左旋回だけ倍速がおかしい(KL385)
クボタ・トラクタKL385で、左旋回だけ倍速が働かない症状です。
試しに田圃で確認してみると、時々ですが確かに左回りで倍速が働かなくなります。
正確には入ったり切れたりする感じです。
とりあえず、ラジエータの下あたりにある切れ角センサと作動ロッドを確認します。
ロッドの変形やセンサのがたつき、そして配線カプラ回りは、見た感じ触った感じで特に問題なさそうなので、お馴染の自己診断機能を使って確認します。
表示切換と走行モードのスイッチを同時に押しながらキー・スイッチをONにし、「診断」→「チェック」の順に実行し「倍速」を選択し、倍速(切れ角センサとその配線など)に問題があるか確認します。
メータ・パネルの指示通りにハンドルを真っ直ぐにします。
エラーが出ずに「OK」と表示されるので、約5Vの出力電圧とセンサを通して返す電圧は、この時点では問題なさそうです。
この時点というのは、このチェック・モードがハンドルを真っ直ぐという決まった条件にした時に、センサを通して返してくる電圧を予めプログラムで決まった電圧と比較して、同じ(許容範囲内)か判定しているだけに過ぎないからです。
つまり、ハンドルをどちらかに切った状態において判定している訳ではないので、仮にハンドルを切ったままチェック・モードで倍速の確認をすると、正常な切れ角センサでも切れ角センサの故障と判定されます。
この事からハンドルを切った状態でどうなのか、という事を知る必要があります。
GLモデルと違い、このトラクタにはテスタ・モードという大変有難い機能が備わっているので、これを使います。
キーOFFにした後、再び表示切換と走行モードのスイッチを同時に押しながらキー・スイッチをONにし、「診断」→「テスタ」の順に実行し「切れ角」を選択して、切れ角センサを通して返ってくる電圧を表示させます。
ハンドルが真っ直ぐの状態で2.25Vと表示されます。
これは、サービス・マニュアルを見ると規定値内なので問題ありません。
問題がないから先程の自己診断機能でエラーが出ずにOKとなる訳です。
エンジンを始動し、ハンドルを一杯左に回してみます。
3.54Vと悪くない電圧ですが、どうも安定しません。
突然、2.4Vまで電圧が落ちます。
これはおかしいです。
切れ角センサの抵抗値が安定しないようです。
この状態で田圃に入って試しに左旋回し続け確認してみると、倍速が切れる時にやはり電圧も下がります。
ちなみに右旋回は異常がないので、右に一杯回した時の電圧1.01Vは安定しています。
大体この辺りの数値(電圧)が出ていれば正常と判断できます。
切れ角センサの交換作業に入りますが、先にマフラを外さないと、狭くて手や工具を十分に入れる隙間がありません。
マフラを外したら、オルタネータをずらしてファン・ベルトも外しておきます。
カプラを外します。
オス側のツメを起こしたまま引き抜く訳ですが、これが割りとやり難いです。
割りピンを外し作動ロッドの片方(ピットマン・アーム側)を外したら、頭部10㎜の固定ボルト2本を外し、切れ角センサを取付板ごと外します。
左写真のように、切れ角センサは作動ロッドが付いた状態で外れてきます。
作動ロッドと切れ角センサを外します。
切れ角センサの軸にがたつきはありませんが、抵抗が安定しないようでは可変抵抗器としてもう使えません。
テスタ・モードで既にセンサ(可変抵抗器)が故障していると判断しているので、サーキット・テスタを使っての抵抗値の確認はしません。
ファン・ベルトとマフラを取り付けたら、部品交換作業としてはこれで終わりです。
切れ角センサを交換したので、ハンドルが真っ直ぐの時の基準電圧をマイコンに書き換えします。
表示切換と走行モードのスイッチを同時に押しながらキー・スイッチをONにし、「微調」→「倍速」の順に実行し倍速微調整モードに入り、メータ・パネルの指示通りに行い書き換え完了です。
試しに再びテスタ・モードを使って倍速を選択し、ハンドルを左に一杯回してメータ・パネルに表示される電圧を確認します。
今回表示される電圧は3.6Vですが、修理前と違い安定しているのでOKです。
もちろん試験走行も行い、これも問題なくOKです。