今回は、3相200V電源で作動するシズオカ乾燥機SDN11Aを、単相200V電源で使用できるようにします。
この乾燥機は3相200V電源のみで作動する仕様ですが、設置場所には単相200V(100V)電源しか引き込まれていないため、このままでは使用できません。
したがって、使用できるようにするには単相モータに切り替える、インバータで3相にする、設置場所に3相200V電源を引き込むのいずれかしかありません。
その中で、インバータを取り付けて3相にする方法を記載します。
インバータなので、モータは緩やかに回転が上がり定格回転数に到達します。
ここでは、この小型乾燥機での改造ですが、それ以外の乾燥機でも応用次第で利用可能な方法だと思います。
主に必要な工具、道具: 10㎜ボックス・レンチ又はメガネ・レンチ、プラス・ドライバ、マイナス・ドライバ(精密、2~2.5㎜くらい)、電工ナイフ(カッタ)、ニッパ、はんだごて、はんだ、キャブタイヤ・ケーブルVCTF0.75sq4芯(適当、3mくらい)、ビス(適当、3~4本)、管ヒュース1A、ビニール・テープ
閉端接続子CE-2(適当)、圧着スリーブ・ペンチ
電動ドリル、14~16㎜ドリル
ウォール・ボックス、インバータ(東芝VFNC1S-2007P)、電磁接触器(三菱S-N10)
主モータは、0.65kwの6Pモータが取り付いています。
6Pモータは、よく使われる4Pモータより回転が遅いです。
このように径の違うプーリを2つ使っているので、単相モータに換え、プーリを交換して回転数を合わせることは不可能ではないですが、現実的ではありません。
やはりインバータで制御させるほうが簡単で、コストも抑えられます。
まず、制御盤を開けて、電源がどのように振り分けられているのか確認します。
見たところ、制御盤、循環モータ、排塵機は、単相電源(2本線)で作動し、主モータだけが3相電源(3本線)で作動することが分かります。
つまり、主モータだけをインバータで3相にして回転させます。
制御盤の電源は、3本入力のうちの2本を使った単相入力です。
トランスで降圧し、制御盤で直流に変えるよくある回路です。
中継箇所(左写真左上)の真ん中の白線を取り外します。
これで、単相入力になります。
主モータ以外のところは繋がっていないため、制御盤、循環モータ、排塵機の電源には何の影響もありません。
使用するインバータは、東芝VFNC1S-2007Pで3相モータ用です。
単相200V入力専用で、適用モータ容量が0.75kwのものです。
ちなみにインバータは通販で購入しました。
ウォール・ボックスの中にインバータを入れて取り付けます。
悩んだ末、燃料タンク隣の側面にビスで固定しました。
縦横のサイズはこのままで、もう少し奥行きが深いウォール・ボックスを欲しかったのですが、なかなか無いものです。
蓋が閉まらないので刳り抜く必要があります。
インバータの信号用に電磁接触器(S-N10)を使います。
コイル入力AC200Vで作動するものなら、どんなものでも構いません。
a接点のリレーでも良いのですが、電磁接触器はボタンを押して動作テストが出来る利点があります。
一気に進みますが、配線はこのようになります。
要所については後述します。
仕様する配線はキャブタイヤ・ケーブルのみです。
電磁接触器を使わない、他の方法(制御盤からの信号でリレーを作動させるなど)もありますが、ここで説明する方法が1番簡単でトラブルもない!?(多分)と思います。
インバータの待機電源(常時電源)である単相200Vをとります。
左写真のように、赤白黒のうち、赤と黒をインバータの入力に使います。
キャブタイヤ・ケーブルから2本の線を取り出してメスの平型端子を作り、遊んでいるオスの平型端子に接続します。
反対側をインバータの入力に接続します。
インバータの入力端子に極性はありません。
メインの電磁接触器の隣に、電磁接触器(S-N10)をビスで取り付けます。
電磁接触器(S-N10)のコイル入力線をメインの電磁接触器から取ります。
コイル入力のどちらか1本(赤)は待機状態で、もう1本(黒)は、メインの電磁接触器が働いた時に通電するように配線します。
また、電磁接触器(S-N10)の主接点(3、4)端子に接続してあるのは、インバータ信号用です。
どの端子間(1-2、5-6、13-14)を使っても、メーク接点なので問題ありません。
メインの電磁接触器から、サーマル・リレーの接続端子を3本外します。
その外した接続端子3本とインバータの3相出力間を、それぞれキャブタイヤ・ケーブルで繋ぎます。
接続端子とキャブタイヤ・ケーブルは、はんだ付けして繋ぎます。
サーマル設定値は変更する必要がありません。
また、サーマル・リレーを経由させずにインバータの電子サーマルだけでも問題ないと思います。
主モータ出力線の赤線と黒線にそれぞれ並列に接続してある排塵機の配線を外し、メインの電磁接触器の2、6の端子にそれぞれ接続します。
排塵機用に1Aのヒューズを取り付けます。
ここでは、管ヒューズに直接はんだ付けし、ビニール・テープを巻いて絶縁してありますが、やはりヒューズ・ホルダに入れたほうがいいですね…。
ヒューズは2本線のうち、どちらに入れても構いません。
制御ケースの底面に、ドリルでキャブタイヤ・ケーブル3本通せるだけの穴を開けます。
穴位置は適当で、ここでは16㎜の穴を開けました。
3本のキャブタイヤをビニール・テープで巻き、タイラップで脱落しないようにしました。
バリスタを1ヶ所繋ぎ変えます。
白線(S)は既にどこにも繋がっていないので、S-RからR-Rにします。
バリスタは、サージやノイズ等の異常電圧が発生した時に身代わりになってくれるもでのす。
電磁接触器の主接点(3、4)端子)に接続したキャブタイヤ・ケーブル線を、インバータのCC、F端子にそれぞれ繋ぎます。
極性はないので、どちらに繋いでも問題ありません。
マイナスの精密ドライバ(先端幅2~2.5㎜)が必要です。
上は待機電源の単相200Vが入り、下はモータ入力の3相200Vが出力されます。
モータの回転方向が反対なら、3相出力線のいずれか2本を入れ替えます。
また、インバータ側でも変更できます。
F端子からR端子に繋ぎ変えるるだけです。
制御ケース内とインバータ間で繋いでるキャブタイヤ・ケーブルは、それぞれ1本で繋げず、切断して閉端接続子で接続してあります。
配線の間違いがないか確認したら、実際にプラグを差し込みインバータの設定をします。
差し込みは3相(下はアース)になっていますが、上の端子は繋がっていません。
したがって、仮に3相200V電源を入れても、単相200V入力になるので問題なく作動します。
表示パネルで設定します。
標準出荷設定を設置場所の周波数(60Hz)にします。
また、「パネル運転」から「端子台運転」に変更します。
インバータは細かく設定できるようになっていますが、試運転した結果、周波数と運転方法を設定するだけでいいと思います。
取扱説明書に設定方法が記載されているので、敢えてここでは説明しません。
完成後はこのようになります。
ウォール・ボックスにインバータが納まりきらないので、インバータ操作面の大きさ分だけ、ウォール・ボックスの蓋をディスク・グラインダで切断して切り抜きます。
インバータは熱をもつので通気性の良い環境で使いたいですが、埃は極力入って欲しくないです。
そんなジレンマにかられましたが、ボックス下部の配線口を全て刳り抜き、蓋の切り抜き面とインバータ操作面との隙間も多めにし、通気を良くしました。
正確(取扱説明書から)には、もう少し大きいウォール・ボックスを使って通気性を良くしたほうがいいですけど、まあいいでしょう!?。
◎取扱説明書で目を通したほうがいいと思うページ
A-9→適用上のお願い
A-12→(3)線間の漏れ電流の影響
A-15→据え付け場所
E-8→1)定トルク特性