今回は、アグリップ管理機KG70の耕運軸からオイルが漏れる症状の修理です。
この管理機は、内側の爪軸が逆回転し、外側の爪軸が正回転するタイプです。
必要工具と道具: 12㎜ボックス・レンチ、4㎜6角レンチ、マイナス・ドライバ、ラジオ・ペンチ(若しくは鏨)、ハンマ、耐水ペーパ(#1000)、パーツ・クリーナ、潤滑剤、リチウム・グリース、緩み止め剤(取り外し可能タイプ)、ノギス、ウエス、コンプレッサ、ジャッキ、鉄パイプ(各種)、叩き棒、角材、廃油箱(低い物)、オイル・ジョッキ
ミッション・オイル(#80)
高圧洗浄機できれいに洗います。
オイル・シールを打ち込む時に、上から砂塵が落ちてきたら修理になりません。
外側の爪軸を外します。
Rピンを外し頭付きピンを抜いたら、爪軸を引き抜くだけです。
取付時に位置が分かるように、白ペンなどで印を付けておきます。
内側の爪軸を外します。
オイルが浸み込んでいたので、簡単に引き抜けました。
取り外した内側の爪軸です。
内側のロータリ軸からオイルが漏れていることが分かります。
ちなみに、爪軸が引き抜けない場合は、叩き棒などを爪ホルダ根元にあてがい、その上をハンマで叩いて衝撃で外します。
外側の爪軸と内側の爪軸の回転(ロータリ)軸には、それぞれオイル・シールが取り付いています。
内側のオイル・シールだけ交換すれば直りますが、折角なので外側のオイル・シールも交換します。
ラジオ・ペンチで掴んで外しました。
油漏れの恩恵で簡単に外れました。
ラジオ・ペンチで簡単に外せましたが、通常なら左写真のようにフェザ・キーに鏨をあてがって、その上をハンマで叩いて少しづつ起こして外します。
フェザ・キーを外した次はオイル・シールを外します。
最初に内側ロータリ軸のオイル・シールを外します。
見えているオイル・シールは、通常とは反対向きに取り付いています。
オイル・シールの嵌め合い部(外周面)に向かって、ハンマで叩いてマイナス・ドライバの刃先を打ち込みます。
ケース側の接合面を傷付けないように行います。
左写真のようにマイナス・ドライバの刃先を斜めに差し込み、その刃先を起こしてオイル・シールを外します。
仮にケース側の接合面に深い傷を付けてしまった場合は、オイル・シール取付時に液体ガスケットを塗付すれば大丈夫です。
その場合は、油分を拭き取って行います。
奥にメインのオイル・シールがいます。
この狭い隙間にあるオイル・シールは、通常の向きで取り付いています。
これを外します。
マイナス・ドライバの刃先を、オイル・シールの大気側面(ゴム部分)に向かって真っ直ぐ打ち込みます。
左写真のように破壊!?します。
当たり前ですが、ケース側の接合面とロータリ軸の摺動面に傷を付けないように行います。
マイナス・ドライバの刃先を入れて、じわりと起こして外していきます。
重いと思ったら無理に起こさず、何箇所か破壊してから行います。
オイルが出てくるので、廃油箱を下に置いておきます。
ハンマを使って何度かマイナス・ドライバの刃先を打ち込んだ結果、原形を留めておらず比較的簡単に取り外せました。
外側爪軸のオイル・シールを外します。
取り外し手順は、内側オイル・シールと同じです。
オイル・シールの大気側面にマイナス・ドライバの刃先を打ち込みます。
内側オイル・シールの取り外しと同じで、ロータリ軸の接合面と摺動面に傷を付けないように行います。
マイナス・ドライバの刃先を起こして、オイル・シールを外します。
これで、右側の爪軸にあるオイル・シールは全て外れました。
左写真で分かるように内側ロータリ軸のオイル・シールは、決まった位置で固定される構造になっていません。
ベアリング外輪で受けるようにもなっていません。
まだギヤ・オイルを抜いていなかったので、廃油箱を置くスペースを確保するためにジャッキ・アップして右タイヤを外します。
ギヤ・オイルの排油口は、右車軸の下にあります。
タイヤは、頭付きピンとRピンで固定されています。
Rピンと頭付きピンを外します。
右タイヤを外したら、廃油箱を置く場所を作るため、車軸に適当な鉄パイプを差し込み、その下に転倒防止のために角材を入れます。
ドレン・ボルト(頭部12㎜)を外してミッション・オイルを抜きます。
通常、排油は最初に行うものですが、このように途中で行ってもいいのです。
ドレン・ボルトにはOリングが付いているので、無くさないようにします。
というより、Oリングはなるべく新品に交換しておきましょう。
ロータリ軸を#1000の耐水ペーパを使って磨きます。
必ずロータリ軸に潤滑剤(灯油やオイルでもOK)を吹き付けてから行います。
磨き終わったら潤滑剤(灯油もOK)で全体の汚れを落とし、最後はコンプレッサでエア吹き洗浄しておきます。
ミッション・オイルを抜き、ロータリ軸の下処理も終わったら、ドレン・ボルトを取り付け、タイヤもはめておきます。
オイル・シールの取り付けに使う4本の鉄パイプです。
オイル・シールの外径になるべく近いものを用意しました。
パイプはきれにしておきます。
リチウム・グリースを塗付します。
塗付という表現から程遠くなっていますが、嵌め合い部に限ってはエンジン・オイルでもいいですね。
オイル・シールにパイプを真っ直ぐあてがい、その上をハンマでやさしく叩いて打ち込んでいきます。
奥までオイル・シールを打ち込みます。
奥まで入ったかどうかは、打撃音が変わるので分かります。
パイプの叩く位置を少しづつ変えては叩き、全体がきっちり奥まで入ったか確認します。
奥まで打ち込んだ後の写真です。
写真上、見やすくするためグリースを拭き取ってあります。
次にオイル・シール(VC)を取り付けます。
先のオイル・シール(TC)とは向きが違います。
仕上げにパイプを使って、オイル・シールを奥まで打ち込みます。
ハンマでパイプをやさしく叩き、メインのオイル・シール(VC)に当たるところで打ち込みを止めます。
片寄っていないことを確認出来たら、右の外側ロータリ軸のオイル・シール交換は終了です。
内側のオイル・シールを取り付ける前に、2つのオイル・シール(TC、VC)を合わせて厚みを測っておきます。
厚みは大体13㎜ですね。
ケース側のオイル・シールが取り付く面の奥行き(有効幅)は、大体17㎜でした。
オイル・シールの出面が取り外し前は面一だったので、単純に2つ重なって取り付いていたとして、17-13=4で奥から4㎜手前にいたことになります。
つまり、打ち込む時は気を付けないと、必要以上に入り過ぎてしまいます。
リチウム・グリースを塗付します。
嵌め合い部にエンジン・オイルを塗付するのもいいと思います。
手でオイル・シールを入れます。
前項で説明してきましたが、このオイル・シールは打ち込み過ぎないように気を付けなければいけません。
パイプを使います。
ちょうどいいサイズのパイプは、この短いものしか持ってませんでした。
後項で延長に使っているパイプは長さもあっていいのですが、パイプ径が少し小さく、当て物として使うには少し不十分なので、短いですがオイル・シールの外径により近いサイズである、このパイプを当て物として使いました。
さらにパイプを延長させて、その上をハンマで叩いてオイル・シールを打ち込んでいきます。
簡単に入っていくので、片寄らないように気を付けて慎重に打ち込んでいきます。
片寄っている(斜めに取り付いている)とオイル漏れする可能性があります。
ノギスで測定して片寄っていないか確認しながら行います。
元の位置より1㎜くらい奥に打ち込みました。
仮に打ち込み続けると、ベアリングの保持器に接触するまで入っていき、そこで止まるはずです。
そうなったとしても問題はない(仕方がない)のですが、やはり元の位置と同等か少しだけ奥で収めたいものです。
作業時ロータリ軸は、オイル・シールのリップ部と回転摺動し続けています。
軸付きオイル・シールではないので、どうしても摺動摩擦でロータリ軸に摺動傷が入ります。
この摺動傷に、新しいオイル・シールのリップ部が重ならないように取り付けたいのです。
そうならないように、元の位置より少しだけ奥に取り付けるのです。
また、いきなり一番奥まで打ち込んでしまうと、それだけロータリ軸に泥が付く(錆びる)面積が増えるので、万が一またオイル・シールを交換しなければいけない時、きれいな摺動面が使えなくなってしまいます。
様々な農機具がありますが、オイル・シール交換でノギスを使うことは滅多にないので、この管理機のオイル・シール交換は難しいと言えるかもしれません。
手でオイル・シール(VC)を入れます。
指で押し込んでオイル・シールを取り付けます。
パイプを真っ直ぐあてがい、丁寧に打ち込みます。
力強く叩くと、奥のメインのオイル・シールまで動いてしまうので、気を付けて打ち込みます。
片寄っていないことを確認出来たら、右の内側ロータリ軸のオイル・シール交換は終了です。
ロータリ軸に古いオイル・シールの摺動傷が見えるので、元の位置より奥で取り付けた事が分かりますね。
爪軸(内側、外側)を取り付けるので、フェザ・キーを取り付けます。
多少の防錆効果も期待し、リチウム・グリースをロータリ軸全体に塗付しておきます。
内側の爪軸の固定ボルト(6角穴付き)に緩み止め剤を塗付します。
緩み止め剤は、取り外し可能タイプを使います。
内側と外側の爪軸をそれぞれ取り付けます。
内側の爪軸は、6角穴付きボルトをしっかり締め付けます。
外側の爪軸は、付けておいた印を合わせて取り付けます。
オイル栓を外し、ミッション(ギヤ)・オイルを入れます。
#80を5.2ℓです。