一見、大変そうな作業に見えるかもしれませんが、手順道理に行えば割りと簡単だと思います。
一番大事なのは、慌てず安全に行うことです。
また、2~3条のコンバインなら一人でも容易に行えますが、中~大型コンバインでは2人で行うのが賢明だと思います。
熟練者なら6条のコンバインでも一人で何とか脱着できますが、これはクローラが重くてかなりの重労働です。
取り外し手順
エンジンを始動して刈取部を最上げ位置にし、自動水平機能があるものは機体最低位置(通常位置)にしてエンジンを切ります。
自動水平機能があるコンバインのゴム・クローラの脱着について
ジャッキ・アップしても直ぐに走行フレームが下がってくるコンバインは、エンジンを始動した状態で走行フレームの高さを維持できるものはエンジンを始動したまま行い、エンジンを始動した状態でも走行フレームが下がってくるものは、誰かに機体水平レバーを「下げ」位置にしてもらい、その間に行います。
当たり前ですが、確実にジャッキ・アップして、ゴム・クローラが回らないようにブレーキを入れたり副変速等をニュートラルにするなどして、安全に十分気をつけて行います。
自動水平機能が前後左右ともしっかり制御されてる(走行フレームが下がってこない)コンバインにおいて、水平機能を利用してジャッキ・アップすることが可能です。
とても便利な方法ですが、油圧ジャッキ、馬ジャッキの入れ損ないによる機械の損傷、事故の恐れがあり、十分に気を付ける必要があります。
その方法を簡単に説明します。
刈取部を最上位置、機体を最上位置にして、ジャッキを所定の位置3ヵ所に正確に入れます。
その後、手動スイッチで機体を最下位置(通常位置)にしたら、走行フレーム(クローラ)は持ち上がりジャッキ・アップ完了です。
安全のためジャッキが確実に機体フレームを受けているか、必ず確認しながら行います。
一般的なジャッキ・アップ・ポイント(3ヵ所)
ミッション・ケースの下部(底面)は、ジャッキ・アップ・ポイントの1つです。
大型コンバインでは中央フレームが、ジャッキ・アップ・ポイントになることもあります。
使用する油圧(フロア)ジャッキの耐荷重量は、小型コンバイン(2条)で2t、中型コンバイン(3、4条)で3~4t、大型コンバイン(5、6条)で5t以上のものが必要です。
右後ろの機体フレームである角パイプが、ジャッキ・アップ・ポイントです。
コンバインによって多少の違いはありますが、殆どの場合、縦か横の角パイプに馬ジャッキを入れればOKです。
左後ろの機体フレームである角パイプが、ジャッキ・アップ・ポイントです。
左写真のように燃料タンクが邪魔になる場合は、角材を入れて馬ジャッキが燃料タンクに触れないようにします。
3ヵ所全てのジャッキ・アップ・ポイントに言えることですが、ゴム・クローラの脱着に支障のない位置に入れます。
張り調整ボルトを固定しているナット緩め、張り調整ボルトを緩めます。
油や潤滑剤を遊動輪の支柱パイプ回りに注してから、張り調整ボルトを外れる寸前まで緩めます。
使用される張り調整ボルトの頭部大きさは、コンバインの大きさに比例して大きくなり、17㎜、19㎜、22㎜、24㎜、27㎜、30㎜などで、他には張り調整をナットで行うタイプ(主にヤンマー)がある。
また、張り調整ボルトの固定(緩み止め)方法として、ナットの代わりに固定プレートとRピンを使うもの(主にクボタ)もあります。
機体後部のフレーム(角パイプ)中央に油圧ジャッキを入れて、機体を持ち上げます。
出来るだけ持ち上げます。
リフト量が足りない場合は角材などを挟みます。
機体後側から遊動輪をクローラごと大ハンマで叩き、遊動輪が最後部の転輪に目一杯寄るまで押し込みます。
つまり、クローラを最大限に弛ませます。
左右両方取り外すなら、両方とも押し込みます。
機種によっては、ガイド・レールが邪魔になるので途中で取り外します。
前項写真でいうならボルト3本を取り外します。
中型~大型コンバインでは、遊動輪を大ハンマで叩いて押し込むことはありません。
張り調整ボルトを回すと遊動輪が移動する構造なので、この作業は必要ないのです。
機体フレーム(角パイプ)に馬ジャッキを入れます。
左右両方取り外すなら、両方とも入れます。
左写真は、小型コンバインで偶に見られるクローラを弛めないと馬ジャッキを入れることができないタイプです。
また、クローラを最も弛めた状態においてもクローラと馬ジャッキが接触しそうなため、斜めに馬ジャッキを入れています。
角材も、牽引フックがあるため斜めに入れています。
コンバインによっては、クローラの脱着スペースを確保するために、縦横の角パイプが折り合うところに馬ジャッキを入れることもあります。
通常、中型~大型のコンバインでは機体フレームが大きいので、馬ジャッキを入れるスペースは十分あります。
ミッション・ケースの真下に油圧ジャッキを入れて、機体を持ち上げます。
油圧ジャッキは、なるべく低床のものが必要になります。
小型コンバインの場合、低床じゃないと入らないことがあります。
ミッション・ケースと油圧ジャッキの間には、緩衝的な役割として軍手やボロ雑巾などを挟みます。
クローラを遊動輪から外します。
芯金と芯金の間にバール差し込み、起こしながら脱線させていきます。
1本目のバールで起こして隙間を作り、2本目のバールで脱線させます。
小さいクローラなら、バール1本で脱着できたりします。
手でクローラを掴み、引き出せるところまで手前に引き出します。
クローラを上転輪から外します。
クローラを手で持ち上げて、芯金部を脱線させます。
バールを使っても良いですが、コツは出来るだけクローラを引き出しておくことです。
クローラを駆動輪から外します。
隙間にバールを注し込み、起こしながら脱線させます。
転輪、遊動輪を手で回転させて、楽に回すことができるか確認します。
そして、ガタツキがないか確認します。
一般的に小型~中型コンバインでは、転輪は走行フレーム裏側からボルト1本で転輪軸を固定しています。
クローラを取り付けるときは、逆の順番からの作業になります。
駆動輪、上転輪の順に入れますが、遊動輪とクローラの芯金を隣合わせまで近づけておくと、比較的楽に上転輪を入れる事が出来きます。
6条コンバインなど大型クローラの脱着になると重くて作業が大変なので、塩ビパイプVP13を7~10本くらい少し間隔を空けて地面に並べて入れておく事で、クローラの横ずらしが比較的楽に出来ます。
上転輪を入れたら最後に遊動輪を入れますが、重いクローラを少しでも嵌め易くする工夫としてはクローラ下面の弛みを解消する事です。
それは、クローラと地面の間に角材を入れたり、駆動輪の真下のクローラの弛みを小さいジャッキで持ち上げるなど、いろいろと方法はあります。
重機の場合
重機などのキャタピラ(張り調整グリス式)は、コンバインとは脱着の順番が逆になります。
これは、キャタピラの重量があること、遊動輪に相当する車輪が大きいことなどから脱着時に融通が利き難いため、駆動輪を回転させて脱着させます。
走行レバーを操作する人とキャタピラを外す人がそれぞれ必要で、コンバインよりも危険な作業になります。