HOME修理TOP小型機械修理

第22回:溝切機の2サイクル・エンジン焼き付き修理について - MKF340



今回は、丸山溝切機MKF340の2サイクル・エンジンの焼き付き修理について記載します。

焼き付きの主な原因は、2サイクル・オイルが少ない、又は入っていないガソリンで始動させてしまうことで起こります。

焼き付きとは、ピストンが油分の切れた保護されない状態で往復運動をしたために、ピストン回り(ピストン・リング、シリンダ・ボア表面)に傷が付き、最後は滑らなくなりリング膠着、又は破損してしまう症状です。

またリング膠着までいかなくても、傷が多く付くと圧縮が足りなくなるので、エンジンは吹け上がらなくなったり始動できなくなります。

2サイクル・エンジンの焼き付きは、殆どが高熱にさらされるピストン回りで起こります。

したがって、完全に焼き付いてリング膠着したエンジンは、リコイル・スタータを引くことさえ出来なくなることが殆どです。


ここで記載しているエンジンは、リコイル・スタータを引くことさえ出来なくなったものです。

しかし、年に数時間しか使わない機械なので、交換部品を極力抑えて修理しました。

傷ついたシリンダ・ボア表面については、本来ならシリンダ交換するべきですが、シリンダ単体で1万数千円もするということだったので、今回は耐水ペーパで磨くことにしました。


交換部品:ピストン、ピストン・リング×2、ピストン・ピン、シリンダ・ガスケット、サークリップ×2


主に必要な工具、道具:  10㎜ボックス・レンチ又はメガネ・レンチ、   3㎜6角レンチ、4㎜6角レンチ、8㎜ピン・ポンチ、スクレーパ、ハンマ、19㎜プラグ・ソケット、ラジオ・ペンチ、耐水ペーパ少々(#320、#1000)、エンジン・オイル少々、ウエス、コンプレッサ、エア・ガン、歯ブラシ、灯油少々、広告紙の端切れ(厚め)、角材


6角穴付きボルトの6角穴径は、イグニション・コイルの固定のみ3㎜で、それ以外は4㎜が使われています。


※流動的に作業しているので、多少なり作業の順番が逆になったりしてます。



MKF340 リコイル・スタータ 取り外し6角穴付きボルト4本を外し、リコイル・スタータを取り外します。

完全に焼き付いていて、手で回すことも出来ません。

MKF340 リコイル・スタータ取り外したリコイル・スタータです。

MKF340 スロットル・ワイヤ 取り外しスロットル・ワイヤを取り外します。

エア・クリーナ・カバーを取り外してから、手でキャブレータのスロットル・バルブを右方向に回し、ワイヤ引掛け部からワイヤを取り外します。

MKF340 エンジン 取り外し固定ボルト(頭部10㎜)4本を外し、エンジンを取り外します。

MKF340 エンジン クラッチ側取り外したエンジンで、クラッチ側です。

MKF340 エンジン分解 燃料タンク 取り外し上部カバーを取り外し、燃料タンクと燃料ホースを取り外します。

燃料タンクは挟んであるだけで、燃料ホースはプライヤなどで摘まんで回せば、キャブレータから取り外せます。

MKF340 エンジン分解 キャブレータ 取り外し6角穴付きボルト2本を外し、キャブレータを取り外します。

次いで、スパーク・プラグ(BPM6Y)も取り外します。

MKF340 エンジン分解 マフラ 外蓋 固定ボルト 取り外しマフラを取り外します。

外蓋は、6角穴付きボルト4本で固定されています。

マフラは分割タイプで、外蓋はすんなり割れなかったので、とりあえず、このままにして次に進みます。

小型エンジンは破損し易いので無理はしません。

後で外せば問題ありません。

MKF340 エンジン分解 インシュレータインシュレータがある吸気孔からピストンが見えます。

MKF340 吸気孔 ピストン傷吸気側でこれだけ酷いです。



MKF340 エンジン分解 シリンダ 固定ボルト 取り外し6角穴付きボルト4本を外し、シリンダを取り外します。

MKF340 エンジン分解 シリンダ 取り外し 膠着完全に膠着して全く抜けません。

MKF340 エンジン分解 シリンダ 取り外し 膠着 油注抜け易くするために、吸気孔やプラグ取り付け口からエンジン・オイルを垂らします。

MKF340 インシュレータ(導風板付き) イグニション・コイル ストップ・スイッチなかなか取り外せないので、ここで一旦考えを変えて、イグニション・コイル、インシュレータを取り外します。

コイル、インシュレータともに6角穴付きボルトで固定されています。

コイルは取り付け部にスペーサが付いているので、無くさないように注意します。

障害物(イグニション・コイル)を取り外したところで、シリンダを少しでも横に回してオイルをなじませます。

MKF340 エンジン分解 シリンダ 取り外しオイルが全体に行き渡ることで、シリンダは少しづつ抜けてきます。

ゆっくり引き出して取り外します。

MKF340 エンジン分解 ピストン 焼き付き排気側は流石にピストン、ピストン・リングともに酷い状態です。

MKF340 エンジン分解 シリンダ・ボア 表面傷シリンダ・ボア表面も縦傷がたくさん付いています。

通常はシリンダ交換ですが、今回はこのシリンダを再利用します。



MKF340 エンジン分解 マフラ 外蓋 取り外し今頃ですが、マフラの外蓋を取り外します。

マフラの排気口からスクレーパを入れて、軽くハンマで叩きます。

MKF340 エンジン分解 マフラ 分断 取り外し思ったより簡単に割れました。

次に、残った半分をシリンダから取り外します。

6角穴付きボルト2本(ガスケットは1本)で固定されているだけですが、経験上、錆び付いてボルトが楽に取れないかもと勝手に思い込んでいましたが、意外と簡単に取り外せました…。

MKF340 エンジン分解 取り外した部品(シリンダから)シリンダから取り外した部品等です。

MKF340 シリンダ・ボア 表面傷シリンダ・ボア表面の傷を耐水ペーパで磨いて消します。

注意することは、必ずエンジン・オイルを塗付した上から磨くことです。


ここから、シリンダ組み付けまでは素手の作業になります。

MKF340 シリンダ・ボア 表面傷 研磨最初は#320番で15分くらい、次に#1000番で20分くらいかけて磨きました。

耐水ペーパの選定は適当です。

また、シリンダ・ガスケットは交換するので、スクレーパで削り落としておきます。

MKF340 シリンダ・ボア 表面傷 研磨後最後は灯油で流して、コンプレッサでエア吹きします。

もっと長い時間磨けばもっときれいになりますが、これで十分だと判断しました。

MKF340 エンジン分解 ピストン・ピン サークリップ 取り外しピストンを取り外します。

両面のサークリップは、ラジオ・ペンチを使い取り外します。

ピストン・ピン穴のクリップ溝にはまっているだけです。

MKF340 エンジン分解 ピストン・ピン 取り外しピストン・ピンを抜きます。

8㎜のピン・ポンチをあてがって、ハンマで叩いて抜きます。

ここでは、丁度高さの合う角材を下に敷いて行いました。

他、クランク軸側に負担をかけないために、パイプなどを下に敷いてピストン全体を受ける方法も良いかと思います。

MKF340 エンジン分解 ピストン 取り外し後取り外したピストン、サークリップ、ニードル・ベアリングです。

ニードル・ベアリングは再利用しました。



MKF340 ピストン ピストン・ピン ピストン・リング新品の交換部品です。

ピストンには取り付けの向きがあります。

矢印のあるほうが、排気側になります。

ピストン・リングは2つとも同じもので、スタンダード・サイズです。

ちなみに、このエンジンにピストン・リングのオーバ・サイズはないと思います。

MKF340 エンジン組付け ピストン 取り付けピストンを取り付けます。

必ずエンジン・オイルを垂らして、滑りをよくしてから行います。

コツは、先にピストン反対側のサークリップを取り付けておき、打ち込み側にピストン・ピンを少しだけ入れておく事です。

今度は同じ角材をピストン全体に敷きます。

ピストン・ピンを少しづつ軽く打ち込んでいきます。

ニードル・ベアリングを無理なく通過することを確認しながら、下側のサークリップに軽く当たるところまで打ち込みます。

その後、打ち込み側にもサークリップを取り付けます。

MKF340 エンジン組付け ピストン・リング 取り付けピストン・リングを取り付けます。

ピストン・ピン同様にエンジン・オイルをピストンの外周に垂らして、傷が付かないようにしておきます。

リングの合い口を写真のような向きにして、手で取り付けます。

ピストンのリング溝には、リングの合い口を合わせる小さなピンが打ち込まれています。

そこにリングの合い口を合わせて取り付けます。

つまり、決まった位置でしか取り付かないということです。

MKF340 エンジン組付け ピストン・リング 取り付け後ピストン・リングの合い口はこのようになります。

当然、圧縮漏れを防ぐため、第1リングと第2リングの合い口はずらすようになっています。

ここで、一旦灯油に浸けて付着したゴミを洗い流し、最後はコンプレッサでエア吹きしてきれにします。

また、手も洗ってきれいにしておきます。

MKF340 エンジン組付け シリンダ 取り付けシリンダを取り付けます。

ここでも、エンジン・オイルをピストン、シリンダ内に垂らしておきます。

ガスケットを通したら、ピストン・リングを手で押さえながら、ゆっくりシリンダにはめ込んでいきます。

セッティング・ツールは使いません。

コツは、手でしっかりピストン・リングを押さえて、左右交互ににシリンダを回して入れていくことです。

注意することは、絶対に無理な力で強引にはめ込まないことです。



MKF340 エンジン組付け シリンダ 固定ボルト 取り付けシリンダをはめ込んだら、6角穴付きボルトでしっかり固定します。

対角線上にずらしながら締めていきます。

ガスケットにエンジン・オイルが付着していても問題ありません。

また、内部に多少のエンジン・オイルが付着したままでも、始動してしまえば直ぐに燃えて無くなるので問題ありません。

MKF340 エンジン組付け ピストン 動作確認ピストンが楽に上下する確認します。

フライホイールを手でゆっくり回します。

回転方向はどちらでも構いません。

楽に回り、引っかかる感じがなければOKです。

後は、マフラ、インシュレータ(キャブレータ側)と順番に取り付けていきます。

MKF340 エンジン組付け ファン・カバー 取り外しイグニション・コイルを取り付けるには、6角穴付きボルト4本を外し、ファン・カバーを取り外す必要があります。

MKF340 エンジン組付け イグニション・コイル 取り付けイグニション・コイルを取り付けます。

イグニション・コイルの磁極とフライホイールの磁力板を、厚めの広告紙の切れ端を挟んで合わせます(磁石でくっ付く)。

この状態で、イグニション・コイルを6角穴付きボルト2本を締めて固定します。

つまり、フライホイールとイグニション・コイルの磁極が、接触しないようします。

MKF340 エンジン 取り付け順番に組み付けていきます。

最初にエンジン単体を取り付けましたが、特に順番は決まっていません。

全て組み付けた後、エンジンが調子良く始動したので良しとします。



作成日:2011/3/1