今回は、クボタ・トラクタKL44ZCの点検整備について記載します。
自分で出来ることを中心にまとめました。
必要工具と道具: 14、17、19㎜メガネ・レンチ、モンキ・レンチ(~30㎜)、エレメント脱着工具、オイル・ジョッキ、ウエス、グリース・ガン、廃油箱(1~2)、コンプレッサ、エア・ガン、万能グリース
作業は必ず平坦な場所で行います。
◎エンジン・オイルとエンジン・オイル・フィルタの交換…交換時期:オイル100時間毎、フィルタ200時間毎、点検→始動前
クランク・ケース(エンジン・オイル)のドレン・ボルトは、エンジン真下のオイル・パンに2箇所あります。
左右の両方のドレン・ボルト(頭部19㎜)を外しますが、パッキンを無くさないようにします。
エンジン・オイル・フィルタは、エンジンの右側にあります。
エレメント脱着工具を使って外します。
正ネジなので、左に回せば外れます。
取付面をウエスできれいにします。
または、潤滑剤などを吹き付けて汚れを落とします。
オイル・フィルタの取り付けは、オイル・フィルタのシール部にエンジン・オイルを薄く塗付し、ゴミが付着しないように気を付けて行います。
オイル・フィルタは手で締めますが、シール部が接触してから、3/4回転くらい回せば十分です。
エンジン・オイル給油口は、エンジンの右側にあります。
また、検油棒は給油口の左下あたりにあります。
エンジン・オイルは、検油棒(オイル・ゲージ)の上限線(穴)の所まで入れます。
エンジン・オイルを入れたあと、一端オイル栓をし検油棒を挿します。
そして、エンジンを始動し数分回して止めます。
その後、10分くらい経過してからもう一度検油棒を確認します。
足りない場合は上限線のところまで追加します。
基本は上限線と下限線の間に油面があれば良いのですが、きっちり上限線まで入れておきます。
極端に入れ過ぎると出力低下の原因になります。
◎ラジエータのクーリング・システムの清掃…2年毎
コア部(フィン回り)もエア吹き掃除します。
エア・ガン先端をフィンに当てないように気を付けて行います。
ファン側からも行います。
ついでに、エアコンのコンデンサもエア吹き掃除しておきます。
防虫網も同様です。
◎エア・クリーナ・エレメントの清掃…100時間毎
ダスト・カップを外します。
手で止め金具を3ヵ所外すだけです。
エア・クリーナ・エレメントをエア吹き掃除します。
凄まじい埃が出ます。
内側からも清掃します。
全体から埃が出なくなるまで行います。
エア・クリーナ・エレメントを取り付ける前に、エア・クリーナ・ケース内もエア吹き掃除しておきます。
ダスト・カップのバキュエータ・バルブ回りもきれいに清掃しておきます。
ダスト・カップは、「TOP」マークを上向きにして取り付けます。
◎冷却水の点検…始動前
リザーブ・タンクの冷却水量の確認です。
左側にあるのは、ウインド・ウォッシャ液です。
ウォッシャ液は、少なければ適当に足しておきます。
「FULL」 から「LOW」の範囲であれば問題はありません。
折角なので「FULL」位置まで補給しておきます。
キャップは、「カチッ」と手応えを感じるまで確実にします。
また、リザーブ・タンクが「LOW」以下だった場合は、ラジエータ・キャップを外して冷却水の確認をします。
ラジエータ・キャップは、エンジン停止後30分経過してから外します。
冷却水が口元まで入っているか確認します。
少なければ水道水で良いので補給します。
ついでにラジエータ・キャップのパッキンが伸びていないか確認します。
余程じゃない限り大丈夫です。
折角なので、ラジエータ・キャップ接合面をウエスできれいに拭いて、ラジエータ・キャップのパッキン回りをエア吹き掃除しておきます。
冷却水は2年毎の交換になっていますが、個人的には4~5年おきでも構わないと思います。
もちろん2年おきに交換するのがベストですが…。
ラジエータ・キャップは前項写真のように確実に締めます。
締め損なっているとオーバ・ヒートの原因になります。
◎ファン・ベルトの調整…100時間毎
ファン・ベルトの確認です。
左写真は見るからに張り不足ですね。
オルタネータを固定しているボルト、ナットを緩めます。
話は反れますが、奥に見えるボルトはエアコン・ベルトの調整ボルトです。
エアコン・ベルトを張る場合は、テンション・プーリ軸のナットを緩めてから調整ボルトで張ります。
エアコン・ベルトの中央部を指先で少し強めに押さえて、10㎜程度たわむのが
理想です。
適正に張れたら、テンション・プーリ軸のナットを締めておきます。
(調整…200時間毎)
話はファン・ベルトに戻ります。
手でオルタネータを動かし、ファン・ベルトを適正に張ります。
ファン・ベルトの中央部を指先で軽く押さえて、10㎜程度たわむのが理想です。
エアコン・ベルトとの感覚の違いは微妙ですが、極端に張り過ぎない限り大丈夫です。
適正に張れたら、オルタネータの固定ボルトを締めます。
◎トランスミッション・オイル・フィルタと油圧オイル・フィルタの交換…交換時期:200時間毎
トランスミッション・オイル・フィルタの交換です。
ミッション・オイルは400時間毎(フィルタは200時間毎)に交換しますが、この作業は廃油の処理(量が多いため)などの問題もあるので農機具屋さんに依頼しましょう。
今回はあくまでも自分で行う点検整備を主においていますので、この作業は物理的に難しいと判断しています。
左写真は、トランスミッション・オイル・フィルタの交換後です。
このオイル・フィルタの締め付けは、シール部に薄くエンジン・オイルを塗付した後、シール部が接合面に接触してから、3/5回転きっちり締め付けます。
また、ミッション・ケース右側の油圧オイル・フィルタは手で締め付けますが、これはシール部が接触してから、2/3回転くらい回せば十分です。
ミッション・オイルが出てきますが、交換作業は出来ます。
◎スーパ・ジョイント(ユニバーサル・ジョイント)のグリース・アップ…50時間毎
キャスタ・スタンド仕様のクボタ・ロータリが取り付いているので、キャスタ・スタンドを取り付けてからロータリを外します。
手順は「第31回:ロータリの着脱について」とほぼ同じなので省略します。
違うところは、キャスタ・スタンド仕様なので後2輪ハンドルを回す必要がない事です。
このオート・ヒッチ・フレームはW3P仕様ですが、クボタ・ロータリ(特殊3P作業機)の取り付けは、ロータリのトップ・マスト上部ピンを必ず下部フックで持ち上げて取り付けます。
間違えて上部フックで持ち上げると、ロータリのフロント・カバーがへこむので注意します。
ここから本題に入ります。
オート・ヒッチ・フレームは、適当に下がった状態(油圧レバーを下げ)にしておきます。
ジョイント・ホルダの正しい位置(下部にセット)を覚えておきます。
黄色の安全カバーを止めている鎖を外し、トラクタPTO軸側のユニバーサル・ジョイントを外します。
次にオート・ヒッチ・フレーム側のジョイント・ホルダを外します。
少し持ち上げ、開口部へ下げるように動かせば外れます。
取り外し順は、逆からでも構いません。
ユニバーサル・ジョイントを引き抜いて2つにします。
グリース・アップは何気に汚れる作業なので、汚れても構わない格好で行います。
前項で説明していませんが、ユニバーサル・ジョイントは、先端のロック・ピンを押しながら引き抜く事で外れます。
長年外した事がないと、当然ながら膠着気味になっています。
グリース・ガンを使って、グリース・ニップルに「ブチ、ブチッ」と音が出るまで注入します。
広角ジョイントなので、内側にもグリース・ニップルがあります。
安全カバーにグリース注入用の穴が開いています。
前項写真と合わせて、PTO軸取付け側のグリース・ニップルは3箇所あります。
ジョイント・ホルダ側(1箇所)も同様にグリース・アップしておきます。
ユニバーサル・ジョイント摺動部にもグリースを塗付しておきます。
オスとメスの組み付けは、スプラインが1箇所潰してあるところを合わせて行います。
メス側も同様に塗付しておきます。
ここで使用しているグリースは、全て2硫化モリブデン入りグリースですが、普通の万能グリースでも構いません。
ジョイント・ホルダには、ブッシュが左右に付いています。
無くさないように気を付けます。
どちらから取り付けても構いませんが、私はいつもジョイント・ホルダから取り付けます。
1人で行う場合は、この方がやり易いと思います。
PTO軸に取り付けた方は、ロック・ピンが確実に出てロックされている事を確認します。
◎3点リンク回りのグリース・アップ…50時間毎
ロータリを取り付ける前に、ロア・リンク回りのグリース・アップをしておきます。
引掛け部などにも注し油をしておきます。
要は金属同士が擦れ合う箇所全てに、油かグリースを塗付するのです。
◎ロータリ(RM190Z)のオイルの交換…交換時期:250時間毎
まだ、ロータリは外したままです。
ギヤ・ケースのドレン・ボルトは、PIC軸ケース固定ボルトと兼用になっています。
PIC軸ケース下部にある2本の固定ボルト(頭部14㎜正ネジ)の何れかを外せば排油できます。
ギヤ・オイルの給油量は2.5ℓです
ギヤ・オイルはミッション・オイルで構いません。
ロータリを取り付けた後の確認になりますが、ロータリを地面に付くまで下げた状態で、給油プラグの刻み線まであればOKです。
ギヤ・ケースのオイル交換が終わったら、ロータリを取り付けます。
キャスタ・スタンドは、もう必要ないので外します。
前項(ユニバーサル・ジョイントのグリース・アップ)の説明の補足にもなりますが、オート・ヒッチ・フレームに説明ラベルが貼ってあります。
ロータリを地面に付くまで下げます。
そして、モンキ・レンチを使いトップ・リンクのロック・ナットを緩めます。
目一杯トップ・リンクを伸ばします。
チェーン・ケースのオイルを抜くために、ロータリを後ろ下がりにする必要がありますが、こうすることで後ろ下がりになります。
プロテクタ(保護カバー)は外す必要がありませんけど、摩耗具合を見たかったので外してあります。
ドレン・ボルト(頭部17㎜)を外して排油します。
チェーン・ケース上部のゴム蓋を外して、そこから給油します。
ギヤ・オイルの給油量は1.8ℓです。
ドレン・ボルトの少し上にあるボルトは検油ボルトです。
トップ・リンクを元に戻してからの確認になりますが、検油ボルトを外し検油口までギヤ・オイルがあればOKです。
トップ・リンクを必ず元に戻します。
説明ラベルによると、寸法は両端軸(ピン)の心々で615㎜です。
±3㎜くらいの精度で合わせます。
トップ・リンクの長さが適正、または許容範囲でないと、ユニバーサル・ジョイントなどの負担が増します。
◎その他のグリース・アップ…50時間毎
前部デフ・ケース支持部のグリース・アップです。
左写真は前側です。
前部デフ・ケース支持部のグリース・アップです。
左写真は後側です。
ステアリング・ジョイントの支持部などにも塗付します。
適当にねたぐっておきます。
スプレ・タイプのグリースでもOKです。
他にも、グリースや油を塗付するべき箇所はいくつかあります。
→各操作レバーやペダルの支点など、金属同士が擦れ合う箇所全て
◎これまでに説明がないけど、自分で出来るであろう事
◎出来るなら行ったほうが良い事
これまで述べた作業内容を全て行えば、整備工場で実際に行う点検整備の多くは済んでいると思います。