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動力噴霧機



動力噴霧機は、薬液や水などを高圧(20~30kgf/cm2)にして、ノズルで霧化して飛ばし防除や洗浄したりする機械である。

動力噴霧器には、背負型(バッテリ式含む)、可搬型(携帯/ポータブル)、定置型、車輪付き、走行型(ブーム・スプレーヤ)があり、プランジャ式とピストン式がある。

プランジャ、及びピストンの数は3つ(3連)あるものが多く使われている。

トラブルにおける原因と対処法


◎プランジャ式動力噴霧器の各部構造、役割

噴霧器の作動



ポンプ



ポンプは、薬液や水を吸い上げて圧力をかけて吐き出しするものである。

構造は、クランク機構によりシリンダ内を往復運動するプランジャ(ピストン式はピストン)のほか、吸入(吸込み)弁、吐出(吐出し)弁などからなり、動力は、エンジンまたはモータからVベルトを介しての回転運動によって伝達される。

クランク機構は、その回転運動をプランジャ(ピストン式はピストン)の往復運動に変換する機構である。

クランク機構があるクランクケースは、オイルによって潤滑し保護されている。


ポンプは、往復運動するプランジャによって生じる正圧負圧によって、吸入弁と吐出弁が交互に開閉し強制的に薬液や水を吸い込み吐き出す仕組みなので、使用後のポンプ内の洗浄を怠ったたり、ポンプ内の圧力を逃がさずに(ボール・バルブを閉じたまま停止)長期間放置すると、残った薬液や残圧が原因で吸入弁、または吐出弁が膠着し易くなる。

また、プランジャ回りの部品(Vパッキン)の消耗を早めるなど故障の原因にもなる。

したがって、使用後は必ず水道水を吸い込ませ残った薬液を排出し、ポンプ内をきれいにしておく必要がある。
そして、ポンプを停止させた後はボール・バルブを開いて、ポンプ内の圧力を抜いてから保管する。


吸入ホースの接続が正しくVベルトの張りが適正、そして定格回転で使用した上で薬液を吸い込まない症状で最も多い原因は、吸入弁、もしくは吐出弁の弁(バルブ)膠着である。

この場合いきなり分解点検するのではなく、吸入ホースのフィルタを外しておいて、ポンプを作動させたら吸入ホースを水道水の蛇口に押し当てて(当然漏れる)、水を直接ポンプに流し込ませる。

この時、余水ホースから水が出てこれば良い。

この方法で自然にバルブ膠着が取れ、症状が改善される事が多い。

使用するオイルについて

ポンプ部クランクケースのオイルは、市販のエンジン・オイル(#30)でガソリン用、ディーゼル用どちらを使っても良い。

オイルは、ポンプ下部にあるドレン・ボルトを外して抜き、確実にドレン・ボルト(パッキンあり)を締めてから、ポンプの真ん中くらいにある小窓からオイルが半分くらい見える位置まで入れる。

動噴の大きさにもよるが、大体0.4~6ℓ位入る。

オイルは、使わなくても酸化するので毎年交換するのが望ましいが、実際の現場では何年も交換せずに使い続けている場合は殆どである。

小窓から見てオイルが白く濁っている場合は、水が浸入してるということになり、注油栓の緩み、またはプランジャ周りのパッキン(水切りOリング、プランジャ・オイル・シール)が磨耗しているなどの可能性が考えられる。

この場合オイルだけでも交換しておくのが良い。
ちなみに、オイルが白く濁っているからと言って、圧力が上がらなくなる訳ではない。



調圧装置(調圧弁)



調圧装置は、吐出圧力の調整や圧力を一定に保つ役目をしている。

薬液の圧力が一定圧力以上になると、薬液はバネに抗して弁を押し上げて、余水口からホースを介して薬液タンクへ逃がすことにより、圧力を一定に保つ仕組みになっている。
一般には、ポンプの給水量(=吐出量)に対する余水量は、20~30%程度が適当である。

ポンプ吐出量(一定)=ノズル吐出量+余水量なので、ノズル(墳口)から薬液を噴霧すると余水量はその分だけ減る。
そのため、ポンプの能力に見合ったノズルを使うようにする 。

また、調圧弁はノズルが詰まったり、ノズルのコックを閉じたりする時に圧力を逃がして、機械が破損しないように安全弁としての働きもしている。

ノズルからの吐出圧力は、薬液が調圧弁を押し開く時の圧力と等しいため、圧力の調整は、調圧弁を押している調圧のバネの力を調圧弁調整つまみ(ネジ)を回して調節する。

空気室(エア・チャンバ)



空気室は、プランジャやピストンの往復運動により圧送される薬液の脈動(圧力変動)を、圧縮空気によって平滑にして、常に一定の薬液をノズルに送る役目をしている。

ノズル



ノズルは、圧力のかかった薬液を断面積の小さな穴から吐出させることによって、霧状にしたりするものである。

構造からジェットノズル、渦巻きノズル、扇形ノズルがあり、渦巻きノズルが比較的多く使用されている。

渦巻きノズルは、液剤がノズル内の中子のらせん溝によって渦巻きになり、小さい噴出口から出る時に微粒化され、中空円すい状の霧となって噴出させるものである。


ノズルの噴口は、絶えず高圧の水流ににさらされるので磨耗し易い。

噴口が磨耗して穴径が大きくなると、噴霧粒子が粗くなって噴霧量(流量)が増えるばかりか、圧力が低下して不均一散布となるので適宜交換したほうがよい。

使用における注意事項など



トラブルにおける原因と対処法



症状 原因 対処
圧力が上がらない  ①吸水ホースの接続不良(エア混入)
②吸水ホース破れ(エア混入)
③フィルタの詰まり
④Vベルトの劣化、断裂、すべり
⑤吸入弁、吐出弁のシート面ゴミ噛み、シート・パッキンの劣化、亀裂
⑥調圧装置の作動不良
⑦プランジャに傷(プランジャ式)
⑧Vパッキンの摩耗(プランジャ式)
⑨ピストンの摩耗(ピストン式)
①締め直し
②交換
③掃除
④交換
⑤掃除、交換
⑥点検、掃除、交換
⑦交換、オイル・ストーンで磨く
⑧交換
⑨関連部品の交換
吸わない     ①吸水ホースの接続不良(エア混入)
②吸水ホース破れ(エア混入)
③吸水ホースの接続部パッキン劣化、亀裂(エア混入)
④フィルタの詰まり
⑤Vベルトの劣化、断裂、すべり
⑥吸入弁、吐出弁の膠着、シート面ゴミ噛み、シート・パッキンの劣化、亀裂
⑦調圧装置の弁玉膠着
⑧Vパッキンの摩耗、破損(プランジャ式)
⑨ピストンの摩耗、破損(ピストン式)
①締め直し
②交換
③交換
④掃除
⑤交換
⑥水道蛇口から直接水を吸わせて作動させる、点検、掃除、交換
⑦掃除
⑧交換
⑨関連部品の交換
プーリが回らない ①オイル切れなどによるポンプ部クランク軸の焼付き ①関連部品の交換
薬液が漏れる ①ホース接続部のパッキン不良
②ホースの接続不良
③各ケース接続部のボルト、ナットの緩み
④各ケース接続部のパッキン(Oリング等)の劣化
①交換
②締め直し
③増し締め
④交換



作成日:2007/5