動力散布機は、送風機(ファン)による風圧で肥料もしくは農薬を散布する機械である。
背負い型、車載(手押し)型、自走式などがあるが、2サイクル・エンジン搭載の背負い型が最も普及している。
◎動力散布機(背負い式)の構造的特徴
背負い式動力散布機には、現在2サイクル・エンジンが多く使われる。
そして、使われるキャブレータはフロート式、または循環式が殆どである。
動力散布機は粒剤(多口噴頭、単口噴頭など)、または粉剤(単口噴頭、ジェット・ホースなど)を散布するのが主だが、薬剤タンクを交換してミスト機として使うことが出来る。
左図は、一般的な動力散布機の例である。
左図例で薬剤タンクの粒状肥料は、重力とファンの回転による負圧によってシャッタの開度分だけ吐出しケースに落ち、同時にファンの回転による風圧(正圧)で散布管に送られ、外に飛ぶ仕組みになっている。
一般に、基本開度は、シャッタ開度切換アームに取り付くロッドの位置を変えることにより変更出来る。
シャッタ開度切換アームに取り付くロッドの穴位置は、「大」「中」「小」の3段階あり、どの穴位置に合わせるかは、主に使用する散布管と散布する薬剤、そして作業条件によって変わるので、使用する動力散布機に貼ってあるラベルや取扱説明書にて確認する。
大まかに分けると、肥料は「大」、3k剤は「中」、1k剤は「小」である。
上図例のシャッタは両開き式なので、例えば「小」にすると片側だけが開くようになる。
他には、片開き式のシャッタを使ったものがあるが、これは1k剤を使用する時にシャッタに専用プレートを取り付け、落とし口を小さくするようになっている。
また、調量レバーを「閉」位置にしてもシャッタが開いてしまう場合は、ロッド下端部のロック・ナットを緩めてロッドの長さを調整する。
シャッタは、挟まり現象や吐出ムラが起きないように工夫されていて、吐出しケースは、より効果的な散布が出来るような形状になっている。
また、粉剤を散布する時に起こり易いブリッジ現象を抑える構造になっている。
一般に、背負い式動力散布機の薬剤タンクは、タンク固定レバーのロックを解除すれば簡単に取り外す事が出来る。
使用の注意点(機械)
動力散布機は、薬剤タンクを薬液タンクに交換して噴霧機(ミスト機)として使うことが出来る。
左図は、空気加圧式のミスト機の例である。
これは、送風機(ファン)から送られる風で薬液タンク内を加圧し、その圧力で薬液を攪拌させて送液菅へ送り、ミスト噴頭ノズルから薬液を細かく微粒化して分散させ、ファンから送られる風圧で霧にして散布する仕組みになっている。
噴霧機に比べるとより細かく霧化出来るので、使用農薬の濃度を濃くでき、散布量は少なくて済む。
左図例のような加圧パイプを設けず、送液ポンプを設けたものもある。
症状 | 原因 | 対処 |
薬剤が出ない | ①シャッタの膠着 ②噴管等の薬剤詰まり |
①掃除、膠着除去 ②詰まり除去 |
薬剤が飛ばない | ①タンク・キャップが閉まっていない ②シャッタの膠着 ③噴管等の薬剤詰まり ④風下側から散布している |
①しっかり閉める ②掃除、膠着除去 ③詰まり除去 ④風上側から散布する |
リコイル・スタータの紐が引けない | ①エンジンの焼付き ②リコイル・スタータの紐の絡まり |
①エンジンのオーバ・ホール ②巻き直し、交換 |
スロットル・レバーが動かない | ①スロットル・ワイヤの膠着 ②キャブレータのスロットル・バルブ膠着 |
①交換 ②キャブレータ掃除 |
エンジンが始動しない、調子が悪い、 始動方法… |
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