修理時に遭遇する錆びによる膠着などで、通常の方法では何ともならない場合があります。
そんな時は、やはり溶接が頼みの綱になります。
また、古い機械の修理ほど溶接が必要になることが多く、ここでは溶接を使って修理した例を紹介します。
※「農業機械の修理とメンテナンス」でも、溶接を使っての修理例を記載しています。
日の本パワー・ディスクCZ400で、爪軸(爪取り付けパイプ)のオイル・シールとベアリングを交換します。
ちなみに、この機械の部品供給は、既に会社がなく不可能になりつつあります。
幸い爪軸のオイル・シールは、この時点でまだ取り寄せができます。
クロス・リング、軸用スナップ・リングを外すと、軸径の大きいクロス・フランジに、ベアリング6013LLUが手前と奥に2つ取り付いています。
酸素アセチレン溶接でベアリングの玉を落とそうにも、切断幅がないのと、深すぎて熱を加えられません。
爪軸をハンマで叩いてもビクともしないので、ここはギヤ・プーラをかけれるように一時的に改造します。
爪軸の外面に大きめのナット(頭部19㎜以上)を対角線上に二つ溶接します。
ある程度、適当な位置で構いません。
爪軸を取り外したら、溶接したナットはディスク・グラインダで削って外すので、ディスク・グラインダの刃を当て易いところになるべく溶接します。
ギヤ・プーラは、大きいGP8クラスを使います。
中心軸(駆動軸)は斜めに出ているので、真っ直ぐ力を加えることは出来ませんが、強く締まったらギヤ・プーラの頭部をハンマで叩いて衝撃を与えます。
これの繰り返して爪軸を出していきます。
また、駆動軸のネジ山を潰さないように、頭部19㎜くらいのナットを挟んで行います。
爪軸が抜けて、クロス・フランジが姿を現します。
クロス・フランジに取り付いているオイル・シールのスリーブは、大きめのマイナス・ドライバで起こして取り外します。
火で熱すると中のオイル・シールまで燃える可能性があるので、なるべく火は使わず行います。
ディスク・グラインダでナットの溶接部を削り落とします。
例えば片側だけ切り込みを入れて、そこにハンマで叩いて鏨の先端を打ち込めば、簡単に外すことが出来ます。
三菱コンバインMC15で、摩耗した駆動輪(スプロケット)の交換です。
ロック・プレートとボルトを外して駆動輪を外す訳ですが、ギヤ・プーラをかけて叩いても熱しても、どれだけやっても外せれません。
このような完全膠着した駆動輪は、酸素アセチレン溶接で切断して取り外します。
まず、ミッション・オイルを抜きます。
これは安全のためですが、どの道オイル・シールが燃えてしまい、オイル交換になります。
オイルを抜き終えたら、酸素アセチレン溶接で駆動輪の外輪の部分を切り落とします。
古い機械ですが、まだオイル・シールと駆動輪の発注ができました。
切り落とした駆動輪の外輪部分です。
溶断(切断)は中火程度の火の強さで、金属が赤くなったら素早く酸素を出して行います。
上手に行うには経験を積むしかないです。
次に、駆動輪本体を少しずつ削り落としていきます。
気を付けることは、スプラインを削らないことです。
少し削れてしまう程度なら問題ありませんが、なるべくなら無傷で外します。
コツは少しづつ行い、赤くなったら素早く削ることで、出来るだけスプラインまで熱を伝えないことですか…。
ものすごく地道な作業で時間もかかります。
ある程度削り落としたらハンマで叩いて外しますが、叩き難い場合は鏨などを当てて叩きます。
どこまで削り落とせばいいのかは膠着具合によります。
左側の駆動輪も酷い膠着だったので、同じように酸素アセチレン溶接で削り落とします。
ギヤがニュートラルであれば、車軸はパイプ・レンチなどで回せるので、やり易い位置まで回転させます。
左側の駆動輪は僅かな溶断で済みました。
ハンマで叩いて取り外しますが、叩き難い場合は鏨などを当てて叩きます。
オイル・シールは完全にゴム部分が燃えきっているので、簡単に外せます。
ベアリングを交換する場合も溶断して取り外せますが、奥に飛び散った鉄屑を根気よく取る必要があります。
長い磁石棒などを使い、根気よく取ります。
構造上、鉄屑はいきなりミッション・ケースまで入らないと思います。
これは、ギヤ・プーラを使う際に、軸芯にきってあるネジ山を潰さないようにし、尚且つギヤ・プーラを安定させる目的で自作した当て物です。
単に、丸棒を旋盤で適当に削っただけです。
ギヤ・プーラの軸先端を当てる側です。
通常は、ナットなどを当て物として使えば十分ですが、この当て物は、細く削ったほうをネジ穴に入れるので安定します。
自己満足の世界ですが、とても役に立ちます。