今回は、クボタ・トラクタSL48Hのオイル交換について記載します。
これまでオイル交換については幾つかの機種を例に述べてきましたが、今回はオイル交換前の準備を含め、これまでより詳しく説明します。
SL48H(デュアルシフト仕様)本機: クランク・ケース(エンジン)約7ℓ / エンジン・オイル・フィルタ / ミッション・ケース約35ℓ / 油圧オイル・フィルタ トランスミッション・オイル・フィルタ / 前輪車軸ケース約4ℓ
必要工具と道具: 14、19、24、27㎜メガネ・レンチ、フィルタ・レンチ、オイル・ジョッキ(ノズル先端が細いタイプ)、ウエス、潤滑剤、コンプレッサ、廃油箱×2、空ペール缶(20ℓ)×3
オイル交換前の事前準備:
◎エンジン・オイルとエンジン・オイル・フィルタの交換…交換時期:オイル200時間毎、フィルタ200時間毎
※従来のものと違い、オイルとオイル・フィルタは共に200時間で交換
クランク・ケースのドレン・ボルトは、エンジン真下のオイル・パンに2箇所あります。
2本のドレン・ボルト(頭部19㎜)を外し排油します。
銅パッキンが付いているので、廃油箱に落とさないように気を付ける事と、オイルが多少熱くなっているので火傷にも注意します。
銅パッキンは、オイル交換の度に交換する事が望ましいですが、外して見ると然程潰れていなかったので再利用します。
ドレン・ボルトと銅パッキンはコンプレッサを使い、エア吹き洗浄してきれいにしておきます。
オイルは時間をかければかける程より完全に抜けるので、時間に余裕があるなら、30分以上放置するのもいいかと思います。
しかし、完全に抜けると言っても、油路にもオイルがあるので本当の意味では完全に抜けません。
また、寒い冬季に屋外や壁のない屋根だけの場所で温かいオイルを抜いて長時間放置すると、エンジン内部が結露する可能性があるので、寒い時期の長時間放置は止めたほうがいいと思います。
ボンネットを開け、蝶ボルトを緩めて右サイド・カバーを外します。
オイル・フィルタの取付面をウエスできれいに吹き上げます。
オイル・フィルタの取り外し後は、すぐにオイルが垂れてきて取付面が汚れるので、ウエスで押さえるようにオイルを吸わせてきれいにします。
気になるような埃が付着したらパーツ・クリーナで落とすのもいいですが、これはオイル・フィルタ取付体が極端に冷えて結露するので、出来れば潤滑剤を吹き付けて埃を飛ばします。
コンプレッサを使ってエア吹き洗浄する場合は、回りに付着している土埃が舞うので注意が必要です。
新しいオイル・フィルタのシール部に、薄くエンジン・オイルを塗付します。
オイル・フィルタを手で確実に取り付けます。
力の入れ具合としては、結構強めの力で締め付ける感じで、シール部が取付面に接触してから、3/4回転(1回転弱)ほど回せばOKです。
フィルタ・レンチを使うと、締め過ぎてオイル・フィルタが破損する恐れがありますが、締め付け具合をしっかり把握(管理)できるなら、フィルタ・レンチを使っても全く問題ありません。
給油栓を外して(正ネジ)、給油口の回りと給油栓自体の汚れをウエスできれいに拭き取っておきます。
この時、給油口にゴミや粉塵を落とさないように注意します。
排油が終わったら、ドレン・ボルトを取り付けます。
ドレン・ボルトを少し入れたところで、ネジ山と銅パッキン、そして取付面を再度コンプレッサでエア吹きしてきれいにします。
きれいにした後、工具を使いしっかり締め付けます。
給油口から規定量エンジン・オイルを入れ、オイル・ゲージの上限線(H穴)と下限線(L穴)の間で、なるべく上限線付近までオイルが付着しているか確認します。
このトラクタに搭載されているエンジンは、DPF搭載コモンレール型なので、必ずDH2(10W-30)オイルを入れます。
オイル・ゲージは、最初に抜き取った時に付着しているオイルで油量を判断せず、ウエスで付着しているオイルを一度きれいに拭き取ってから、改めてオイル・ゲージをゲージ穴の最奥まで差し込んでから抜き取り、そこで付着しているオイルを見て油量を判断します。
上限線と下限線の間にオイルの付着がなければ、付着するまでオイルを補給し、付着している事を確認出来たら給油栓をし、エンジンを5分くらいかけてオイル・フィルタ回りからの油漏れがないか確認します。
エンジン停止後、10分くらい経過したら再びオイル・ゲージを外して確認し、上限線と下限線の間の上部までオイルが付着していればOKです。
少なければ給油栓を外し、オイル・ゲージの上限線、またはその近くまでエンジン・オイルを補給し、給油栓をします。
◎ミッション・オイルと油圧オイル・フィルタ、トランスミッション・オイル・フィルタの交換…交換時期:オイル400時間毎、両フィルタ200時間毎
ミッション・ケースの主なドレン・ボルトは、ミッション・ケース真下のやや左側にあります。
まずは、このドレン・ボルト(頭部24㎜)を外します。
一気に外さず、半分緩めたところで一旦止めます。
改めて空ペール缶の位置を確認し、パッキン(ゴム付き座金)を落とさないように注意しながらドレン・ボルトを外し排油します。
2缶分は出るので、もう1缶横に置いて準備しておきます。
給油栓には空気の抜け穴が開いていますが、この穴を含め全体をきれいにしておきます。
ミッション・ケースのドレン・ボルトは後車軸ケースの内側にもあります。
ミッション・ケース真下の排油口からある程度のオイルが排出されたら、一旦軽くドレン・ボルトを取り付け、オイル一杯になったペール缶を移動させます。
左写真のように、左右両方にあるドレン・ボルト(頭部14㎜)を外します。
銅パッキンを落とさないように気を付けるのと、オイルの抜き始めは、オイルが勢い良く出て廃油箱を飛び越えてしまうので、片方ずつ排油し、廃油箱の外に出ないように段ボールの切れ端を当てるなど工夫して上手く排油します。
ミッション・ケース真下の排油口の下に廃油箱(空ペール缶)を置き、再びドレン・ボルトを外し残り僅かのオイルを抜いている間に、トランスミッション・オイル・フィルタと油圧オイル・フィルタを外します。
外す順番に決まりはありませんが、カップ式(94㎜)のフィルタ・レンチがはまる油圧オイル・フィルタから外します。
はまると言っても甘噛みなので、手でカップを押さえながら緩めます。
次にトランスミッション・オイル・フィルタを外します。
左写真で分かるように、トランスミッション・オイル・フィルタはボディが丸いので、挟み込むタイプのフィルタ・レンチしか使えません。
フィルタ・レンチは、カップ式と挟み込みタイプの両方を使いましたが、実際は挟み込みタイプ(2段階切換式)のフィルタ・レンチ1つで何とかなります。
左写真は外した2つのオイル・フィルタで、左側が油圧オイル・フィルタ、右側がトランスミッション・オイル・フィルタです。
左側の油圧オイル・フィルタには、金属粉を取り除くためにシール部の内側にマグネットが付いていますが、そこそこの金属粉が付着しています。
これだけでも油圧オイル・フィルタの重要性が分かります。
オイル・フィルタ取付面の汚れをウエスできれいに拭き上げます。
ここもエンジン・オイル・フィルタの時と同じ方法で下処理します。
先にトランスミッション・オイル・フィルタを取り付けるので、シール部(Oリング)にエンジン・オイルを薄く塗付します。
トランスミッション・オイル・フィルタはシール部が取付面に接触してから、きっちり3/5回転締め付けます。
手で締め付けるのも良いですが、左写真のようにウエスでオイル・フィルタを覆ってフィルタ・レンチを使い、オイル・フィルタのボディを傷付けないようにして締め付けます。
当たり前ですが、このまま3/5回転まで無理に回すとボディが凹む可能性があるので、、とりあえす程々に締めておいて、どのくらい回したか覚えておきます。
油圧オイル・フィルタを取り付けるので、シール部に薄くエンジン・オイルを塗付します。
油圧オイル・フィルタは、シール部が取付面に接触してから、2/3回転締め付けます。
手で締め付ける事が基本ですが、今回はやり難いのでフィルタ・レンチを使って締め付けています。
要は締め過ぎなければ、専用工具を使っても大丈夫という事です。
トランスミッション・オイル・フィルタの締め付けがまだ十分でないので、左写真のように、トランスミッション・オイル・フィルタの根元部分(凹部)を、マイナス・ドライバの先端をあてがい、その上をハンマで叩いてきっちり3/5回転締め付けます。
排油を終え、3本のドレン・ボルトをパッキンを入れて締め付けたら、給油口からミッション・オイルを入れます。
ちなみに、後車軸ケース下部のドレン・ボルトの銅パッキンは、潰れ具合から再利用は止めて交換しています。
オイル・ゲージでオイル量を確認し、上限線と下限線の間にオイルが付着するまでミッション・オイルを入れます。
エンジンを始動し、両オイル・フィルタ回りからオイルが漏れていないか確認し、5分くらい待ちます。
ついでにトラクタを動かさず(前後進させない)、中回転でポジション・レバーを最上位置にしてロータリを上げ、姿勢手動ボタンを右上げ(又は左上げ)に数秒間押し続けて、リフト・シリンダを油圧がリリーフするまで伸縮させてオイルを循環させます。
エンジンを始動し動作確認する過程でエアが自然に抜けるので、エア抜き作業は行う必要がありませんが、この作業を行う事で油路に残っている抜ききれなかった古いオイルを強制的に循環させます。
その後、ポジション・レバーを最下位置にし、ロータリを水平状態で下げエンジンを停止します。
数十分経ってから再びオイル・ゲージで油面を確認します。
最終的に、オイル・ゲージの上限線と下限線の間にオイルが付着していればOKです。
ピンボケの酷いよく分からない写真しか撮れていなかったので、ちょっと明瞭化加工しています。
写真ではオイルの付着が分かり難いですが、上限線を越えない程度にオイルが付着しています。
仮に、オイルを入れ過ぎて上限線を少々越えても、故障するとか不具合が起きるとかはありませんが、オイルが無駄になるので出来るだけ適量に合わせます。
◎前輪車軸(フロント・アクスル)ケース・オイルの交換…交換時期:300時間毎
前輪車軸ケースのドレン・ボルトは、前輪ギヤ・ケースの下側にあります。
左写真で分かるように、廃油箱までオイルを流すため切った軒樋を使っていますが、これは段ボールの切れ端でも代用できます。
左右にオイルの抜き口があるので、両方のドレン・ボルト(頭部14㎜)を外して排油します。
左写真は、右側の排油口からドレン・ボルトを外した直後で、銅パッキンが残ったままの状態です。
へばり付いて残っただけなので、マイナス・ドライバの先端で起こして外しておきます。
左側にある給油栓ボルト(頭部27㎜)を外し、空気の抜けを良くします。
その下にある検油栓ボルト(頭部14㎜)も外しておきます。
当然、これにも銅パッキンが付いているので無くさないように気を付けます。
排油を終え、左右(2本)のドレン・ボルトをパッキンを入れて締め付けたら、給油口からギヤ・オイルを入れます。
ここで使うオイルは、トランスミッション・ケースに使用したミッション・オイルでOKです。
検油口からオイルが溢れて出てきたら一旦給油を止め、検油栓ボルトを仮付けします。
構造上、検油口を開けておくとそこから空気が抜けて給油し易い訳ですが、実際はオイルが規定量入る前にすぐに検油口からオイルが溢れ出てしまいます。
勢い良く入れるとすぐに溢れ出してくるので、ゆっくり少しずつオイルを規定量まで入れます。
ある程度オイルが入ったら、20分くらい放置します。
20分くらい経ったら、検油栓ボルトを外します。
検油口からオイルが溢れ出てこれば、オイルが適量入ったという事になります。