今回は、中央工業の動力噴霧機プチカルDC3513のVパッキンの交換について説明します。
この噴霧機はプランジャ式ですが、Vパッキンはプランジャ式の噴霧機において、水を吸い込み圧力をかけるための重要な部品です。
Vパッキンの交換サインは、水を吸わない、圧力が上がらない、プランジャから水が漏れるの何れかの症状です。
これらの症状で、水を吸わない、圧力が上がらないに関しては、吸水ホースの接続(接続金具の緩み、パッキン確認)、ストレーナの詰まりなどの初歩的な原因で起こる事が多いので、まずその確認をする事が先決です。
今回の症状は、水を吸い込み圧力も上がるのですが、プランジャから水が漏れてきます。
単にグランド・ナットを少し締めれば、プランジャとVパッキンの摺動面がより密着するので、このプランジャからの水漏れは直る可能性があります。
しかし、水が漏れるという事はVパッキンが摩耗してるという事なので、摩耗して出たVパッキンのゴムカス(粉塵)などで、プランジャの表面に傷が入る可能性が増します。
プランジャ表面に傷が入る事だけは避けたいので、分解して粉塵を落とし、Vパッキンも交換する事にします。
安価な小型噴霧機でも部品を交換すれば長く使う事が出来ます。
必要工具と道具: 14㎜ボックス・レンチ、マイナス・ドライバ、ラジオ・ペンチ、潤滑剤、パーツ・クリーナ、ウエス、万能グリース、ノギス(あれば良い)
左写真では解り難いですが、プランジャから霧状に水が漏れてきます。
先にも述べていますが、プランジャから水が漏れてくるという事は、水を吸い込み圧力をかけるために重要な役割を果たしているVパッキンが摩耗してるという事です。
このまま使い続けると、ゆくゆくは圧力が上がらなくなり、プランジャの表面に傷が付き易い状態になります。
プランジャ・カバーを外して見ていても、すぐに全体が濡れてくるので、3本のうちどこから漏れているか分かりません。
というより、Vパッキンは全箇所同時交換するのが当たり前なので、どこから漏れているのか知る必要ありません。
吸上ケースとシリンダを固定している2個のナット(頭部14㎜)を外します。
吸上ケースを外します。
バルブが1個くっ付いて一緒に外れてきています。
今回の症状にバルブは関係ないので、左写真のようにシリンダに戻しておきます。
ちなみに、セッティングに問題がないのに水を吸わない症状の場合、このバルブを確認します。
バルブが固着していたり、バルブにゴミが引っ掛かっていると駄目です。
指で弁を押して離した後、スムーズに弁と弁座が密着する(閉じる)か確認します。
バルブは押上ケース側にも3個あります。
シリンダを外します。
シリンダを最初から手で簡単に引き抜く事は出来ないので、左写真のようにマイナス・ドライバを差し込み、少しずつ起こすように外していきます。
シリンダを外すとプランジャが剥き出しになります。
3本のプランジャにそれぞれ角リングが付いていますが、これは関係ないので無視して構いません。
プランジャの表面をウエスできれいに拭いておきます。
見た感じ大した傷は入ってなさそうです。
プランシャの表面に傷が入ると、Vパッキンとの摺動面から圧力(水)が漏れ易くなるだけでなく、Vパッキンを傷め易くなります。
傷が入ったプランジャを直すには、基本的には交換するしかありません。
動力噴霧機や高圧洗浄機において、吸水ホースから砂を吸い込むのが良くないのは、Vパッキンを傷めるだけでなくプランジャの表面に傷が入るからです。
一応、グランド・ナットの出量をノギスで測っておきます。
念のためで、部品交換後のグランド・ナット締め付け時に、外す前と大まかに同じ出量か確認するためです。
緩み止めバネを外し、グランド・ナット(正ネジ)を外します。
緩み止めバネは、マイナス・ドライバとラジオ・ペンチで簡単に外せます。
グランド・ナットは、穴にシノなどを差し込んで少し回した後、手で簡単に外せます。
グランド・ナットの内側には、グリース・シールが取り付いています。
グランド・ナットを外すと、グリース・リングが見えます。
マイナス・ドライバ、もしくは指を入れてグリース・リングを外します。
左写真で分かると思いますが、グリース・リングにはVパッキンの摩耗で出たゴムカス(粉塵)がたくさん付着しています。
パーツ・クリーナで、きれいに洗浄しておきます。
真ん中と右のグランド・ナット、グリース・リングも同じようにして外します。
左写真は、パーツ・クリーナで軽く洗浄した後です。
Vパッキンは、凸部が外側を向いています。
3つのシリンダ穴から、Vパッキンを全て取り外します。
マイナス・ドライバで起こせば、簡単に外せます。
Vパッキンは、1つのシリンダ穴に3個重なって取り付いています。
つまり、合計9個のVパッキンを交換します。
左写真は、取り外したVパッキンのうちの2つです。
左に摩耗しているVパッキン、右にまだ使えそうなVパッキンです。
使えそうでも9個同時に交換します。
Vパッキンを外すと、Vパッキンの土台が見えます。
これも外します。
Vパッキンの土台です。
パーツ・リストでの部品名称はハウジングAとなっていますが、どうも部品と部品名称のマッチングに違和感を覚えるので、勝手ながらVパッキンの土台としています。
殆ど汚れていませんが、パーツ・クリーナで洗浄しておきます。
この土台の凸部に、Vパッキンの凹部が収まります。
Vパッキンの土台を外すと、もう何も外す部品はありません。
奥に見えるのはバルブです。
グリース・カップ(正ネジ)を外し、グリース注入口から古いグリースを取り除いておきます。
そして、パーツ・クリーナで洗浄しておきます。
きれいなグリースを詰めるためです。
Vパッキン全体に万能グリースを塗り付けます。
これは、シリンダにプランジャを入れ込む時の摩擦抵抗を減らし、組み付けを楽にするためです。
Vパッキンの土台を、凸部を外側にして奥まで入れた事を確認して、Vパッキンも凸部を外側に向けてシリンダに入れます。
向きを間違えないように1つずつ指で挿入し、確実に奥まで入れ込みます。
洗浄済のグリース・リングに万能グリースを塗り付け、シリンダに入れ込みます。
凹部がVパッキン側です。
グランド・ナットを取り付ける前にグリース・シールを交換します。
グリース・シールは、マイナス・ドライバで起こして外します。
グランド・ナットもパーツ・クリーナで洗浄します。
取り付けるのはOリングです。
外したグリース・シールとは違いますが、動力噴霧機ではよくある変更です。
Oリング回りに万能グリースを塗り付けてから、シリンダに取り付けます。
グランド・ナットは、じわっと締まったところでOKです。
当たり前ですが、3個とも同じ締め代にします。
出量も外す前とほぼ同じです。
締め過ぎると組み付けが重くなるばかりか、Vパッキンの寿命が短くなります。
緩み止めバネを取り付けたら、グリース注入口に万能グリースを詰め込みます。
後は、シリンダにプランジャを入れ込み、吸上ケースを取り付け、ナットを締め付けて完了です。
シリンダの組み付け(押し込み)は、リコイル・スタータ(エンジンSW切り)の紐をゆっくり回し、プランジャを往復させながら行うのがコツです。
当然ですが、シリンダは真っ直ぐ丁寧に押し込んで取り付けます。
また、2個の固定ナットは均等に締め付けます。