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第12回:籾倉の満量警報器を自作する



今回は遊び心で記載しました。

籾蔵が一杯になったらパトライトを回転させて警報する装置を自作しました。

この装置が必要かどうかはさておいて、とても簡単で安価に製作できるので、もし機会があればやってみてください。

実際に、数年前に知合いの営農業者の籾蔵に取り付け今でも無事に作動しています。

しかしながら、自作のアマチュア工作品である事とAC100Vを扱うため、参考にされる場合は個々の責任において行ってください。


必要な工具:サーキット・テスタ、はんだこて(30W)、電工ペンチ、ニッパ、カッタ、プラス・ドライバ、ビニール・テープ、ハンド・ドリル(又は電動ドリル)、8㎜ドリル

◎他あれば便利の工具…はんだこて台、はんだ吸取線、電子工作スタンド、ヒート・クリップ、圧着スリーブ・ペンチ


必要な材料:ユニバーサル基盤(片面紙フェノール72×47)、ヒータ・トランス(KT63)、ブリッジ・ダイオード(S1YB20)、電解コンデンサ16V(25V)100μF、炭素皮膜抵抗(1/4W)330Ω、ブラケットLED、電源スイッチ、100Vプラグ、キャブタイヤ・ケーブルVCTF0.75sq2芯(設備に応じて数m)、 ヒューズホルダ横型、ヒューズ125V/0.2A

ソリッドステート・リレー・キット(秋月電子通商より)… フォト・トライアック(MOC3041)、
トライアック(BTA24-600WRG→RSコンポーネンツでも入手可能)、
ZNR(07D151K)、炭素被膜抵抗(1/4W)330Ω、100Ω

はんだ(ヤニ入りですず成分多めがお勧め)、コード黒(0.3sq)、ミニ・ケース(100円均一)、
タッピング・ビス(2.6㎜×8㎜)3本、ネジ(3㎜×7㎜)8本、スペーサ(3㎜×14㎜)4本、
籾センサ(コンバイン、乾燥機、バネらくこんなどに使われる部品で何でも良い)、
LED回転灯(AC100V/消費電力5W)

◎他あれば便利な材料…すずメッキ線(0.6㎜)、閉端接続子CE2(スリーブ類)


※設備に取り付けるための工具や材料は含んでいません。
(穴開けや、固定方法など設備によって違うため)



満量警報器の回路図…籾センサがONになると回転灯(パトライト)が回転発光する装置です。

◎概要

AC100Vから制御用の小電圧を取り出すためトランスで降圧させ、ダイオードを使い交流を直流にして、電解コンデンサで波のないきれいな直流に変えて、制御用の安定化電源を作ります。

この制御用電源使い、籾センサがONの時に半導体リレーを作動させ、AC電源をONさせるとても単純な回路です。
また、電源表示灯にブラケットLEDを使いました。

この半導体リレーは、ZNRをトライアックに並列に挿入しています。

この回路ではモータなどの誘導負荷ではなく、5W程度のLEDパトライト(抵抗負荷)を使うため全く意味はありませんが、規定電圧以上の高電圧を吸収してくれて回路保護になるので、一応取り付けました。

また、このトライアックはノイズ吸収機能が入ったスナバレス・タイプで、交流の0Vクロスのタイミングでスイッチングしますので、メカニカル・リレーと比べて優れていると思います。

籾センサの信号線にはVCTF0.75sqを使いました。

6V/十数㎜A程の電気を流すのに十分過ぎる太さですが、これには理由があります。

キャブタイヤなので、ネズミにかじられてもすぐには剥き出しにならないからです。

ちなみに0.75sqとは、断面積が0.75㎡だという事です。

自作・籾蔵満量警報器

T1:ヒータ・トランス6.3V200㎜A(KT63)
BD1:ブリッジ・ダイオード200V/4A(S1YB20)
C1:電解コンデンサ(ルビコン16V100μF)
R1、R2:抵抗(1/4W)330Ω
R3:抵抗(1/4W)100Ω
PT1:フォト・トライアック(MOC3041)
Q1:トライアック(BTA24-600WRG)
ZNR1:バリスタZNR( 07D151K)
LED1:ブラケットLED緑
S1:ロッカ・スイッチ250V16A抵抗負荷(AJ8221B)
F1:ガラス管ヒューズ(20㎜) 125V/0.2A


センサ:籾センサ
パトライト:LEDパトライト



◎電源設計

電源トランスについて
負荷はLEDとフォト・トライアックだけで計30㎜A程度流すだけなので、6.3V/200㎜A(1.26VA)のヒータ・トランスで十分です。

中間タップのないこのタイプが一番安いです。

100VのマークがしてあるほうにAC100V入力させます。
100V側6.3V側共に極性はありません。
ブリッジ・ダイオードについて
この回路は半波整流でも作動しますが、コンデンサのリップル電流を少しでも減らす目的と、スッキリ感!?から全波整流にしました。

定格を含め、耐サージ順電流など十分過ぎるものを使いました。

ダイオード2個分の電圧降下が欠点です。

AC入力側(+-のマークがない側)は極性はありません。
電解コンデンサについて
耐電圧は16Vのものでよいのですが、持ち合わせがなかったため25Vのものを使いました。

通常は使用電圧の2倍程度の耐圧のものを使いますが、大きいに越したことはありません。

また、静電容量についても持ち合わせがなく100μFを使いましたが、47μFでも問題ないと思います。
~470μFくらいまでなら取り付けても特に問題はないと思いますが、それ以上容量の大きいのは止めたほうがいいです。(リップル電流は減るが、突入電流が増えるだけ)

基本的にLEDを点灯するだけの回路なので、直流の品質!?は殆ど気にせずコンデンサの選定は適当です。

色帯があるほうが-側になります。

一般に、電気回路ではスイッチのON-OFF時に、通常電流の数~数十倍の電流が一気に流れるため、ヒューズが切れたり、スイッチの接点が焼けたり、電解コンデンサの発熱などいろいろ問題が発生します。

しかし、この回路では扱う電力が少ないため、それらの対策は必要ないと思います。

電源スイッチには容量の大きい(AC250V/16A抵抗負荷時)ものを使っていますので、接点が焼ける事は限りなくありません。
スパーク・キラーも全く必要ないです。

籾センサは、設備によりますが配線が5m以上になると浮遊電流が一気に流れ込むため、接点に負担がかかりますが、これも十分に籾センサの定格以内での使用(廃品から調べたらスイッチング定格AC250/3Aでした)なので問題ないと思います。

センサの前に直列に抵抗(1/4W)30Ω程度を入れると対策にはなります。

但しこの場合、フォト・トライアックの前の抵抗を300Ωに減らしたほうがよいです。

トランス、ブリッジ・ダイオード、電解コンデンサについても、容量が小さいため心配ありません。

電解コンデンサの前に直列に抵抗(1/2W)4.7Ω程度を入れると対策にはなります。

通常時、無意味な損失になりますけど…



!?…
このトランスの2次側でのAC電圧は6.3Vのはずだが、テスタで測定すろと何故か4.9Vしかありません…

トランスの精度が悪いのかは解りませんが、小さいトランスは無負荷時の2次電圧が低めに設定されがちなの…!?

しかし、ブリッジ・ダイオードで整流し電解コンデンサで平滑したDC電圧は、無負荷時の実測で6.21Vあり、この回路での負荷なら全く問題なく使えると思いました。

このからくりは、交流電源を全波整流するので、

4.9(実効値)×1.4 =6.86(最高値) →6.86V

で使用電圧は6.86Vになり、整流平滑後の実測で6.2Vだから、ブリッジ・ダイオード(ダイオード+-2個分の損失)にしては

6.86-6.2 =0.66 →0.66V

から0.66Vと少ない電圧降下に見えますが、電解コンデンサで平滑安定させているためこのような数値になります。…憶測です。

恐らく、電解コンデンサがないと2V近くブリッジ・ダイオードで電圧降下し、出力電圧は4Vくらいにまで下がると思います。


籾センサまでの距離が長くなると制御電圧の電圧降下が心配では!?と思いがちですが…

籾センサ(中古三菱コンバインより部品取り)仮に、籾センサが基盤から6m離れたとき(往復12m分)の電圧降下を計算します。
まず、線間抵抗を次式より求めます。

抵抗(Ω)= 軟銅線の抵抗率(Ω㎜2/m)×【長さ(m)÷断面積(㎜2

軟銅線の抵抗率は1/58ですから、 

1/58×(12÷0.75) =0.275862 →約0.28Ω

から線間抵抗は約0.28Ωになり、6V/12㎜A流れる場合の電圧降下は

オームの法則:E=IR (V=AΩ) により、

0.28×0.012 =0.00336 →約0.003V

で約0.003Vとなります。
つまり、殆ど損失がなく全く問題ないことが分かります。

※導電率を考慮しない計算なので、正確な数値ではありませんが大体これくらいになります。


余談ですが、ここで使ったVCTF0.75sqは30本の短線が集まったより線ですので、1本当たりの断面積(㎜2)は

0.75÷30=0.025 で 0.025㎜2 

になり、1本当たりの線径は、断面積(㎜2) =直径(㎜)×直径(㎜)×3.14/4 をもとに、

(0.025÷0.785) の平方根になり、1本当たりの線径は約0.18㎜になります。…0.785=3.14/4



◎電流制御

緑色のブラケットLEDなので、緑の定格2V/15㎜A流れるように抵抗を入れて電流制御します。

まず、抵抗にかかる電圧を計算します。

直列回路の電圧は分圧されますから、

6.2(電源電圧)-2(LED順方向電圧) =4.2(抵抗の電圧) →4.2V

になり、抵抗Rには4.2Vの電圧がかかることになります。

また、直列負荷において流れる電流(I)は抵抗(R)もLEDも同じだから、次式によってLEDの電流制御抵抗の値を求めます。

挿入抵抗(R)= 【電源電圧(V)-LED順方向電圧(VF)】÷順方向電流(IF)  

R= (6.2-2)÷0.015  R= 4.2÷0.015  R= 280

なので挿入抵抗は280Ωになります。

しかし、280Ωを持ち合わせていなかったので330Ωを入れました。

この場合、12.7㎜Aと流れる電流は少なくなりLEDの輝度はやや落ちますが問題ありません。

持ち合わせがない場合でも、例えば、10Ωと270Ωを直列に挿入すれば280Ωとして使えます。

330Ωの抵抗が消費する電力は約0.05Wなので、1/4Wの抵抗で問題ないということになります。

消費電力(P)= 電流(I)×電流(I)×抵抗(R) 

0.0127×0.0127×330 =0.053196 →約0.05W

そして、LEDが消費する電力は0.03Wになります。

消費電力(P)= 電流(I)×LED順方向電圧(VF)

0.0127×2 =0.0254 →約0.03W

フォト・トライアックの作動は内部でLEDを点灯させるだけですから、上記同様の考えで挿入抵抗が決まります。

しかし、この半導体リレーは、購入するとキットなので予め入力電流制御用に330Ωの抵抗が付いてきます。

使用書では、この半導体リレーは制御電圧DC3~8Vで作動し、制御入力側の消費電流は5~30㎜Aです。

フォト・トライアックの入力制御の順方向電圧(VF)は憶測ですけど、2~3V程だと思います。
仮に、8Vの電源電圧で330Ωを挿入して作動させた場合は、15~18㎜Aしか流れないのです。

したがって、6.2Vの電源電圧で330Ωを挿入した場合でも、9~13㎜A流れるので問題ないと思います。

余談ですが、抵抗の代わりに定電流ダイオード(CRD)を挿入することでLEDを点灯さしたり、フォト・トラッアックを作動させる事ができます。

これは、決まった電流しか流さないダイオードの特性を利用したものです。



◎制御ユニットの製作

工作スタンド ブラケットLEDの足と0.5sq線をはんだ付けします。

左写真のような工作スタンドがあると作業し易いです。

予め、0.5sq線にはんだを浸み込ませておいてから行います。

はんだ付けが終わったら、ビニル・テープで良いので絶縁保護しておきます。

こて先クリーナ付はんだこてスタンド左写真は、こて先クリーナ(スポンジ)付のはんだこてスタンドです。

スポンジに水を少し含ませて使います。

一度はんだ付けすると、こて先に汚れが付着するので、スポンジにこて先を当てて拭き取ります。


★はんだ付けの仕方とポイント
その1その2

制御ユニット はんだ付け作業0.75sq線をトライアック(ヒューズ-トライアック間)にはんだ付けするところです。

左写真のように、ヒート・クリップで0.75sq線を固定するとやり易いです。

ヒート・クリップ…はんだ付けする際、ICなどの足に挟むことによって、はんだ熱を逃がす道具です。

制御ユニット所詮は素人の工作です。

制御ユニットはこんな感じになりました。

半導体リレーはキット基盤が付いてきますが、それを使わずユニバーサル基盤にて一つにまとめました。

AC100Vが流れる0.75sq線は、閉端接続子などでの圧着結線やはんだ付け結線でいいと思います。

当然、後者はビニル・テープや熱収縮チューブなどで絶縁保護しておきます。

制御ユニット 全体写真今回は0.5sqのコードをたまたま持っていたので、基盤回りの信号線として使いました。

また、それに応じてギボシ端子を使いました。

0.5sqは、太過ぎて無理がありました。

0.3sqくらいのコードが扱い易くベストだと思います。

また、写真みたいにコードを色分けして使う必要もありませんので、一色で問題ないと思います。

制御ユニット 裏面すずメッキ線は、半導体-半導体間をはんだ付けして繋ぐ際に使用するものですが、今回は左写真のように、すずメッキ線を使って配線コードを固定しました。

また、トランスとヒューズ・ケースを固定しているタッピング・ネジの先端はペンチで切り落としています。


ブラケットLEDについて
ブラケットLEDは足の長さが同じで、見た目ではアノードとカソードの区別がつきません。

この場合は、テスタを使い導通試験モードにして測定棒をそれぞれの足に当てます。

LEDが光った時に当てていた測定棒の+側がアノードになり+入力になります。

上記写真では、黄色のコードが接続されているほうがアノード側(入力)です。
籾センサについて
籾センサは極性がありませんので、どちらに繋いでも構いません。

籾蔵に取り付ける方法としては、ホーム・センタなどで売っている金具を利用して、6㎜ボルトとナット、又はビスなどで取り付けます。

籾センサの感知角度は金具を曲げて調整します。
手で簡単に曲げれる金具を購入します。
電源スイッチについて
100円ショップとかで売られている透明のミニ・ケースに制御ユニットを収めますが、ブラケットLEDの取付け穴(丸)や電源スイッチを取り付ける穴(長方形)を開ける必要があります。

ケース面を長方形にくり貫くのですが、その方法としては、はんだこてを使い、こて先の熱で切り落とすラインに沿って穴を多数開けていきます。

そして、くり貫いた後にカッタやヤスリなどで面取りします。

多少こて先を傷める邪道なやり方ですが、必要最低限の道具で作業が済みます。

要点が何か抜けている気がしますが、ページが長くなり過ぎたのでこの辺で終えます…



作成日:2010/2/25