今回は、クボタ・トラクターGL260の前輪ギヤ・ケースのオイル漏れ修理の手順を記載します。
オイル漏れなので、オイル・シールを交換すれば直りますが、ロータリのオイル・シール交換と違って、大抵は酸素アセチレン溶接(ガス溶接)を使わず行えると思います。
また、関係するベアリングは特にがたつきがなかったので交換していません。
私自身の経験では、ギヤ・ケースのオイル漏れ修理でベアリングを交換することは少ないです。
無論、ベアリングも消耗品なのでついでに交換したほうがいいですけど、手間とコストがかかりますね…。
主に必要な工具、道具: 12㎜、14㎜、27㎜ボックス・レンチまたはメガネ・レンチ、19㎜ボックス・レンチ、穴用スナップリング・プライヤ(直型CH4A)、軸用スナップリング・プライヤ(曲型CS3B)、スクレーパ、樹脂ハンマ、ハンマ、銅ハンマ、叩き工具(マイナス・ドライバ、鏨)、
耐水ペーパ(#800~1000)、ヤスリ、コンプレッサ(エア吹き掃除)、灯油少量(洗浄用)、ウエス数枚、グリース、エンジン・オイル少々、油圧ジャッキ×2、角材×2、廃油箱
ミッション・オイル(#80~90)3.2ℓ
ジャッキ・アップして前輪を浮かせます。
左写真のように、前輪車軸(エンジン)・フレームの前部全体に角材を入れてジャッキ・アップします。
固定ボルト(頭部19㎜)4本とナット(頭部19㎜)2本を外し、タイヤを取り外します。
ここではエア・インパクト・レンチを使いボルトを取り外しましたが、十字レンチなどを使い手の力で取り外す場合は、ジャッキ・アップする前に少し緩めておきます。
ドレン・ボルト(頭部14㎜)を取り外します。
パッキンを無くさないように注意します。
車軸ケースは左右繋がっているので、左側のドレン・ボルトも取り外します。
オイル注入口のボルト(頭部27㎜)を取り外すと、オイルが早く抜けます。
ギヤ・ケース・カバーを固定しているボルト(頭部12㎜)6本とナット(頭部12㎜)2本を外します。
ギヤ・ケース・カバーを取り外します。
左写真のように、鏨をギヤ・ケース・カバーのツバ部分にあてがい、その上をハンマで叩きます。
対角線上にずらしながら叩いていくと、すぐに抜けてきます。
取り外したギヤ・ケース・カバーです。
このケースのホイール・ハブ軸にもオイル・シールが取り付いていますが、ハブ軸からのオイル漏れはないので、これ以上は分解しません。
しかし、ツバ部分を鏨で叩いてバリが出た箇所はヤスリで擦って平らにし、ベアリングとギヤ回りに付着しているゴミは灯油で軽く流し、コンプレッサでしっかりエア吹き掃除しておきます。
ギヤ・ケースは、落下しないように1本の軸用スナップ・リングで固定されています。
この軸用スナップ・リングを取り外す前に、ピニオン・ギヤを取り外します。
ギヤ・ケース下部には、プラグがはめ込んであります。
このプラグを取り外さなくてもオイル・シール交換はできますが、最下部に汚れたオイルが溜まっているので、プラグも取り外して僅かに溜まったオイルもきれいに抜きます。
プラグを取り外します。
左写真のように、適当なマイナス・ドライバの先端をプラグのツバの内側に向けてあてがい、ハンマで叩いて隙間を広げます。
その後、少しづつ起こして取り外します。
穴用スナップ・リングを取り外し、ピニオン軸を抜きます。
スナップ・リングを取り外したら、ピニオン軸がベアリングと一緒に抜けてきます。
抜けてこない場合は、下から指で数回押し上げれば、大抵は抜け落ちてきます。
取り外したプラグ、穴用スナップ・リング、シム、ピニオン軸(ベアリング、ピニオン・ギヤ含む)です。
ギヤ・ケースの下にジャッキを入れます。
角材を入れますが、ジャッキ・アップはせず1㎝くらい開けておきます。
ギヤ・ケースを取り外します。
軸用スナップ・リングを取り外します。
曲型の軸用スナップリング・プライヤを使います。
ギヤ・ケース上部を中~大ハンマで叩いて落とします。
直接叩かず、銅ハンマや角材をあてがい、その上から叩きます。
ジャッキで少しずつ受けながら落としていきます。
タイロッドは付いたままで問題なく作業できるので、外す必要はありません。
当然、タイロッド・エンドを外したほうが作業し易いですが、もし膠着が酷い場合は専用工具を使ってもすんなり外れない事もあるので、最初から触りません。
ベベル・ギヤ・ケースから、軸付きオイル・シールのスリーブを取り外します。
スリーブのツバとケースのスリーブ接合面に、マイナス・ドライバの先端をハンマを使って差し込み、ツバを起こしながら外していきます。
ギヤ・ケースからオイル・シールを取り外ます。
オイル・シールの外周面(はめあい部)とケースのオイル・シール接合面に、マイナス・ドライバの先端をハンマを使って差し込み、外周面を起こしながら外していきます。
取り外した軸用スナップ・リング、オイル・シール、スリーブです。
このオイル・シールは初期型で、オイル・シールとスリーブが分離できます。
ベベル・ギヤ・ケースのスリーブ接合面をきれいにします。
灯油に浸けた耐水ペーパ(#800~1000くらい)できれいに磨いてから、最後はウエスできれいに汚れを拭き取っておきます。
また、キャブレータ・クリーナを吹き付け歯ブラシで磨いた後、パーツ・クリーナで汚れを落とすのも良いかと思いますが、何にしても最後はウエスで拭くか、コンプレッサでエア吹き洗浄するかしてきれいにします。
耐水ペーパを使用したのは、少し錆びた部分があったためです。
ギヤ・ケース側のオイル・シール接合面も同様にきれいにしておきます。
また、ギヤ・ケース・カバーとの接合面もきれにしておきます。
ケース内に付着したゴミなどの汚れをきれいに掃除します。
ベアリングの上から灯油を掛け流して、最後はコンプレッサを使い、ケース内全体をエア吹きしてきれいにします。
新品のオイル・シールです。
初期型と違い、オイルシールは改良されていて、分割できないタイプになっています。
また、泥よけのステンレス・カバーが追加されています。
オイル・シールを取り付けます。
樹脂ハンマを使い、対角線上にずらしながら打ち込んでいきます。
最初の打ち込み時に斜めに挿入すると、ゴム部分がむしれる場合があるので気をつけます。
最初に、オイル・シールの外周面(はめあい部)にエンジン・オイルを薄く塗付しておくと、無理なく打ち込めます。
打ち込み難い箇所は小ハンマをあてがい、その上から打ち込みます。
泥よけカバーをはめ込みます。
樹脂ハンマで叩かず、必ず両手でカバー全体を押さえてはめ込みます。
全体的にはまったら、最後は親指を使い、対角線上にずらしながら押さえていきます。
ベベル・ギヤ・ケースにギヤ・ケースを取り付けます。
ベベル・ギヤ・ケースのオイル・シールとベアリング接合面にエンジン・オイルを塗付しておきます。
最初に、手でギヤ・ケースを持ち上げて位置を合わせます。
そして、その状態を保ったままジャッキ・アップして、無理なく入るところまで入れていきます。
ベベル・ギヤ・ケースを真上から叩きます。
直接叩かず、銅ハンマをあてがい、その上から叩きます。
少し入ったら、再度ジャッキ・アップします。
泥よけカバー上面がベベル・ギヤ・ケースに接触するまで、叩く、ジャッキ・アップを繰り返します。
軸用スナップ・リングを取り付けます。
スナップ・リングを取り付けたら、ジャッキを外します。
ベアリングと共にピニオン・ギヤとピニオン軸を下から入れて、シムと穴用スナップ・リングを取り付けます。
スナップ・リング以外は滴ってきたエンジン・オイルのせいか、大抵は手で簡単に入れることが出来ます。
入りが悪い場合は、ベベル・ギヤ・ケース内でのピニオン軸のスプライン噛み合わせを気にしながら、下からハンマでベアリングを少しづつ叩いて入れます。
プラグを取り付けます。
樹脂ハンマを使い、対角線上にずらしながら打ち込んでいきます。
最初に、プラグの外周面(はめあい部)にエンジン・オイルを薄く塗付しておくと、無理なく打ち込めます。
ギヤ・ケース・カバーを取り付けます。
最初に、ギヤ・ケース・カバーのOリング回りにはグリースを、車軸ベアリング外周部にはエンジン・オイルを塗付しておきます。
ギヤ・ケース・カバーは、叩いて無理に入れてはいけません。
手の力である程度ギヤ・ケース・カバーを入れたら、ボルトを仮付けします。
時には、手の力だけで簡単に奥まで入る事もあります。
ボルトを対角線上にずらしながら、少しづつ締めていきます。
この時、ギヤの噛み合わせを確認しながらボルトを締めていき、ギヤ・ケース・カバーを密着させます。
ギヤの噛み合わせは、ホイール・ハブを手で左右に揺らしながら遊び分を感じとれれば良しです。
遊びがなく重い場合は、一度ボルトを緩めるか取り外し、ギヤ・ケース・カバーを引き抜いて再度やり直します。
最後はタイヤを取り付けジャッキを外し、ギヤ・オイル(3.2ℓ)を入れて終了です。
タイヤのボルトも対角線上にずらしながら締めていきますが、インパクトを使わず手で締める場合はタイヤがつられて回るので、ある程度締めておいてからジャッキを外し、再度増し締めします。