今回は、クボタ・コンバインSR195Gの遊動輪オーバ・ホールについて記載します。
また、第18回に続いて酸素アセチレン溶接を使った修理になりますが、足回りの修理で膠着の酷いものは、酸素アセチレン溶接がないと修理不可能だと思います。
遊動輪を固定する台を作って、その上で車軸などを叩いて抜く方法もありますが、膠着具合によっては、やはり不確実で時間がかかり過ぎます。
ここでは遊動輪単体の修理説明なので、クローラを取り外して遊動輪を引き抜くまでの説明は省略しています。
必要工具と道具: 12㎜ボックス・レンチまたはメガネ・レンチ、ラジオ・ペンチ、中ハンマ、小ハンマ、マイナス・ドライバ、鏨、角材、丸パイプ(外径22㎜、厚さ1~2㎜)、丸パイプ(外径38~40㎜、厚さ2~3㎜)、エンジン・オイル(0.1ℓ)、万能グリース、パーツ・クリーナ、紙ヤスリ(#400くらい)、酸素アセチレン溶接セット
※丸パイプは鉄、アルミ、塩ビなど、固いもので、上記の口径くらいの物なら何でも構いません。
右側の遊動輪(アイドラ)です。
写真では確認できませんが、がたついています。
見るからに泥水シールが傷んでいます。
悪条件で使い続けた場合、新車から200時間程の使用で、完全にベアリングが駄目になっていることもあります。
プラグを外します。
ハンマで叩いてマイナス・ドライバの先端を隙間に差し込み、起こすことで簡単に外せます。
案の上、泥水が混入していました。
グリスは完全に切れています。
固定ボルト(頭部12㎜)を外します。
この遊動輪にはスナップ・リングが使われていません。
酸素アセチレン溶接で、ベアリングの玉を保持している部分(リテーナ)を全て切断します。
中火くらいでさっと切断します。
玉まで溶かさないようにします。
玉をどちらかに寄せます。
鏨を当ててハンマで叩けば移動します。
酸素アセチレン溶接を使い、内輪と外輪の隙間の一部を削り落とし、玉を落とせる大きさの穴を作ります。
裏返して切り屑を落とします。
穴から全ての玉を抜きます。
玉はラジオ・ペンチで摘まみ出すか、遊動輪を反対向けて落とすなどします。
酸素アセチレン溶接で、内輪と外輪を切断して取り外します。
対角線上に切断すると簡単に取り外せます。
車軸や外輪接合面を削らないように慎重に行います。
奥のベアリング(泥水シール側)の玉を落として、遊動輪を取り外します。
奥のベアリングは深いのでやり難いです。
内輪と泥水シールのスリーブを取り外します。
スリーブは既に溶接熱でゴムが燃えていて、簡単に取り外せます。
遊動輪の泥水シールを取り外します。
こちらも既に溶接熱でゴムが燃えていて、マイナス・ドライバで起こして簡単に取り外せます。
車軸はカップ・ブラシ・グラインダ、又は紙ヤスリなどできれいに磨いておきます。
ベアリング、泥水シールが取り付く接合面など内面を、紙ヤスリできれいに磨いておきます。
この作業を怠ると、組み付け時にベアリングや泥水シールの入りが悪くなります。
泥水シール側のベアリング6004LLUを取り付けます。
ここからは段ボールを敷きます。
パーツ・リストでは特殊ベアリング(LLH)になっていますが、同じSR型(SRM23など)では純正部品でLLUを採用しているので、LLUで問題ないと思います。
ちなみにその純正部品のLLUは緑のシールド板ですが、性能は赤のシールド板のものと同じです。
ハンマを使って金属音が変わるところまで打ち込みます。
対角線上に打ち込み、縁(外周)全体で金属音が変わることを確認します。
エンジン・オイルをベアリング外周全体に垂らしておくと入り易くなります。
また打ち込みは、ベアリング外径に合うパイプをあてがえば申し分ないですが、小ハンマをあてがって叩いても問題ないと思います。
泥水シールはシールと、スリーブに分かれます。
所謂、軸付きオイル・シールです。
泥水シールを取り付けます。
ベアリングと同じように、シール外周(はめあい部)にもエンジン・オイルを垂らします。
刃先の潰れたマイナス・ドライバを外周(金属環)に打ち込んで取り付けようと思いましたが、打ち込み時にダスト・リップ部が傷みそうなので止めました。
ということで、スリーブを入れて取り付けます。
丸パイプ(外径38~40㎜、厚さ2~3㎜)をあてがい、ハンマで金属音が変わるまで打ち込みます。
ベアリングの時の音と違い、ゴムがある分だけ少し鈍い音です。
遊動輪の向きを変えます。
プラグ側のベアリングは、シールド形ではなく開放形の指定なので、開放形を取り付けます。
開放形を切らしていて、代わりにLLBがあったのでこれを使います。
6004LLBのシールド板を両面とも取り外し、開放形として使います。
カッタの刃などを隙間に差し込み、起こせば簡単に取り外せます。
ベアリングを取り付ける前にグリスを詰め込んでおきます。
万能タイプのリチウム・グリースで十分だと思います。
プラグ側のベアリング6004を取り付けます。
ここでもエンジン・オイルをベアリング外周に垂らしておきます。
遊動輪を車軸に入れます。
車軸にエンジン・オイルを垂らしておきます。
入り易くなります。
角材をあてがった上から、ハンマで叩いて入れます。
角材は写真のものより大きいほうがいいと思います。
プラグ側のベアリングが浮き上がってきたら、丸パイプ(外径22㎜、厚さ1~2㎜)をベアリングにあてがって、その上からハンマで叩きます。
真上から真っ直ぐ叩きます。
金属音が変わるところまで打ち込みます。
外径用の丸パイプ(外径38~40㎜、厚さ2~3㎜)に変えて叩くのもいいかと思います。
車軸とベアリングの出面が同じである事を確認します。
遊動輪を手で回しながらグリースを塗り込みます。
液体ガスケットを塗付してプラグを再利用するので、プラグ接合面にはグリースを付着させないようにします。
付着したらウエスで拭き取っておきます。
ハンマでプラグを叩いて嵌め込みます。
再利用なので、液体ガスケットを塗付して取り付けます。
対角線上に交互にずらしながらツバ全体を叩き、ツバ全体の叩き音(金属音)が変わるところまで打ち込みます。
グリースを詰め込み過ぎるとエアが抜けず、浮き上がってくることがあります。