後車軸ケースのオイル漏れ(GT3)
クボタ・トラクタGT3で、左の後車軸ケースからオイルが漏れてきます。
高圧洗浄機で洗ってから暫く放置しておくと、後車軸ケースとブレーキ・ケースの合わせ面からオイルが漏れてくるようです。
修理としては後車軸ケースを取り外して油分を取り除き、液体ガスケットを塗り直して組み付けるだけの作業ですが、アワー・メータがかなり回っていることもあり、折角なので後車軸のオイル・シールを交換することにします。
ということで、ロータリを外しミッション・オイルを抜きます。
左右両方の後車軸のオイル・シールを交換するので、ジャッキ・アップして左右の後輪を外します。
ジャッキ・アップ後の機体の重心バランスが悪いので、小型のジャッキを2つ使って機体を安定させています。
後車軸ケースに固定されている安全フレームの支柱パイプを外さなければいけません。
したがって、安全フレームを外します。
安全フレームは手で持っても大して重たくありませんが、フォーク・リフトで軽く吊っておいてから外します。
安全フレームの支柱パイプと補強パイプを外します。
ロア・リンクとチェック・チェーン、そしてリフト・ロッドも外します。
左写真は、取り外した安全フレームの支柱パイプと補強パイプです。
ブレーキ・ロッドを外したら、後車軸ケースの固定ボルトを全て外します。
上部2箇所の固定ボルトは、水平センサも一緒に留めています。
固定ボルトを全部外したからといって、いきなりドンと落ちるわけではありません。
一応は落ちないか気にしますが…。
ケースの接合面が液体ガズケットでへばり付いています。
ハブ回りを大きいハンマで(当て物をして)1~2発叩くと、衝撃で接合面に隙間が出来ます。
外れて落ちないように、受け止める準備をしておきます。
このトラクタの後車軸ケースは手で持てる重さです。
外す順番を間違えました。
ロア・リンク・ピンとブレーキ・レバーを外していなかったのです。
この状態では手前側(後車軸ケースとブレーキ・ケースの間)は外せないので、奥側(ブレーキ・ケースとデフ・ケースの間)で外します。
ハブ回りをハンマで叩く方法から変更です。
ここは落ち着いて、奥側をスクレーパを使って外します。
少しづつゆっくり外していきます。
玉らしいものが落ちてきました。
ブレーキ・ディスクなどを落とさないように、さらに慎重に行います。
左写真のように、後車軸ケースはブレーキ・ケースが付いたまま外れてきます。
前項で説明しましたが、ロア・リンク・ピンとブレーキ・レバーを外してないからです。
同じクボタでもGLやKLなどの型式と比べると、ブレーキ回りを完全に外さないといけない分、オイル・シール交換が面倒です。
後車軸ケースを慎重に外したので、左写真のようにお粗末な状態ですが何とかブレーキ・ディスクを落とさずに済みました。
何故落とさないように気を付けているかというと、落とすと元の順番と向きが分からなくなるためです。
組み付けは元と同じ順番と向きで行うのが、間違わない一番の方法です。
外からブレーキ・ディスク、ステータ、ブレーキ・ディスク、カム・プレートの順で簡単ではありますが…。
先程落としそうになった玉は、左写真のようにデフ・ケース側の窪みに収まる構造になっています。
説明のため落ちた玉を定位置(窪み)に置いていますが、落ちてこないのはオイルが持つ粘着性のためです。
手で玉を全部(5個)外し、無くさないようにしておきます。
ブレーキ・ケースを含む後車軸ケースには、左写真のようにカム・プレートが取り付きます。
前項でプラネタリ・ギヤリングが見える写真がありますが、そのプラネタリ・ギヤリングの中央にブレーキ・シャフトが入り、そこにブレーキ・ディスク、ステータ、ブレーキ・ディスク、カム・プレートの順に取り付きます。
再び、分解作業に戻ります。
32㎜のナットが付いているので、これを緩めてロア・リンク・ピンを外します。
右側の後車軸ケースを外す時は、先にロア・リンク・ピンとブレーキ・レバーを外すつもりです。
左写真は、ブレーキ・カムを外したところです。
軸用スナップ・リングを外しブレーキ・レバーを外せば、ブレーキ・カム(軸)を抜くことができます。
外したブレーキ・レバーとブレーキ・カムです。
これらはスプライン嵌め合いですが、位置を合わせるためのポンチ穴が付いているので安心です。
また、ブレーキ・カム(軸)とブレーキ・ケースの摺動面にはOリングが付いていて、オイルが外部に漏れないようになっています。
これで、ブレーキ・ケースを外すことができます。
この2つのケースの合わせ面からオイルが漏れていたのです。
どこのメーカのトラクタにも言えることですが、ケースの接合面からオイル漏れすることは稀にあります。
ここから後車軸を抜いてオイル・シールを交換するのですが、後車軸を抜くには遊星歯車装置(プラネタリ・ギヤリング)を外さないといけません。
固定ボルトのロック・ピンを外します。
真上に引き抜く感じでロック・ピンを外します。
マイナス・ドライバの先端を90度に曲げて、ロック・ピンを外す工具を作りました。
ロック・ピンを外したら、車軸の固定ボルト(頭部14㎜)を外します。
遊星歯車装置を手で持ち上げると、ベアリングが付いたままごっそり抜けてきます。
この遊星歯車装置は、所謂減速装置です。
遊星歯車装置を外したので、後車軸ケースから後車軸を外せる状態です。
後車軸を取り外します。
軸頭に当て物をして大ハンマで叩くだけですが、割と簡単に抜けます。
オイル・シール取り外して、きれいに下処理します。
ベアリングは交換しません。
ケースの接合面は、当然きれいにします。
左側の後車軸ケースに関しての作業は一旦ここで止め、右側の後車軸ケースを外しにかかります。
今度は先程の失敗を教訓にして、ロア・リンク・ピンとブレーキ・レバーを外してから後車軸ケースを外しました。
もちろん、分離するときはブレーキ・ディスクが落ちそうにはなりますが、左側の時と違って上手く残せました。
一気に進みますが、ケースの接合面をきれいにして組み付けていくところです。
玉は脱落防止のため、薄くリチウム・グリースを塗付して定位置(窪み)に入れます。
2枚のブレーキ・ディスクは、左写真のように互いの4つ穴が塞がらないようにして取り付けます。
ブレーキ・カム軸を入れておきます。
この後、液体ガスケットを塗付して慎重にブレーキ・ケースを取り付けます。
この組付け作業が、この修理で一番神経を使いますね。