HOME修理TOP乾燥機

乾燥機



乾燥機は、籾を乾燥して適正な水分値まで下げる機械である。

乾燥機は籾に熱風をあてながら循環させる事で乾かしているが、マイコンで制御されているので、任意に設定した目標水分値になったら自動で停止するようになっている。

一般的に、籾の適正水分値は14~15%なので、そのあたりの水分値が目標水分値になる。


熱風を出す装置は灯油を燃焼させるバーナが使われているので、安全のため何か問題が起きればすぐに停止するようにマイコン制御されている。

バーナは、古いものはポット式が多く使われていたが、現在は噴霧式が殆どで、ガン・タイプとロータリ・タイプがある。

噴霧式はポット式に比べ点火、消火が瞬時にでき、使用に関しても安全で自動制御ができる。

また、最近の遠赤外線乾燥機はバーナからの燃焼ガスと、これを放射体に当てて発生する遠赤外線との両方で乾燥する方式のもので、従来のものとは違って籾の中心部からも乾かす事が出来るので、籾の中心部と表面の温度差が殆どなく低燃費で早く乾かす事が出来る。


乾燥機を作動させるための入力電源は主に三相200Vが使われているが、小型の乾燥機では単相モータやインバータを使用するなどして、単相200Vや100Vで作動させる事が出来るものもある。


一般的に乾燥機は、「張込」「通風循環」「乾燥」「排出」の4つの操作が出来るようになっている。

張込
コンバインで刈り取ってきた籾を乾燥機に入れる事である。
張込口は、昇降機の前や横に取り付けたホッパや本体側面から出来るようになっている。
通風循環
乾燥機の中で籾を循環させて、熱をかけずに風だけ通して乾かす事である。
風を通すだけなので胴割れし難いが乾くまで時間がかかる。
乾燥
乾燥機の中で籾を循環させて、熱風を通して乾かす事である。
正しいモード設定である事を前提に、目標水分値に近くなればなる程、頻繁に水分を測定し乾燥ムラが出ないようになっている。
排出
乾燥機から籾を排出する事である。
乾燥機の動作と大まかな流れ
乾燥機の保守
機械的トラブルの対処法
電気的トラブルの対処法


◎乾燥機の動作と大まかな流れ



正面ホッパから張り込みされた籾は、昇降機、上部コンベアによって乾燥部に落ち、順次貯留部に溜まっていく。

側面から張り込みされた場合は、最初に下部コンベアを経由するだけである。

通常、張込量が一杯になると、満量センサがそれを感知し自動停止する。


乾燥(通風循環)をかけるとロータリ・バルブが回るので、乾燥部にある籾は熱風で少しづつ乾きながら、循環機構部である下部コンベアの上に落ちると同時に、貯留部にある籾は、乾燥部に落ちるので熱風により乾いていく。

下部コンベアに落ちた籾は、すぐに昇降機、上部コンベアによって再び貯留部に送られる。


張込時に一杯だった籾は、数回循環する事でヒゲが取れ僅かに張込量は下がるが、その後は目標水分値になるまで、この循環を延々と繰り返すようになっている。

ヒゲは排塵機と送風機によってゴミとして機外に排出される。

ロータリ・バルブは連続運転ではなく間欠運転で回るが、これは設定したモード、熱風温度、現在の水分値などによって、マイコン制御で間欠のタイミングが変化するようになっている。


つまり、乾燥部の籾層の間を40~60℃の熱風で数分程の短時間通過させた後、循環し貯留部に一時貯え、乾燥と休止を繰り返している。
これをテンパリングまたは調質という。

乾燥部では籾穀だけが乾燥され、貯留部で穀粒内部の水分が籾穀に移り、乾燥ムラを減らし急激な乾燥による胴割れを防いでる。
(非遠赤外線タイプ)

また、操作盤での穀物量ダイヤルを実際の張込量より多く設定したりすると乾燥ムラになるので注意する。



籾を排出する時は、乾燥時に間欠運転だったロータリ・バルブが連続運転にかわり、下部コンベア、昇降機によって排出口から籾が排出されるようになっている。

また、直接籾摺り機に入れる場合で排出が滞った時は、そのまま上部コンベアによって貯留部に落ちるので、詰まる事がないようになっている。

胴割れについて


穀粒に亀裂が入る事を胴割れという。

これを防止するには急激な過乾燥を止め、乾燥速度を制限し、乾燥後の急冷を避ける事が必要である。

また、乾燥前の機械的損傷を減らす事も大事である。

運転時に稼動するもの



張込
昇降機、上部コンベア、下部コンベア、送風機(機械による、または設定で変更可能)、排塵機
通風循環
昇降機、上部コンベア、下部コンベア、ロータり・バルブ(間欠運転)、送風機、排塵機、自動水分計
乾燥
昇降機、上部コンベア、下部コンベア、ロータリ・バルブ(間欠運転)、送風機、排塵機、自動水分計、バーナ
排出
昇降機、上部コンベア、下部コンベア、ロータリ・バルブ、送風機(機械による、または設定で変更可能)、排塵機

安全装置、各センサ類



満量センサ(スイッチ)
最大張込量を検知する。
風圧センサ(スイッチ)
送風機の風量低下を検知する。風量低下時に燃料ポンプを止める。
失火センサ(半導体)
バーナの火(光量)を検知する。火が消えた時に燃料ポンプを止める。
熱風温センサ(半道体)
熱風器内部の過熱を検知する。異常燃焼(過熱)時に燃料ポンプを止める。
高温サーモスタット
熱風機内部の過熱を検知する。異常燃焼(過熱)時に燃料ポンプを止める。
穀物温センサ(半導体)
乾燥部の過熱を検知する。異常過熱時に燃料ポンプを止める。
外気温センサ(半導体)
外気の温度を検知する。異常温度時に燃料ポンプを止める。
サーマル・リレー(バイメタル)
モータに設定値以上の電流が流れると、バイメタルが湾曲し電磁開閉器の接点が外れモータへの電流を遮断する。
籾詰まりセンサ(スイッチ、半導体)
搬送経路内での籾の詰まりを検知する。詰まり検知時にモータを止める。
循環センサ(スイッチ)
ロータリ・バルブの回転位置を検知する。回転位置の異常時に燃料ポンプ、モータを止める。
オーバ・フロー・センサ(スイッチ)…一部の機種
バーナ燃焼中の燃料のオーバ・フローを検知する。検知時に燃料ポンプを止める。



◎乾燥機の保守



昇降機バケット・ベルト、バケット



昇降機は、バケット・ベルトが回転する事でバケットが籾を持ち上げ、上部コンベアまで送る事が出来る。

バケット・ベルトは、左図(例)のように張り調整ボルトで適正に張られている。

しかし、使用頻度に応じてバケット・ベルトは弛んでくるので、弛んできたら張り調整ボルトを回して適正に張る必要がある。

弛みが酷いと、バケット・ベルトが滑り籾を持ち上げる事が出来なくなる。

また、バケット・ベルトは使用頻度に応じて劣化する消耗品なので、バケットの裏側(止めボルト回り)でヒビ割れや破れが多く見られるようになってきたら、交換する必要がある。

昇降機バケット昇降機のバケットは、使用頻度に応じて消耗する部品なので、摩耗が酷くなったら交換する必要がある。

バケットの摩耗が酷くなると、十分に籾を持ち上げることが出来なくなるので詰まりの原因になる。

また、摩耗が酷い状態で使い続けるとバケットが割れて、最悪は破片が乾燥部まで行きロータリ・バルブに噛み込む事があるので、極端に薄くなってきたら早めに交換しておく事が望ましい。

バケット交換は、3回に1回はバケット・ベルトASSY(組)で交換するのが望ましい。

上部コンベア



上部コンベア上部コンベアは、昇降機から送られてくる籾を乾燥部、そして貯留部に送る役割がある。

上部コンベアは、使用頻度に応じて摩耗する部品なので、摩耗が酷くなったら交換する必要がある。

昇降機から送られてくる籾を受ける部分が特に摩耗するので、摩耗が酷くなると籾を送る事が出来なくなり詰まりの原因になる。


また、上部コンベアは昇降機と下部コンベアと同じように常に回転し続けているので、軸端部のベアリングも消耗品になる。

水分検出器



水分検出器水分検出器は、籾の水分を測定する機器である。

籾から殻を取り、玄米に通電させて抵抗値を測定しているので、正しく通電させるため通電部(検知部)にゴミが無い事が大事である。

玄米の水分率によって電気抵抗が変化することを利用している。

左図(例)での通電部は検知ロール間なので、検知ロール回りとブラシをシーズン毎に掃除する必要がある。

ブラシは、検知ロール回りのゴミ除去する部品なので外して掃除する。

バーナ



バーナには、ガン・タイプとロータリ・タイプがある。

ガン・タイプとロータリ・タイプの主な違いは、点火方式と噴射方式である。

ガン・タイプは、燃料ポンプから送られてくる灯油を噴射ノズルで霧状噴射し、点火トランスから電極(点火棒2本)に高圧電流を流して点火するので、点火が素早く容易に出来て、点火時と消火時の液ダレがなく、また炉筒を必要としないのでほぼメンテナンス・フリーである。

しかし、点火トランス、噴射ノズルなど故障時の部品交換が高額になる欠点がある。


ロータリ・タイプは、燃料ポンプから送られてくる灯油を噴口から回転するカップに当てて拡散させ、点火ヒータを赤熱させて点火するので、ガン・タイプに比べると点火に時間がかかり、点火時と消火時に多少なり液ダレするので、炉筒に煤が付着し易く定期的に分解掃除が必要である。

しかし、故障時の部品交換が比較的安価である。


ロータリ・バーナ左図(例)はロータリ・バーナである。

左図(例)のバーナは、エア・クリーナを外した後、ロータリ回転部(噴射部)と炉筒を分解した状態を示したものである。

バーナは使用頻度、環境に応じてカーボンなどの煤が溜まるので、不安定な燃焼が続くようなら分解して掃除する必要がある。

ロータリ・カップ、空気規制板上、炉筒内にカーボンが付着してれば、ワイヤ・ブラシや歯ブラシなどで掃除する。

エア・クリーナは、コンプレッサでエア吹き洗浄する。


ロータリ・バーナへの点火は、ヒータ(コード)を赤熱させて行っている。

燃焼中は高温にさらされ続けるので傷みやすく、またカーボンなどの付着により点火能力が下がるので点火出来なくなると交換する必要がある。

ヒータ(コード)は、碍子にニクロム線を巻いたものやセラミックのものがある。



◎トラブルと対処法(機械的)



症状 原因 対処
張込が出来ない(詰まる) ①Vベルトの摩耗、亀裂
②昇降機バケットの摩耗
③昇降機バケット・ベルトの緩み
④昇降機バケット・ベルトの破れによるバケット脱落
⑤昇降機バケット・ベルトが片寄りケース内側に接触
⑥上部コンベアの摩耗
⑦籾の入れ過ぎによる上部コンベア圧迫
⑧プーリ止めボルトの緩みによる空回り
①交換
②交換
③張り調整、交換
④交換
⑤張り調整(芯出し)
⑥交換
⑦排出、屋根部点検口から籾をすくい出す
⑧位置を合わせて締める
循環出来ない(詰まる) ①Vベルトの摩耗、亀裂
②昇降機バケットの摩耗
③昇降機バケット・ベルトの緩み
④昇降機バケット・ベルトの破れによるバケット脱落
⑤昇降機バケット・ベルトが片寄りケース内側に接触
⑥上部コンベアの摩耗
⑦籾の入れ過ぎによる上部コンベア圧迫
⑧ロータリ・バルブが回らない
⑨ロータリ・バルブのシート破れによる籾漏れ(山本乾燥機)
⑩下部コンベアの摩耗(特に遠赤外線タイプ)
⑪プーリ止めボルトの緩みによる空回り
①交換
②交換
③張り調整、交換
④交換
⑤張り調整(芯出し)
⑥交換
⑦屋根部点検口から籾の山を平にし、上部コンベアの籾落下調整(均分器)を適正にする
⑧循環(繰出し)モータ、それに関わる配線、チェーンの点検
⑨交換
⑩交換
⑪位置を合わせて締める
排出出来ない(詰まる) ①Vベルトの摩耗、亀裂
②昇降機バケットの摩耗
③昇降機バケット・ベルトの緩み
④昇降機バケット・ベルトの破れによるバケット脱落
⑤昇降機バケット・ベルトが片寄りケース内側に接触
⑥下部コンベアの摩耗
①交換
②交換
③張り調整、交換
④交換
⑤張り調整(芯出し)
⑥交換
排塵機から籾が出る ①風力が強すぎる ①排塵機シャッタをより開く、全開でも籾が出る場合はホース出口を絞る
昇降機から音がする ①ベアリングの破損、消耗
②バケット・ベルトが切れそうな状態
③バケット・ベルトの緩み
④バケット・ベルトの繋ぎ目裏側亀裂
⑤異物混入
⑥昇降機上部ケース内側磨耗、破損により破損部がバケットに接触
①交換
②交換
③張り調整
④交換、繋ぎ直し
⑤取り出し
⑥交換
上部コンベアから音がする ①ベアリング(特殊)の破損、消耗
②ベアリング(特殊)とベアリング・ケース膠着によるの調心不能
①交換
②潤滑剤、油をさす
循環するとき音がする ①ロータリ・バルブ軸の油切れ
②駆動チェーンの油切れ
①潤滑剤、油をさす
②油をさす
送風機が振動する ①ベアリング破損
②ファン・ケース内に埃付着
①交換
②掃除
貯留部内で籾の山が片寄る ①均分器の調整が片寄ってる
②上部コンベアの下部受け板が開いてる(少量乾燥の位置になってる)
①調整
②閉める(通常乾燥の位置にする)
いつもより乾燥に時間がかかる ①側面送風路のゴミ堆積
②水分検出器のゴミ詰まり(古い籾、籾殻など)
①掃除口(側面下部)を外して掃除
②掃除


◎トラブルと対処法(操作盤、電気系)


※通常は、主にエラー・コードで表示される。


症状 原因 対処
モータ過負荷 ①詰まりによる過負荷表示
②三相のうち一相欠相(単相運転)
③サーマル・リレーの電流設定値が低い
④サーマル・リレーの故障
⑤制御盤の故障、断線
⑥主モータ故障、それに関わる配線断線、漏電など
①詰まりをとり、サーマル・リセット、電源入れ直し
②ブレーカ元ヒューズ、差込プラグ、キャブタイヤ、主モータ入力線点検
③規定値に合わせる
④交換
⑤交換
⑥交換、点検、結線、ヒューズ点検
電圧降下 ①キャブタイヤが細い、長すぎる
②三相のうち一相欠相(単相運転)
③他にいくつか使用してる負荷(電気製品)がある
①太く、短く
②差込プラグ、キャブタイヤ点検、結線、ブレーカ元ヒューズ点検
③どれか止める
異常消火 ①失火(光量)センサの故障、それに関わる配線断線など
②バーナ汚れによる燃焼不能
③バーナ内反射板汚れによる光検知不能
④外気温センサ(サーミスタ)の故障、それに関わる配線断線など
⑤制御盤の故障
①交換、点検、結線など
②掃除
③掃除(なるべく傷付けないこと)
④交換、点検、結線
⑤交換、修理
風圧センサ ①掃除口、点検口が開いてる
②風圧スイッチ接触不良、それに関わる配線断線など
③送風機が回ってない(Vベルト切れ、モータ故障など)
①全て閉める
②交換、点検、結線など
③Vベルト交換、モータ入力線点検、ヒューズ点検、モータ交換など
バーナ ①ヒータ・コードの不良
②燃料ポンプ故障、それに関わる配線断線、漏電など
③燃料コック閉じたまま、フィルタ詰まりなど
④バーナ、エア・クリーナ汚れ
⑤バーナ・モータ故障、それに関わる配線断線、漏電など
①交換
②交換、点検、結線、ヒューズ点検など
③開く、掃除、エア抜き
④掃除
⑤交換、点検、結線、ヒューズ点検など
配穀モータ(均分器が電動になったもの、一部の大型乾燥機) ①配穀モータ故障、リミット・スイッチ不良、それに関わる配線断線、漏電など ①交換、点検、結線、ヒューズ点検など
循環(繰出し)モータ ①ロータリ・バルブ異物噛み込み(詰まり)、チェーン、スプロケット噛み込みなど
②循環モータ故障、それに関わる配線断線、漏電など
①詰まり除去、点検、交換
②交換、点検、結線、ヒューズ交換など
熱風温 ①熱風温センサ(サーミスタ)の故障、それに関わる配線断線など
②燃料の間違い
③制御盤の故障
①交換、点検、結線
②交換
③交換、修理
穀物温 ①穀物温センサ(サーミスタ)の故障、それに関わる配線断線など
②制御盤の故障
①交換、点検、結線
②交換、修理
異常停止水分 ①水分検出器の故障(モータ、検出部)、それに関わる配線断線、漏電など
②水分検出器のゴミ詰まり(去年の籾など)
③籾のない運転
①交換、点検、結線、ヒューズ点検
②掃除
③正常、テスト運転で


その他
表示パネルに電源が入った状態で、「張込」「通風循環」などのボタンを押して作動しない場合は、操作パネルを開けて手動と自動の切替スイッチを手動にする。

モータが回れば電気は正常にきてると判断し、上記を基準に点検しコネクタ、配線など鼠による被害がないか確認する。

自動、手動共に動かない場合は、電磁接触器を点検する。

サーマル・リレーが働いていない正常の状態で、電磁接触器の通電確認用の押しボタンを押す。

モータが回れば電気はきてると判断できるので、電磁接触器のコイル線の抵抗値とコイル入力電圧の測定をする。


電源が入らない場合は倉庫内のブレーカ、ヒューズ、キャブタイヤ、差込プラグをサーキット・テスタを使い点検する。



作成日:2006/7