます。
※PTO変速を1速などに入れておくと耕運軸の共回りを防げます。
反対のベアリング・ケース(右)側は、サイド・プレートにベアリング・ケースが頭部17㎜のボルト2本で固定されているので、これを外します。
その後、継ぎ手の残り2本のボルトを外します。
エンジンを始動し、ゆっくりポジション・レバーを上げます。
これで耕運軸だけが地面に残って外れます。
※サイド・プレートの固定ボルト(頭部12㎜2本、頭部14㎜6本)を緩めておくと外し易いです。
ベアリング・ケース(右)の修理に入ります。
プラグを外します。
プラグは、マイナス・ドライバ先端をプラグのツバの部分に食い込ませ、起こすことで簡単に外れます。
きっかけはハンマで叩いて作ります。
どのロータリも使い続ければいつかこのようになります。
酷い状態です。
ベアリングの破損が酷く、ベアリング・ケース(右)がそのまま落ちて外れました。
スナップ・リングを外してから、通常はケースにギヤ・プーラをかける、ケースをハンマで対角線上にずらしながら叩く、などして外します。
左写真のように、スナップ・リングを外します。
必要なら、スナップ・リングの穴を何か尖ったもの(キリなど)できれいにします。
ベアリングの内輪を外します。
左写真のように、鏨(たがね)を内輪に当ててハンマで叩いて外します。
叩き位置を変えながら根気よく叩き続けると、少しづつですが抜けてきます。
スリーブを外します。
左写真のように、スリーブのツバ部分にマイナス・ドライバ先端をハンマを使って差し込み、ツバを順次起こしながら外します。
比較的この部分は外し難い場合があるので、何度も起こす箇所を変えて少しづつ根気よく行います。
左写真は、外した順に上から軸用スナップ・リング、ベアリング内輪、スリーブ、ダスト・シール、耕運軸継ぎ手です。
ダスト・シールは泥よけの役目があります。
耕運軸継ぎ手のベアリング内輪とスリーブが密着する面を、カップ・ブラシ・グラインダでさらっと磨いておきます。
その後、灯油付けの歯ブラシできれいに掃除し、エアで吹き飛ばします。
左写真はベアリング・ケース(右)です。
ベアリングの玉は既に取れてしまっているので、外輪とオイル・シールだけが残っています。
プラグの取り外しと同様の手順でオイル・シールを外します。
ベアリングの外輪を外します。
左写真のように、鏨を外輪に当ててハンマで叩いて外します。
叩き位置を変えながら根気よく叩き続けると、少しづつですが抜けてきます。
ベアリング・ケース(右)の内面を、出来るだけ傷付けないように叩きます。
また、当て物として外輪と同径くらいのパイプがあれば、鏨を使うより楽に外せます。
左写真は、外した順に上からオイル・シール、穴用スナップ・リング、ベアリング外輪、ベアリング・ケース(右)です。
ベアリング・ケースの内側は、紙ヤスリ(#400~1000)などでさらっと磨いておきます。
その後、灯油付けの歯ブラシできれいに掃除し、エアで吹き飛ばします。
耕運軸継ぎ手にダスト・シールとスリーブを取り付けます。
継ぎ手軸にダスト・シールを入れた後、エンジン・オイルを付着させスリーブを差し込みます。
スリーブを傷めない目的で、左上写真のようにビニール(厚め)の真ん中に穴を開けてスリーブの上に被せます。
そして、その上からパイプ(内径45㎜程度)を当て、ハンマで軽く打ち込んで入れます。
叩き位置を対角線上にずらしながら、金属音(叩き音)が甲高い音になるまで打ち込みます。
オイル・シールのリップに当たる面を傷つけないように注意して行います。
スリーブに付着したゴミは、ウエスできれいに拭き取っておきます。
ベアリング・ケース(右)にベアリング(6206LLB、またはLLU)を取り付け、穴用スナップ・リングを取り付けます。
滑りを良くするため、ベアリング外輪にエンジン・オイルを塗付します。
ベアリングはなるべく直接叩かず、小ハンマ(直径20㎜程度、銅)などを外輪に当てた上から叩くようにします。
対角線上にずらしながら、金属音(叩き音)が甲高い音になるまで叩きます。
※写真のベアリングはLLBですが、基本的にオイル・シールが付いているので開放型で問題ないと思います。
次にオイル・シールをはめ込みます。
滑りを良くするため、オイル・シールの外周部にエンジン・オイルを塗付し、ベアリングと同様の手順で、オイル・シールのツバを叩いて入れます。
ベアリングは外輪に、オイル・シールはツバ部に、丸パイプを当ててハンマで叩いて入れる方法が望ましいですが、ハンマ2つで十分はめ込む事が出来ます。
丸パイプ外径はベアリングが60㎜程度、オイル・シールが75㎜程度のものでよいです。
耕運軸継ぎ手にベアリング・ケース(右)をはめ込み、軸用スナップ・リングを取り付けます。
オイル・シールのリップ面とスリーブにグリースをたっぷり塗付し、取り付けの際に滑りを良くするため、ベアリング内輪にエンジン・オイルを塗付します。
ベアリング・ケース全体に角材(木)などを当てて、その上からハンマで叩いて入れます。
内径32㎜程度の丸パイプをベアリングの内輪に当てて、その上をハンマで叩いて入れる方法がベアリングを傷めず望ましいですが、下処理をしっかりしエンジン・オイルを塗付しているので、問題なくはめ込む事が出来ます。
プラグを取り付けます。
ハンマでプラグのツバを、対角線上にずらしながら叩いて入れます。
次はチェーン・ケース側です。
オイルを抜きます。
プロテクタを外し(頭部14㎜1本)、ドレン・ボルトとプラグを外します。
プラグはベアリング・ケース(右)と同様の手順で外します。
プラグを外すと、継ぎ手に軸用スナップ・リングが2重に留めてあるのを確認できます。
これを二つとも外します。
継ぎ手をハンマで叩いて外しますが、継ぎ手の軸頭を潰さないように、小ハンマなどを軸に当てがった上から叩きます。
継ぎ手を外すとベアリング・ケース(左)のオイル・シールを確認できます。
プラグ同様に、オイル・シールのツバとケースの当たり面に、マイナス・ドライバ先端をハンマを使って差し込み、ツバを順次起こしながら外します。
※ベアリング・ケース(左)を外してから、オイル・シールを外してもよいです。
ベアリング・ケース(左)を外します。
頭部12㎜のフランジ・ボルトを6本外し後、左写真のようにチェーン・ケースとベアリング・ケース(左)の間に、マイナス・ドライバ先端をハンマを使って差し込み、少しづつ起こしながら外します。
何度も起こす箇所を変えながら、根気よく行います。
取り外した継ぎ手からスリーブを外します。
ベアリング・ケース(右)のスリーブと同様の手順で外します。
取り外したベアリング・ケース(左)からベアリングを外します。
ハンマでオイル・シールが付く側から、ベアリング(開放型6306)を軽く叩けば抜けてきます。
ケース接着面にこべり付いてる液体ガスケットをきれいに除去します。
スクレーパで大まかに削り取った後、カップ・ブラシ・グラインダで磨くと楽に作業が進みます。
チェーン・ケース側の接着面に付着している液体ガスケットもきれいに除去します。
ベアリング・ケース(左)と同様に、カップ・ブラシ・グラインダで磨くと楽に作業が進みます。
左写真のようにスクレーパで大まかに削り取ってから、紙ヤスリで磨いてきれいにしてもよいです。
プラグ穴回りは錆などで腐食気味なので、紙ヤスリで磨いてきれいにしておきます。
左写真のようにチェーン張りの蓋を外して、チェーンを出しておくとケース内の掃除がし易いです。
チェーン張りの蓋は頭部10㎜のフランジ・ボルトを全て外し、ベアリング・ケース(左)と同様の手順で外せます。
付着している液体ガスケットは、カップ・ブラシ・グラインダで磨いてきれいにしておきます。
ベアリング・ケース(左)にベアリング、オイル・シールを取り付けます。
いずれもエンジン・オイルを塗付しおくと楽に入ります。
ベアリングは外輪を、オイル・シールはツバの部分を、対角線上に順次ハンマで叩いて少しづつ入れます。
なるべく、小ハンマなどの当てものをした上から叩きます。
ベアリング・ケース(左)の接着面に液体ガスケットを多めに塗付します。
これをすぐにチェーン・ケースに取り付けます。
頭部12㎜のフランジ・ボルトを対角線上にずらしながら締め付け、確実に固定します。
この後、チェーン(スプロケット含む)をケースに落としておきます。
継ぎ手にスリーブを取り付けます。
ベアリング・ケース(右)の耕運軸継ぎ手と同様の手順で行い、パイプ(内径45㎜程度)を当て、その上をハンマで軽く叩きながら打ち込んでいきます。
金属音(叩き音)が甲高い音になるまで、叩き位置を対角線上にずらしながら打ち込みますが、シールのリップに当たる面を傷つけないように注意して行います。
スリーブに付着したゴミは、ウエスできれいに拭き取っておきます。
継ぎ手をチェーン・ケースにはめ込みます。
チェーン・ケース内で、継ぎ手軸のスプライン溝とスプロケットのボス溝を合わせた後、ハンマで継ぎ手外側の中心を叩き、金属音が変わるところまで打ち込みます。
スリーブには少量のグリースを塗付し、ベアリングが留まる部分にはエンジン・オイルを塗付しておくとはめ込み易いです。
継ぎ手が抜けないように、軸用スナップ・リングを2つはめ込みます。
その後、プラグを取り付け蓋をします。
プラグのシール接触面が腐食気味だったので、液体ガスケットを塗付して取り付けました。
チェーン張りの蓋の取付面に、液体ガスケットを塗付します。
チェーン張りを挿入し蓋を固定します。
頭部10㎜のボルトは、対角線上にずらしながら締めていきます。
チェーン張りの挿入は、手で継ぎ手を正回転方向にゆっくり回転させながら、挿入させます。
チェーンのローラ間(リンク部)に、チェーン張りの先端が入らないようにするためです。
耕運軸を取り付けます。
耕運軸をロータリの下に移動させ、エンジンを始動します。
ゆっくりポジション・レバーを下げて、チェーン・ケースの継ぎ手と合わせます。
ボルト穴位置を適当に合わせたらシノをボルト穴に差し込み、穴位置を合わせボルトを仮締めします。
ベアリング・ケース(右)も同様に、シノを使って穴位置を合わせます。
チェーン・ケース側ボルト4本と、ベアリング・ケース(右)側ボルト2本を全て仮締めしたら、順に本締めしていきます。
次いで、サイド・プレートのボルトも本締めします。
均平板を下げて、ロータリのオート入切レバー(自動耕深装置)を「入り」位置にします。
チェーン・ケースのギヤ・オイル注入(0.5ℓ)は、液体ガスケットがある程度乾くまで24時間以上経ってからにします。