縦送りベルト交換(HPJ40AK)
ヒタチ田植機HPJ40AK(クボタSPJ40AK)で、縦送りベルトの交換修理です。
左写真で分かるように縦送りベルトが1本切れて無くなっているので、苗載せ台を外して新しい縦送りベルトを取り付けます。
裏側を確認してみると、縦送りベルトを張っている中央のスプリングが外れて無くなっています。
しかも、スプリングの引っ掛け部が千切れてありません。
縦送りベルトが切れた事と関係ありそうですが、何故こうなったのか分かりません。
経年劣化もありますが、直接的な原因は他にあるかもしれません。
後で苗載せ台連結金具を外し易くするため、エンジンを始動し、油圧を停止してから植付クラッチを入れ(副変速入り、主変速N)、苗載せ台を左寄りに移動させておきます。
この田植機は、畦際(条止め)クラッチがない簡素化されたグレードなので、組み付け時にクラッチ・ケーブルの通し間違えをする事はありませんが、通常はどの田植機も複数のケーブルが通っていて、組み付け時に正しい箇所を通さないといけません。
そのため、苗載せ台を外す時は外す前の写真を何枚か撮っておく事が重要です。
組み付け時に写真で確認が出来れば、組み間違いを防ぐ事が出来ます。
左右の引張りスプリングを外します。
4条なのでスプリングが細く、手の力だけで外せますが、苗載せ台を寄せてスプリングが最も張っていない状態にすれば、より簡単に外す事が出来ます。
スプリングは意味があって左右の色が違うので、どちらに付いていたか分かるように、また、それぞれどの穴に引っ掛けてあったのか分かるようにマーキングしておきます。
ベータ・ピンと固定ナットを外して、苗取りケーブルを外します。
頭部12㎜の固定ボルトを2本外し、苗載せ台連結金具を外します。
苗載せ台連結金具を外したら、横送りステー(白いブラケット)を手前に逃がしておきます。
苗載せ台を外すため、右方向に引きます。
途中で苗取りケーブルが邪魔になるので、止めている結束バンドを切ります。
苗載せ台をそのままの姿勢でゆっくり引いて外します。
本来は、受け材との連結を外してから、苗載せ台を持ち上げて外しますが、4条で小さく扱い易いのでこのように外しています。
摺動板の汚れを落とします。
キャブレータ・クリーナやパーツ・クリーナなどを使えば楽に落とせます。
苗載せ台の下部にある黒い樹脂の部品が、前述にあった苗載せ台の受け材です。
縦送り軸の支持材である縦送り軸ホルダと各条クラッチ・ホルダを固定している頭部10㎜のナットを全て外します。
受け材と縦送り金具も外します。
頭部10㎜のボルトを外して苗取りケーブルの支持金具を外したら、ビームを固定している頭部10㎜のナットを全て外します。
苗切れセンサのコネクタも全て外します。
苗載せ台から、縦送りロッドとビームを外します。
ビームにはワイヤハネースが付いたままです。
縦送り軸は、外しても外さなくてもどちらでも良いです。
新品の縦送りベルトを入れて元に戻します。
中央の2本だけ(中央のスプリングが付く箇所)が新品の縦送りベルトです。
縦送りロッドのプーリが摺動する面にグリースを塗って、元に戻していきます。
中央スプリングが取り付く部分を何とかしないといけないので、左写真のような部品を適当に作ります。
ステン板に5㎜の穴を2つ開けたものです。
破損した箇所に取り付けます。
念のため、ネジに緩み止めを塗っておきます。
中央のスプリングを付ける前に手で縦送りベルトを張ってみると、古いものと比べ、明らかに縦送りベルトの張り具合が違います。
ざっくり言うと、古い縦送りベルトが縮んでしまっているという事です。
これでは、切れたものだけ交換という訳にはいきません。
縦送り軸、ビーム、縦送りロッドなどを元に戻し、スプリングを取り付けて縦送りベルトを張ります。
スプリングは、ラジオ・ペンチを使い嵌める事が出来ます。
中央のスプリングは、左右のスプリングより太いものが使われています。
部品の付け間違いやナットの締め忘れがないかを確認したら、下部の受け材にリチウム・グリースを塗付します。
摺動面にリチウム・グリースを塗付してから、連結用である2つの受け材を入れておきます。
大体でいいので、苗載せ台との連結位置と合わせておきます。
また、上部にある2つの白い受け材は、外して苗載せ台の摺動ビームに入れておきます。
同じようにリチウム・グリースを塗付します。
苗載せ台を持ち上げ、上から下ろして取り付けます。
上部の受け材は支柱フレーム、下部(摺動板)の受け材は苗載せ台との穴位置を合わせて下ろします。
4箇所全て嵌ったら、ナット(左右計4本)を締め付けて2つの受け材を固定します。
苗載せ台連結金具、引張りスプリング、ワイヤハーネスなども取り付けて元に戻します。
苗取りケーブルは、苗取り量を一番多い方にしておくと取り付け易いです。
アウタ・ケーブルの出代は、外す前と同じにしておきます。
横送り回数が26回である事を確認し、エンジンを始動して植付クラッチを入れ、苗載せ台を左右どちらでもいいので横移動させます。(この場では右に移動)
しかし、畦際クラッチが無いため植付アームも動いてしまうので、苗載せ台が最端に来た時、苗載せ台の中間材に植付爪が刺し込む恐れがあるため、その手前でエンジンを停止させます。
ここからは手で植付アームを動かして、植付爪が中間材を突き刺さないか確認します。
突き刺す事はなかったのですが、左写真で分かるように、苗載せ台の最端位置が少し右に来すぎています。
左写真のように、縦送りカムがローラ・クラッチ・ホルダを蹴り上げて縦送りベルトが作動する時、苗載せ台は最も端に来ますが、植付爪は、その僅か前と後に苗取り出し口を通過するようになっています。
仮に植付爪が中間材を突き刺しそうなら、振り分け調整ボルトを回して行き過ぎないようにします。
接触してませんが調整は必要なので、調整方法は後述します。
同じ手順で、苗載せ台を左に移動させて最端位置で止めます。
左写真で分かるように、今度は移動量が不足しています。
移動方向が切り換わる位置を左右均等にするため、苗載せ台の振り分け調整をします。
振り分け調整ボルト回りに十分なスペースが生まれるのは、苗載せ台が左側にいる時です。
横送りステー連結部のロック・ナット(頭部14㎜)を緩めます。
振り分け調整ボルト(頭部14㎜)を回し調整します。
今回の場合、少し緩めて(左に回して)苗載せ台を左に少し移動させます。
左写真のように、中間材が苗取り出し口ガイド(摺動板ではない)から約1㎜見えているのがベストです。
再び同じ手順で、苗載せ台を右に移動させて最端位置で止めます。
調整前と比べ、出代が少なくなってます。
左端と同じくらいの出代(約1㎜)に調整できたので良しとし、ロック・ナットを本締めして固定しておきます。
エンジンを始動して植付クラッチを入れ、苗載せ台の移動方向が切り換わる時(正確にはその前後)に植付爪が中間材を突き刺さないか、苗載せ台を数往復させて再確認します。
問題ないので良しとします。
最後に、縦送りベルトの作動量が12~14㎜であるか確認します。
苗取り量調節レバーを一度、最大取り量位置にしてから真ん中にします。
苗載せ台にマスキング・テープを張り、13㎜間隔に印しを付けます。
左写真のように最初の印しに合わせ、縦送りベルトにマスキング・テープを貼ります。
エンジンを始動して植付クラッチを入れ、苗載せ台を最端に移動させ、縦送りベルトを作動させます。
左写真は、1回作動させた時のものです。
左写真は6回作動させた時のものですが、13㎜の作動量を維持しています。
他のやり方として、6回作動させた時の作動量を測定し、その数値を6で割り1回の作動量を求めてもいいですが、この時点で問題なさそうなので、これで良しとします。
仮に調整が必要な場合は、苗取りケーブルの中間にあるアジャスタで調整します。