今回は、クボタ・トラクタKT30の前輪車軸(アクスル)の油漏れ修理です。
つまり、油漏れなのでオイル・シールを交換する修理です。
今回は、酸素アセチレン溶接(ガス溶接)を使いオイル・シールを外しました。
もちろん、ガス溶接を使わなくてもオイル・シールを外す事は出来ますが、作業効率が全然違います。
ガス溶接を使えばとても簡単で楽です。
主に必要な工具、道具:14㎜ボックス・レンチ、27㎜メガネ・レンチ、モンキ・レンチ、スクレーパ、耐水ペーパ(#800~1000)、ヤスリ、ハンマ、樹脂ハンマ、銅ハンマ、マイナス・ドライバ、鏨、10.5㎜ドリル、ウエス数枚、コンプレッサ(エア吹き掃除)、歯ブラシ、バーツ・クリーナ、灯油少々(洗浄用)、エンジン・オイル少々、排油箱、油圧ジャッキ、角材、液体ガスケット
ミッション・オイル(#80~90)4ℓ
※樹脂ハンマはあると便利ですが、なくても問題ありません。
ジャッキ・アップしてタイヤを外したところからの説明です。
ドレン・ボルトを外します。
四角プラグ(正ネジ)なので、モンキ・レンチを使います。
反対のギヤ・ケースのドレン・ボルトも外しておきます。
ギヤ・ケース・カバーの固定ボルト(頭部14㎜)を8本全て外します。
ギヤ・ケース・カバーを取り外します。
左写真のように、鏨をギヤ・ケース・カバーのツバ部分にあてがい、その上をハンマで叩きます。
対角線上にずらしながら叩いていくと、密着したケースとカバーの間にじわりと隙間が生まれてきます。
隙間にマイナス・ドライバを差し込み、少しづつ起こします。
じわりじわりとギヤ・ケース・カバーを引き離していきます。
ギヤ・ケース・カバーを取り外します。
このギヤ・ケース・カバーは、Oリングではなく液体ガスケットでシールされています。
中央のベアリング(6305)を取り外します。
ギヤ・プーラが入る隙間は全くありません。
ベアリングとベベル・ギヤの僅かな隙間に鏨を打ちこみます。
隙間が大きくなったら、ギヤ・プーラを使いベアリングを取り外します。
正しいかどうかは分かりませんが、私が行っている方法です。
2個のワリ・カラーを外します。
ワリ・カラーは車軸の溝に納まっているもので、手で簡単に外せます。
車軸を外します。
軸頭を樹脂ハンマで叩き、ギヤ・ケース・カバーから分離します。
樹脂ハンマが無い場合は、角材などをあてがって、その上から叩きます。
取り外した車軸(アクスル)です。
オイル・シールは軸付きタイプなので、左写真のようにスリーブが付いています。
ベアリング(6205)を外します。
ベアリングの内輪を適当な金属棒をあてがって、その上から叩いて外します。
オイル・シールを取り外します。
このオイル・シールは外周面(はめあい部)外側にツバが付いているので、このツバとケースの接合面に、マイナス・ドライバの先端をハンマを使って差し込み、ツバを起こしながら外していきます。
マイナス・ドライバは、左写真のような小さな物より、大きいほうが力が加わり外し易いと思います。
車軸のスリーブを取り外します。
酸素アセチレン溶接を使いシール(ゴム部分)を焼き払います。
全体を数十秒間熱すれば十分です。
焼き終わったら、マイナス・ドライバで起こして外します。
何の抵抗感もないので、とても楽です。
スリーブを取り外した後の写真です。
このようにスリーブのゴム部分が燃えて分離しています。
外した部品を並べてます。
中央にあるのがワリ・カラーです。
ベアリングは交換しないので、灯油、又はパーツ・クリーナできれいに洗浄しておきます。
ギヤ・ケース・カバーをきれいにします。
ギヤ・ケースとの接合面に残っている液体ガスケットを、スクレーパを使いきれにします。
ある程度剥がせたら、ラッカ・シンナを浸み込ませたウエスで擦ってきれいにしていきます。
ラッカ・シンナが無い場合、代用品としてキャブレータ・クリーナ、バーツ・クリーナなどを使います。
ギヤ・ケース・カバーを取り外す時に、鏨で叩いた部分が盛り上がってしまったのならヤスリで平らにしておきます。
ギヤ・ケース・カバーのボルト穴に付着している液体ガスケットを掃除します。
これは私が行っている方法で、10.5㎜のドリルを穴に入れたり出したりして、液体ガスケットを削り取ります。
ある程度きれいになれば良しとします。
車軸のスリーブ接合面をきれいにします。
最初に、底の部分にこべり付いた汚れをマイナス・ドライバで擦り取ります。
スリーブ接合面は、灯油に浸けた耐水ペーパ(#800~1000くらい)で磨いてきれいにします。
最後は、灯油浸けした歯ブラシで全体を磨いた後、コンプレッサでエア吹き洗浄します。
根元の腐食が進んでいる場合は、粗い耐水ペーパ(#320くらい)で磨いてから細かい耐水ペーパ(#800~1000)で磨きます。
車軸にスリーブを取り付けます。
スリーブは、新品の軸付きオイル・シールから外します。
スリーブの内側に薄くエンジン・オイルを塗付します。
スリーブが傷付かないようにして、パイプをあてがい、その上をハンマで叩いて打ちこみます。
スリーブが傷付かないようにするため私がよく行う方法です。
新品のオイル・シールが入っていた袋の中心を破り、全体を覆うように被せるだけです。
その上に鉄パイプや塩ビのパイプをあてがいます。
鉄パイプの上を対角線上にずらしながらやさしく叩き、奥まで打ち込んでいきます。
金属音が変われば、奥まで入った事になります。
このようにきれいに取り付きます。
下処理をしっかりしてしてあるので、スリーブは無理なく打ち込めます。
下処理をきれいにと言っても、全体を簡単に磨く程度です。
オイル・シールを取り付けます。
オイル・シール外周部に薄くエンジン・オイルを塗付します。
外周面(はめあい部)外側のツバを、対角線上にずらしながら叩いて打ち込んでいきます。
リップ部を叩いて破かないように注意します。
ここでも一応は金属棒などをあてがって、その上から叩きます。
スリーブにグリースを塗付します。
ここではリチウム・グリースを使っています。
塗付量は適当です。
次の作業に備え、角材の上に車軸を載せます。
ギヤ・ケース・カバーを取り付けたら、ベアリング(6205)を打ちこみます。
鉄パイプをあてがって、その上を対角線上にずらしながら叩いて打ち込んでいきます。
金属音が変わるまで叩きます。
ワリ・カラーを入れてベベル・ギヤを取り付け、ベアリング(6305)を叩いて打ち込みます。
ベアリングは直接叩いて問題ありませんが、必ず内輪を叩きます。
当然ですが、対角線上にずらしながら、金属音が変わるまで叩いて打ち込んでいきます。
ギヤ・ケースのギヤ・ケース・カバーとの接合面をきれいにします。
スクレーパを使い液体ガスケットをある程度剥がしたら、ラッカ・シンナを浸み込ませたウエスで擦ってきれいにしていきます。
最後は、灯油浸けした歯ブラシで全体をきれいに磨いたら、コンプレッサでエア吹き洗浄します。
ギヤ・ケース・カバーとの接合面に、液体ガスケット(1215)を十分に塗付します。
ギヤ・ケースにギヤ・ケース・カバーを取り付けます。
平行ピンの位置を合わせて、ゆっくり行います。
手で嵌め込めるところまで嵌めたら、落ちないように固定ボルトを2~3本仮締めしておきます。
固定ボルト(頭部14㎜)を全て取り付けます。
対角線にずらしながら、じわりじわりと締めていきます。
また、途中で車軸をハンマで軽く叩きます。
次第に、ギヤ・ケースとギヤ・ケース・カバーが完全密着します。
全ての固定ボルト(頭部14㎜)をしっかり締め付けます。
ドレン・ボルトも取り付けておきますが、シール・テープを巻く、若しくは液体ガスケットを塗ってから取り付けます。
液体ガスケットが乾くまで、1日このままにしておきます。
決して直ぐにオイルを入れてはいけません。
翌日、注油口のボルト(頭部27㎜)を外しギヤ・オイルを4ℓ入れます。