今回は、クボタ・コンバインAR60の切断(カッタ)刃の交換について記載します。
切断刃の刃先が摩耗して丸くなってくると、切れ味が悪くなって詰まりの原因になります。
したがって、刃先が丸くなり山が無くなってきたら交換する必要があります。
切断刃は、一般に株元側から中央やや穂先側あたりまでが特に摩耗します。
ちなみに、供給軸に取り付いている供給刃は、切断刃に比べると殆ど摩耗しないので滅多に交換する事はありません。
必要工具と道具: 12㎜、14㎜、24㎜ボックス・レンチ、ボックス延長ソケット(エクステンション・バー )、21㎜メガネ・レンチ、モンキ・レンチ、27㎜スパナ、ラジオ・ペンチ、ギヤ・プーラ(G3)、スクレーパ、潤滑剤、パーツ・クリーナ、緩み止め剤(取り外し可能タイプ)、角材、馬ジャッキ(1人で行う場合)
何か硬い物が入り込んで、ロータと切断刃が数枚欠けてしまいました。
後で分かったのですが、刈取部の搬送チェーンのガイド・レールが折れてカッタ・ケースまで運ばれてきたようです。
切断刃が摩耗した訳ではないので、今回は破損したロータと切断刃のみ交換します。
カッタ・ケースの左右のサイド・カバーを外します。
右のサイド・カバーは、樹脂ボルトで固定されています。
カッタ駆動ベルト(特B55)を外します。
テンション・アームを下げて、カッタ駆動ベルトを弛んだ状態にしてプーリから脱線させます。
ロック・レバーを上げると、フックが下がりロックが解除されます。
カッタ・ケースを開きます。
先に供給軸を外すので、その手順を説明していきます。
固定ボルト(頭部12㎜)4本を外して、カッタ・ガイド・カバーを外します。
供給軸と切断軸の両方を外すので、軸受け回りの部品は全て外します。
株元側の部品から先に外します。
固定ボルト(頭部14㎜)を外して、プーリをボスごと外します。
固定ボルトを緩める時に切断軸がつられて回る場合は、切断軸内側をモンキ・レンチで固定するか、手でプーリを掴んで回らないようにします。
固定ボルト(頭部10㎜)を外して、テンション・アームを外します。
テンション・アームは、ギヤ・プーラを使って外します。
ギヤ・プーラをかける時、ネジ穴を傷めないように軸径より小さい適当なナット等を挟みます。
カラー、チェーン、スプロケットを外します。
スプロケットはチェーンと一緒に手で引き抜けば良いのですが、抜けない場合はギヤ・プーラを使って外します。
供給軸の38ギヤを外します。
38ギヤ取付軸(供給軸の端)にはネジが切ってあるので、頭部12㎜のボルト3本を外したら、38ギヤを左に回して外します。
黒い色の樹脂のものが供給軸を支持している切換(供給)軸受けです。
この切換軸受けを支持している部材を順次外していきます。
軸受けプレートは、頭部12㎜のボルト4本で固定されています。
このボルトを外しますが、その前に割りピンを外して、切換金具と切換クラッチ・プレートの連結を外しておきます。
固定ボルトを外し、切換クラッチ・プレートと一緒に軸受けプレートを外します。
切換クラッチ・プレートとは、供給軸の位置を変える金具の事です。
つまり、大小2種類の切断刃を規則的に配置した切断軸との間隔を変えて、切断するワラの長さを変更出来るようになっています。
固定ボルト(頭部12㎜)3本を外してテンション・アーム取付軸(切換軸受け支持金具)を外したら、切換軸受けを引き抜きます。
これで、株元側で供給軸を支持しているものは何もありません。
左写真を見て分かると思いますが、軸受けプレートのボルト穴が繋がって横にもう1つあります。
これは切断刃が摩耗してきた時に、軸受けプレートを切断軸側に寄せれるようになっています。
通常、調整する事は殆どありません。
穂先側の切換軸受けを外すには、株元側と同じように軸受けプレートを外さなければいけません。
軸受けプレートは、頭部12㎜のボルト4本で固定されています。
このボルトを外しますが、その前に割りピンを外して、切換金具と切換クラッチ・プレートの連結を外しておきます。
切換軸受け支持ボルト(頭部12㎜)を外して、切換軸受けを引き抜きます。
これで、供給軸を外せる状態になります。
供給軸を外します。
手が刃に触れて怪我をするといけないので、厚手の手袋(軍手など)をはめて作業します。
固定ボルト(頭部12㎜)2本を外して、株元側の切断軸受け下の防塵プレートを外します。
切断軸受けを固定している頭部12㎜のボルト3本を外して、左写真のように一旦切断軸を中段の少し窪んでいるところに置きます。
穂先側の切断軸受けを固定している頭部12㎜のボルト3本も外します。
カッタ・ケースを閉じたのは、このボルトを外すためです。
カッタ・ケースを開いた状態より閉じた状態のほうが、ボルトを外し易いと思います。
左写真のように、切断軸を中段の少し窪んでいるところに置きます。
これで切断軸を外せる状態になるので、ゆっくり慎重に置きます。
そして、ゆっくりカッタ・ケースを開きます。
この時、切断軸が落下する可能性もあるので、ボルトを1本だけ仮止めしておいても良いかと思います。
穂先側の軸受けを下にずらして、切断軸を外します。
改めて手を切らないように注意します。
この流れで、切断軸の破損した切断刃を交換します。
穂先側からの取り外しになります。
切断軸受けを引き抜きます。
手で簡単に外せます。
当たり前ですが、ワラ屑が絡まっているので除去します。
頭部24㎜の左ナットで切断刃は固定されているので、これを外します。
潤滑剤を吹き付けます。
左ネジのナットなので、右に回すと緩みます。
インパクト・レンチを使えば切断軸は共回りし難いだけでなく、大抵は簡単にナットを外せるので便利です。
メガネ・レンチなどを使う場合は、切断軸が持ち上がりそうになる事があります。
その場合は、左写真のように21㎜のメガネ・レンチを株元側の6角部にかける、又は根元部(30㎜)にモンキ・レンチをかけて安定させます。
取り付いている順番に外していきます。
左ナット、皿バネ座金2枚、平座金、掻き出しホイール、押え座金の順です。
皿バネ座金の向きと平座金の順番を間違えないように、組み付ける時に分かるようにしておきます。
2枚の皿バネ座金は、互いの凹面(外周面)を向かい合わせて取り付いています。
交換する必要がある切断(カッタ)刃に印を付けておきます。
切断軸を地面に置いたままで、切断刃の交換は行いません。
やり難い、刃先が傷む、軸振れするなどデメリットしかありません。
したがって、切断軸を垂直に立てて切断刃の交換を行います。
切断軸を立てるために、馬ジャッキの土台の部分を利用します。
左写真のように、馬ジャッキの土台に切断軸が入る適当な鉄パイプを入れて、ボルトや針金を使って動かないように固定します。
馬ジャッキの鉄パイプに切断軸を入れて、倒れないようにバランスを見ながら立てます。
上から切断刃とパイプを外していきます。
組み付ける時に向きと順番を間違わないように、外した順番に並べておきます。
切断軸に切断刃とパイプを順に入れていきます。
印を付けた切断刃だけ新品の切断刃に入れ替えます。
掻き出しホイールも取り付けたら、ネジ山に緩み止め剤を塗付し、手で左ナットを適当に締めます。
いきなり左ナットを締め込むのではなく、切断軸を馬ジャッキから引き抜いて、左写真のように角材の上で「トントン」と数回軽く落として、切断刃とパイプを落ち着かせます。
切断刃とパイプを落ち着かせたら、垂直に立てた状態で工具を使って左ナットをある程度締めます。
カッタ・ケースに切断軸を取り付けます。
切断軸を株元側、穂先側(左写真)の順に入れます。
落下防止のため、穂先側の切断軸受けのどこでもいいから固定ボルト1本を仮付けします。
そして、カッタ・ケースを閉じてから、切断軸受けの固定ボルトを全て取り付け本締めします。
ここで、切断軸の左ナットを本締めします。
株元側の6角部に21㎜のメガネ・レンチをかけるか、根元部(30㎜)にモンキ・レンチをかけるかして、つられ回りをしないようにして締めます。
締め付けトルクは、普通車のタイヤの固定ボルトを締め付ける時のトルクと同じくらいです。
締め過ぎると、パイプが切断刃を押し込み過ぎて切断刃が凹状になるので、軸振れの原因になります。
供給軸の固定ナットを外します。
切断軸の左ナットとは違い、頭部21㎜の正ネジのナットです。
インパクト・レンチを使えば供給軸は共回りし難いだけでなく、大抵は簡単にナットを外せるので便利です。
メガネ・レンチなどを使う場合は、供給軸が持ち上がりそうになります。
その場合は、左写真のように21㎜のメガネ・レンチを株元側の6角部にかけて安定させるか、掻き出しホイールの根元の6角部に27㎜のスパナをかけて安定させます。
取り付いている順番に外していきます。
ナット、皿バネ座金、掻き出しホイール、押え座金の順です。
供給軸には供給(掻き込み)刃、スクレーパ、ロータ、カラー(パイプ)が取り付いています。
交換する必要があるものには、分り易いように印を付けておきます。
馬ジャッキに供給軸を入れておいて、上から外していきます。
組み付ける時に向きと順番を間違わないように、外した順番に並べておきます。
通常、供給刃やロータは、株元側から中央にかけて汚れが多く付着しています。
折角なので、スクレーパを使って汚れを削り落としておきます。
供給軸にロータ、スクレーパ、供給刃を順に入れていきます。
印を付けたロータだけ新品のロータと入れ替えます。
掻き出しホイールも取り付けたら、ネジ山に緩み止め剤を塗付し、手でナットを適当に締めます。
切断軸の時と同じように、供給軸を角材の上で「トントン」と数回軽く落として供給刃等を落ち着かせてから、垂直に立てた状態で工具を使ってナットをある程度本締めます。
供給軸を地面に置いて、供給軸の固定ナットを本締めします。
掻き出しホイールの根元の6角部に27㎜スパナをかける事で、つられ回りを防げます。
カッタ・ケースに供給軸を取り付け、株元側と穂先側の切換軸受けを固定したら、38ギヤを取り付けます。
この38ギヤの締め込み具合で、供給刃とロータに切断刃が触れないように調整します。
左写真のように、供給刃とロータの中間くらいに切断刃があればOKです。
正確には、大きいほうの切断刃と供給刃の隙間が4.5~8㎜以内になるように調整します。
この隙間は、38ギヤを左に回せば大きくなり、右に回せば小さくなります。
38ギヤを左に回した場合は38ギヤとボスに隙間が出来るので、38ギヤを軸方向に押し込んでから隙間を確認します。
調整が出来たら、3本の固定ボルト(頭部12㎜)を取り付けてボスと38ギヤを固定します。
組付け後の刃(軸)振れを無くすために両方の軸を垂直に立てて組み付けましたが、実際には完全に刃(軸)振れを無くすのは難しいです。
供給軸と切断軸を真後ろから垂直方向に見て、供給刃やカッタ刃が前後に振れる分には問題ありませんが、大きく左右に振れる場合は軸の曲がり、カラーや押さえ座金など部品の変形、又は組み付け不良の可能性があります。
今回はロータを3枚、そして切断刃(セラミック)を大小それぞれ2枚の交換で済みました。