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コンバイン(自脱型)



自脱型コンバインとは、連続的に稲や麦を刈取りながら穂に付いている穀粒を取り出す(脱穀)と同時に、穂切れ粒などを選別再処理(脱穀)し、ワラを機体後方に落としていく方式の収穫機械である。

コンバインの各部構造、役割
水冷式ディーゼル・エンジンの故障診断とその対処


◎一般的なコンバインの各部名称

コンバイン左側コンバイン右側

1.前処理部  / 2.刈取部  / 3.搬送部 /  4.脱穀部  /  5.選別部  /  6.穀粒搬送部(1番、2番)  /  7.排ワラ処理部  /  8.穀粒排出部 /  9.穀粒貯留部 /  10.ディーゼル・エンジンラジエータ始動装置予熱装置充電装置バッテリ ) /  11.走行部


他…ミッション関係作業クラッチ・レバー自動制御装置


上記図は一般的なコンバインの例で、大まかに各部名称を列挙したものである。

穀稈の流れ

穀稈の流れ

◎コンバインの各部構造、役割



前処理部



引起こし装置前処理部は、デバイダと右図のような引起こし装置からなる。

デバイダは作物の分草と刈幅を決め、引起こし爪の付いたチェーンが回り、作物を引起こし整列させる。

そして、作物は整列と同時に刈取られ、穀稈は搬送部へ送られる。


しかし、作物が倒伏している場合は上手く引起こし整列出来ないので、刈取り搬送がスムーズに出来なくなる。

すると搬送部で穀稈が詰まるなど悪影響を及ぼす。

これを解決するために、倒伏してる作物を引起こし整列させるスイスイデバイダがある。

これは、引起こし装置(右図)の前面に縦向きに取り付けるもので、引起こし爪の付いたチェーンが回り、引起こしの補助をする。

基本的には、作物が倒伏していなければ必要ないものである。


刈取り時は、必ず左分草かんを最下部まで下げて使用する。

下げずに使用していると、フィード・チェーンの入り口付近で搬送されてくる穀稈(株元)が、隣列の穂先に引っ掛かり穀稈の流れを妨げ、詰まりの原因になる。

大型のコンバインは車高がある分だけ影響が少ない。

引起こしチェーンの調整と保守

引起こし(タイン付き)チェーンの張りは、一般的に中央部で10~15㎜程になるように、チェーン張り調整ナットを締めて調整する。

※各メーカの指定の調整方法がある。


使用時間過多になると、チェーンの繋ぎ目(コマ)一つ一つが擦り減り、擦り減った分だけ長くなるのでチェーンが伸びてくる。

また、駆動スプロケットやテンション・スプロケットのギヤの山が擦り減ってくる他、ベアリングが磨耗しガタつきを生じるようになる。

これらは、消耗具合によって交換する必要がある。


チェーンに限っては半コマが付いていれば、半コマを外すなどして短く出来る。

一般に繋ぎ目は、U字型のピンで、半コマは割ピンで留めてあり、U字型のピンを留めるときは回転方向にU字の丸い部分がくるように留める。

半コマを外しても適正に張れない場合は、新品チェーンに交換する。


他、引起こし爪(タイン)が変形、磨耗していたら交換する。

引起こし爪が磨耗してくると先端が下がってくる。

向かい合う引き起こし爪は、なるべく左右揃えた位置(イセキ、ヤンマーで例外あり)で取り付ける。

4条以上において、向かい合わない(背を向け合う)引き起こし爪は回転中に 干渉しないように取り付ける。


チェーン・レール(ケース、アイドラ側)が擦り減ってきたら交換、または溶接などで修復するが、そのままでも大抵の場合は問題ない。

刈取部



刈取刃 刈取部は、刈刃の往復運動で作物を刈取り、刈刃と受刃は鎌の刃のようにギザギザになっている。

馬力の大きいコンバインになると、刈刃と受刃が互いに逆方向へ往復運動するもの(ダブル・アクション刃)や、刈刃を左右に分割してそれぞれが往復運動するものなどがある。



刈刃の調整



使用時間が増えれば、金属摩擦により刈刃と受刃の間隙が増える。

そのため調整が必要になる。

右図は一般的な刈刃で、ナットを外せば、押さえ金具、シム、プレート、そして刈刃を外せる構造になっている。

このようなシムがあるものは、シムを抜くなどして間隙を0.1~0.5㎜に調整する。

しかし、実際にはハンマなどで刈刃の最側端を軽く叩いて、刈刃がスライドして動く程度(油をたっぷり注す)の調整で十分である。


刈刃と受刃は無理な使い方などによって、反ったり(特に刈刃)欠けたりすることがある。

また、刈刃は押さえ金具との当り面が摩擦で擦り減る。

刈刃と受刃は、ともにリベットを叩き込んで固定してあるだけなので、悪い刃だけ交換可能だが、状態によってはASSYで新品に交換する。

搬送部



搬送部とは、刈取った作物を、掻き込みベルトや搬送チェーンなどを使って脱穀部へ送るものである。

前項の引起こし爪で整列された作物は、同時に刈り取られ搬送部へと送られる。

穀稈の搬送は、株元の搬送と穂先の搬送がある。

株元の搬送は掻き込み(突起付き)ベルトと株元搬送チェーンが行い、穂先の搬送は穂先搬送チェーンが行っている。


搬送チェーンは、脱穀部に作物の長さに応じて正しい姿勢で穀稈を送るため、扱ぎ深さ自動制御装置を設けている。

これは、一般に深さチェーンと言われ搬送チェーンの1つではあるが、チェーン・フレームがモータの力で上下するようになっている。

株元側と穂先側に取り付けたセンサによって、扱ぎ胴に供給される穀稈を自動制御で一定の深さに保つ装置である。

浅扱ぎすると扱ぎ残しが出易くなるし、深扱ぎすると負荷が大きくなってベルトなどの摩耗を早めるので、一定の扱ぎ深さに保つ事はとても重要である。


通常刈取作業では扱ぎ深さ自動装置を入れて使用するが、穂先が入りすぎないように、使用するコンバインに貼られているシールを目安にセンサの位置(一般に穂先搬送チェーンの上辺りにある)を合わせる。

しかし、作物が倒伏している場合は扱ぎ深さ自動装置を使わず(手動SWで)、追刈りで刈取変速をH(早い)にして作業するのが基本である。

また、遅れ穂が多く扱ぎ残しの出るときも、手動にして作業したほうが良い。

掻き込み(突起付き)ベルト

掻き込みベルト掻き込みベルトは、引起こし装置のすぐ後下部に配置し、株元の掻き込みを行い、スター・ホイール(パッカ)で集束させ次の搬送チェーンに引き継ぐ。



掻き込みベルトの調整



右図は一般的な掻き込みベルトで、張り調整はアイドラ固定ボルトを緩め、適量に張ってから締めて固定する。

掻き込みベルトは亀裂が入り、突起部が千切れるようなら交換する。

実際には、倒伏していなければ弛んでいても問題なく搬送してくれる。

搬送チェーン

株元搬送チェーン搬送チェーンは、各条から掻き込まれた穀稈を一列に集め、その集められた穀稈を株元チェーン(右図)と、穂先チェーン(タイン付きチェーン)で挟持しながら搬送し、供給チェーンを介して脱穀部のフィード・チェーンへ送るものである。

供給チェーン(株元)は、扱ぎ深さチェーンとフィード・チェーンとの穀稈の受渡し的な役割があり、主に中型以上のコンバインに取り付けられている。



搬送チェーンの調整と保守



搬送チェーンの張りは、一般的に中央部で20~25㎜程のたわみ量なら良しとする。

搬送チェーンは、通常テンション・ローラ(アイドラ)をバネを介して調整ロッドで引っ張っている。

調整ロッドはねじ山が切ってあり、ナットが付いていて、そのナットを回してチェーンを張る事が出来る。

※各メーカの指定の調整方法がある。


使用時間過多になると、チェーンの繋ぎ目(コマ)一つ一つが擦り減り、擦り減った分だけ長くなるのでチェーンが伸びてくる。

また、駆動スプロケットやテンション・スプロケットの山が擦り減ってくる他、ベアリングが磨耗しガタつきを生じるようになる。

これらは、消耗具合によって交換する必要がある。


搬送チェーンは半コマが付いていれば、半コマを外すなどして短く出来る。

チェーンは繋ぐときは、右上図のように進行方向側で割りピンを曲げるのが基本である。


搬送チェーンが穀稈を挟持して搬送するには、チェーン・ガイドが適正な位置にいる必要がある。

チェーン・ガイドが搬送チェーンの上下の山の間にいて、出来るだけチェーンの山の先端より内側に位置するように調整する。

脱穀部



扱ぎ胴 脱穀部は、数十個程の扱ぎ歯がついた扱ぎ胴(右図)が回転し、フィード・チェーンによって搬送される穀稈の穂が付いた部分を脱穀する。

脱穀された穀粒などは、受網を漏下して揺動棚(選別部)に落下する。

脱穀された穀稈(ワラ)は、そのままフィード・チェーンから排ワラ・チェーンへと送られる。

脱穀方式は、上扱ぎ式と下扱ぎ式(右下図)があり、損傷粒が少ないなどの理由から下扱ぎ式が多く使われていて、回転方向も上扱ぎ式とは逆である。

そして、メーカ、機種によっては処理能力を向上させるため、扱ぎ胴後部に小さい処理胴をもう一つ設けてるものもある。


扱ぎ胴の回転速度は基本的に稲麦ともに同じで良いが、穀粒水分が高い場合の麦刈り時は、皮が剥けるなどの品質低下の恐れがあるため、稲刈り時より1~2割程回転を下げて使用する。

また、種子収穫の場合は発芽率に影響するため、同じように1~2割程低い回転数で脱穀する。

ちなみに作業時の扱ぎ胴回転速度は約450~550rpmで、扱ぎ歯先端周速度は14~15m/sくらいである。

扱ぎ歯は、供給口側から整そ歯、補強歯、並歯が付いている。

整そ歯は、供給口から供給される穀稈のもつれや穂先の遅れを整えるものである。

これらの扱ぎ歯は消耗品なので、山の頭の部分が細くなってきたら交換する。

ワラ切刃

扱ぎ胴の動作ワラ切刃は、コの字型で2枚の刃を一対としたもので、右図のように、扱ぎ歯がこの2枚の刃の間を通過してワラ屑を細かく切り、扱ぎ室からワラ屑が容易に排出出来るようにしている。


ワラ切刃は、受網の最上部辺りに数枚取り付けてある。


受網に取り付けてあるもの(主に小型コンバイン)や、扱ぎ胴上部カバーと受網の間、つまり機体に取り付けてあるものがある。

また、コンバインによっては、扱ぎ胴の開閉ハンドル裏辺りの位置にもワラ切刃を取り付けてある。

受網に取り付けてあるものは受網を外し、機体に取り付けてあるものは、扱ぎ胴カバーなどを開けて交換する。

ワラ切刃は刃1枚に対し、ボルトとナット1組で固定されてる場合が殆どである。

右図のように、ワラ切刃はギザギザの刃が付いているが、このギザギザの部分が擦り減ってくる。

ワラ切刃は、摩耗してきたら新品に交換する。


過去の記載→第15回:コンバインのワラ切り刃の交換方法

扱ぎ胴上部カバーの内側(扱ぎ胴の上部)には、送塵板(抵抗板)が取り付けられている。

これは、任意に角度を変えることが可能で、扱ぎ室内のワラ屑や穀粒などの滞留時間を制御するものである。

一般に、扱ぎ胴カバーの上側から簡単に調節できるようになっている。

通常は「標準」位置で使用する。

また、以下の場合は調節する。

「閉」へ
排塵ロスが多い場合…籾が飛ぶ
選別が悪い場合…芒・枝梗粒が多い、穂切れ粒が多い、ササリ粒が多い
「開」へ
倒伏作物や濡れた作物を刈取る場合
扱ぎ胴からゴンゴンと大きな異音がする場合…負荷が大きい
脱ぷや損傷粒が多い 場合

受網

受け網受網は、脱穀された穀粒だけを網目から選別部(揺動棚)へ漏下させるもので、扱ぎ胴の下にあり円弧状の形をした網である。

網目が目開き9~12㎜のクリンプ網や樹脂製網が使われ、大型機械になると、ピアノ線のようなものを使ったものもある。

樹脂製網は、網部分(樹脂部)だけ交換可能である。


受網は毎年外して掃除するのが良い。

受網の外し方はメーカや機種によって違うが、扱ぎ胴を開ければ比較的簡単に外せるものが多い。

レールに乗せてあるだけのものや、挿入してロック・レバーで留めてあるだけのものなど様々である。

使用時間過多による、網の磨耗(破れなど)が著しい場合は新品に交換する。


受網が詰まるなどして網目が小さくなると、穀粒が漏下しにくくなり、扱ぎ室内で穀粒が滞留、循環して損傷粒が増える。

また、扱ぎ胴に負担がかかり、Vベルトがスリップしたり、酷くなると詰まってエンジン・ストップする場合がある。

濡れた(水分の多い)作物を刈ったり、ワラ切り刃が摩耗していると、受網が目詰まりし易くなる。

逆に、使用時間過多による受網の磨耗などで網目が破れ大きくなると、ワラ屑も漏下し選別が悪くなる。

選別部



穀粒の流れ


※上図は分り易く説明したものであり、実機はこの限りではない。

穀粒選別部は穀粒、未脱粒、ワラ屑などの選別を行うが、上図はその穀粒の流れである。

選別は、揺動棚が前後に激しく揺らす形状選別と比重選別、そして送風機による風力選別との両方で行なわれている。


揺動棚はグレン・パン、篩部(チャフ・シーブ、グレン・シーブなど)ストロ・ラックの部分に分けられる。

グレン・シーブから漏下したものは、圧風ファンで風選され、単粒はそのまま1番横スクリュの上に落下して、1番縦スクリュを経て籾タンクへ送られる。

グレン・シーブから漏下しなかった混入穀粒、ワラ屑、穂切れ粒、枝梗付着粒などは、チャフ・シーブ後部やストロ・ラックからの漏下物と一緒に、2番横スクリュの上に落下して、スロワまたはスクリュで扱ぎ室、選別部などに運ばれ再処理される。


ストロ・ラックは、ワラ屑中に混入してる穀粒を分離落下させるが、ワラ屑は送風機に吸引され機外に出される。


チャフ(選別板の隙間)は開くほど高能率になり、稲刈りの場合は麦刈りより開いた状態で使用する。

稲刈り作業において、通常は「稲、標準」位置で使用する。

現在多くのコンバインは、選別板の籾の量に応じて自動でチャフが開閉調節するようになっているが、選別をさらに良くしたい場合は以下の調節する。

「閉」へ
選別が悪い場合
小枝梗が多い場合
「開」へ
籾の飛散が多い場合
脱ぷが多い場合

圧風ファン(トウミ)においても、現在のコンバインでは自動で風圧を調節するものが多いが、通常は「標準」位置で使用する。

しかし、以下の場合は調節する。

「強」へ
選別が悪い場合
「弱」へ
籾の飛散が多い場合



穀粒搬送部



1番搬送 穀粒搬送部は1番搬送と2番搬送があり、1番搬送は穀粒貯留部(籾タンク)に穀粒(単粒)を搬送し、2番搬送は選別部に混入穀粒などを搬送するものである。

一般に、1番搬送は横スクリュと縦スクリュが使われ、2番搬送は横スクリュと縦スクリュ、又はスロワ(一部の小型)が使われる。

また、2番搬送の横スクリュと縦スクリュの間に、穂切れ粒などを単粒にするための処理刃を設けたものがある。


右図例のように1番搬送は横送りと縦送りに分かれるが、穀粒の搬送が横移動から縦移動に切り換わるため、どうしても横スクリュ端と縦スクリュ下部は摩耗する。

この部分の摩耗が酷くなると、穀粒の搬送が十分に出来なくなるので詰まり易くなる。

状態に応じて、新品スクリュに交換する必要がある。


2番搬送についても同様の事が言える。

また、スロワ式は撥ね上げ板が摩耗する。

これも、摩耗が酷くなると詰まり易くなので、その場合は新部品に交換する。


他、ベアリングが摩耗してスクリュ軸ががたつく、ケースが摩耗して穴が開く、異物混入で詰まりスクリュが変形する、チェーン式ならチェーンが切れるなどがある。


一般に、コンバインは2番スクリュに回転センサを設けていて、規定の回転数以下になると、メータ・パネルやブザーで警告するようになっている。

つまり、詰まると回転数が下がるので、即座に分かるようになっている。

排ワラ処理部



排ワラ処理部は、脱穀された穀稈(ワラ)を機外へ排出する役割がある。

脱穀された穀稈は、排ワラ・チェーンによってそのまま機体後部に排出される、又は排ワラ切断装置(カッタ・ケース)に搬送され細かく切断される。

これは、任意でどちらかを選ぶようになっている。

機外(機体後部)に排出する場合、排ワラを一定量溜めて圃場へ落とすドロッパ装置や、バインダのようにノッタ・ビルで結束して圃場へ落とす結束装置がある。


排ワラ・チェーンは、株元側と穂先側にそれぞれ設けている。

株元側は一般的な搬送チェーンが使われ、穂先側は引起こし爪より小さい爪が付いたチェーンが使われる。

排ワラ・チェーン(株元)の調整と保守

負荷が大きいのは株元側の排ワラ・チェーンである。

チェーンを持ち上げて緩い場合は調整が必要になるが、排ワラ駆動ベルトの確認も同時にする。

排ワラ・チェーンは、調整不要の自動調整タイプと調整が必要な手動調整タイプがある。

手動調整タイプでチェーンを張る方法は、単に調整ボルトを締めてスプリングで押し込むだけのものや、アイドラを留めているボルトを緩めてから、シノなどでプレートを起こして、チェーンが張れたところでアイドラを留めているボルトを締めるといったものなどがある。

※調整に関しては、各メーカの指定の調整方法で行う。


使用時間過多になると、チェーンの繋ぎ目(コマ)一つ一つが擦り減り、擦り減った分だけ長くなるのでチェーンが伸びてくる。

また、駆動スプロケットやテンション・スプロケットの山が擦り減ってくる他、ベアリングが磨耗しガタつきを生じるようになる。

これらは、消耗具合によって交換する必要がある。


自動調整タイプは、チェーンが伸びて張りが不十分になってきたら、状態に応じて新品チェーンに交換する。

カッタ刃 排ワラ切断装置のは、右図例のように前側に掻き込み刃、後側に切断(カッタ)刃が決められた間隔で取り付けらている。

掻き込み刃はワラを掻き込む役割があり回転は遅い、また切断刃はワラを切断する役割があり回転が速い。


主に中型以上のコンバインなると、切断する長さを「短い」「長い」と切り換える事が出来る。

これは、切断軸に大小2種類の切断刃を設けて、掻き込み軸をずらして、掻き込み刃と切断刃との間隙を変える事により行っている。


切断刃は使用時間過多により摩耗するので、刃が丸くなってきたら新品に交換する。

切断刃が丸くなると切れ味が悪くなり、詰まりの原因になる。

穀粒排出部



穀粒排出部は、穀粒貯留部(籾タンク)に貯留された籾(単粒)を排出する役割がある。

籾タンクから落として袋詰めにされるものと、アンローダ(オーガ)でトラックなどに排出するものがある。

現在、主にアンローダで籾を排出するコンバインが使われる。

アン・ローダは横送り(籾タンク下部)、縦送り、横送りの順に回転するスクリュで籾を搬送する。

一般にアンローダの動作は、上下運動は油圧シリンダの力で、旋回運動は旋回モータ(電気)の力で動いてる。


アンローダ・ケース摺動部にはグリース・ニップルが付いているので、グリース・アップをする。

グリース・アップを何年も怠ると、摺動部が錆びなどで膠着し、アン・ローダが下がらなくなったり旋回しなくなることがある。

走行部



走行部は 、エンジンの動力がミッションを経由して駆動輪に伝達され、ゴム・クローラの芯金に駆動輪(スプロケット)が噛み合ってゴム・クローラを回転させ、機体を前後進させる装置である。

ゴム・クローラの接地圧は0.1~0.25kgf/cm2(11~26kPa) である。


中型以上のコンバインの多くは、傾斜センサで機体の傾きを感知し、機体を自動で水平に保つ自動水平(モンロ)制御装置が取り付けられている。

これは、油圧装置を使って機体が上下左右に動くものだが、走行部フレームと機体フレームを可動アーム4本(左2本、右2本)で連結し、これらの可動アームを油圧で上下させる事により行っている。

走行部の保守

クローラ中、大型使用条件によって異なるが、転輪や遊動輪は、200~300時間の使用でベアリングが破損して脱輪することがある。

つまり、もっと早い段階で、オイル・シール(泥水シール)が役目を果たさなくなっている事になる。

したがって、グリース・ニップルが付いているものは毎年グリース・アップするべきである。


使用時間過多や、水分の多い圃場などで無理な使い方を繰り返すと、右図例のように各箇所が傷んでくる。

また、ゴム・クローラも消耗品なので劣化する。

クローラの劣化 特に、ゴム・クローラが切れたり、右図のように芯金がめくれたりすると、圃場で身動きが取れなくなるので使用前には必ず確認する。

コンバインは左回りが基本なので、どうしても右側の駆動輪(転輪、遊動輪も同様)は擦り減り、ゴム・クローラも傷みやすい。


また、左側はこねるので転輪ベアリングに負担がかかる。


過去の記載→第19回:コンバイン足回りの遊動輪オーバ・ホールについて

上転輪がないクローラの張り具合(小型)

クローラ小型 小型コンバインなど上部転輪のないもの(右図例)は、ジャッキ・アップして上側中央部を片手で軽く押して、大体10~15㎜くらいのたわみになるように調整する。

※基本は、メーカ、機種が指定してるたわみ量に調整するのが望ましい。


張りが不十分だと、荒れた圃場で旋回時に外れる事がある。

実際には、真横から見て、上側中央部が少々垂れ下がってるくらいでも問題はない。

また、張り過ぎると遊動輪などのベアリングやゴム・クローラの負担が大きくなる。

上転輪があるクローラの張り具合(小型~大型)

張り量調整小型コンバインの上転輪があるタイプで、遊動輪が最後部転輪よりやや高い位置にあり、尚且つ離れているもの(右図例)は、ジャッキ・アップして後ろから2番目の転輪底面とクローラ内側表面との隙間が15~20㎜くらいのたわみになるように調整する。


中型、大型コンバインなど、遊動輪が最後部転輪の斜め上(直ぐ近く)に位置するものは、ジャッキ・アップして後ろから2番目の転輪底面とクローラ内側表面との隙間が20㎜くらいのたわみになるように調整する。

※基本は、メーカ、機種が指定してるたわみ量に調整するのが望ましい。


尚、ゴム・クローラを脱着した後の張り調整は、2回に分けて行う。

最初(1回目)にゴム・クローラを張った後、ジャッキ・アップした状態のまま再度安全を確認し、エンジンを始動してゆっくりゴム・クローラを1~2周程回転(前進または後進)させてエンジンを停止する。

これで再びたわみ量が大きくなるので、2回目の張り調整を行いたわみ量を確認する。


極端な張り不足だと、外れ易くなるばかりか、駆動輪が空転して旋回出来なくなる。

また、張り過ぎると遊動輪などのベアリングの摩耗が進み、ゴム・クローラの消耗が早くなる。


ゴム・クローラの脱着

ミッション関係



ミッションは主変速装置と副変速装置からなり、複数のギヤ等を使って走行するための動力を主に駆動輪に伝達する装置である。

主変速装置はHSTやパワー・シフトが使われる。

中型以上のコンバインでは、主にHSTを使った変速装置が使われる。

パワー・シフト

パワー・シフトは油圧ポンプを回して、その油圧で油圧バルブなどを作動させて歯車の違うギヤを噛み合わせ、ノー・クラッチ変速が出来るものである。

ノー・クラッチ変速なので足元ペダルを踏み込まずに変速(主変速)が可能だが、、変速時に多少の変速ショックとタイム・ラグを生じるのが特徴である。

そして、足元ペダルを踏み込んでのクラッチの入り切りは、主変速が何速になっていても、主変速レバーを操作しない限り変速を維持してクラッチを繋ぐことが出来る。


足元ペダルでの動力伝達は、エンジン側の出力軸プーリとミッション側の入力軸プーリにVベルトをかけて、足元ペダル(クラッチ兼、ブレーキ・ペダル)と連動したテンション・プーリでVベルトを張って行っている。

足元ペダルを踏み込むとVベルトが弛むので、ミッションに動力が伝わらない。

また、足元ペダルから足を離すとVベルトが張るので、ミッションに動力が伝わる。

HST(Hydro Static Transmission)

HSTは油圧ポンプを回して、その油圧ポンプから出された高圧油で油圧モータを回し、走行するための動力を得るものである。

HSTはノー・クラッチ変速が可能で、パワー・シフトのような変速時の変速ショックやタイム・ラグが無く、油量調整して変速を行うため、超低速から高速までスームズに変速出来るのが特徴である。

また、HSTの多くのものは、負荷や速度などの自動制御機構が組まれている。


多くのものは、足元ペダルを踏み込んでもクラッチが切れる構造ではなく、主変速レバーが強制的にニュートラル位置に戻り走行しなくなるようになっている。

これは、エンジン側の出力軸プーリとミッション側の入力軸プーリにVベルトがかけられ、常時テンション・プーリでVベルトを張っていて、足元ペダルとは連動していない。

足元ペダルは、駐車ブレーキをかけるためだけのものである。

また、HSTの特性で主変速レバーがニュートラル位置にいても、じわりと前後どちらかに動いてしまうことがあるので、停車して運転席から離れる場合は、駐車ブレーキをしっかりかけておく必要がある。


HSTでも、エンジン側の出力軸プーリとミッション側の入力軸プーリにVベルトをかけて、足元ペダルと連動したテンション・プーリでVベルトを張るタイプは例外である。

この場合、足元ペダルはクラッチ兼ブレーキ・ペダルになる。


過去の記載→第21回:コンバインのオイル交換について

一般的に、主変速装置にパワー・シフトやHSTを使うコンバインでは、副変速装置は選択摺動式などの機械的な切換で行う構造のものが多く使われる。

これらの副変速装置は、足元(ブレーキ)ペダルを一杯踏み込んで停止してから、副変速レバーを操作して変速する必要がある。

最近の大型コンバインでは、パワー・シフトとHSTの良いところを合わせたような装置で、例えば主変速の切換は油圧モータを使い、副変速の切換は、油圧バルブを使って湿式多板クラッチを切りギヤを換えるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)が使われるようになっている。

通常、HMTでの副変速の切換は、レバー操作ではなくスイッチ操作になっている。

これは、電磁(油圧)バルブを通電させて油路を開くからである。



一般にコンバインは、足元ペダルを踏み込むと左右のクラッチが同時に切れてから(HSTは例外あり)、左右のブレーキが同時にかかる仕組みになっている。

走行時に右に旋回する場合は、操作(ステアリング)レバーを右に少し倒せば、右のクラッチが切れて緩やかに曲がり、更に一杯倒すと右のブレーキがかかり、その場で旋回ができるようになっている。

左に旋回する場合は、同じように左のクラッチが切れと左のブレーキがかかる。

また、一部の大型コンバインでは、これらの機構を圃場の状態に合わせて旋回出来るように、旋回方式を変えることが出来る。

これは、旋回時にクラッチだけ切れブレーキを掛けないとか、内側のゴム・クローラを逆回転させて、より急旋回出来るものなどがある。


クラッチは湿式(油に浸されている)が使われ、ブレーキは乾式(油に触れていない)と湿式があるが、湿式が多く使われている。

中型以上のコンバインは、電磁弁で油の流れを変えてクラッチの入り切りを行っている。

作業クラッチ・レバー



作業クラッチ・レバーは大きく分けて 脱穀レバー刈取レバー籾排出レバーの3つがある。


脱穀レバーはミッションとは関係せず、エンジン側の出力軸プーリと脱穀入力軸プーリにVベルトが掛けられ、脱穀レバーと連動したテンション・プーリがVベルトを張り、扱ぎ胴や揺動棚などを作動させている。

このVベルトに圧風(トウミ)ファン、フィード・チェーン、排ワラ・チェーン、カッタ刃なども同時に、主にプーリとVベルトを介して連動して作動するようになっている。

メーカ、機種によっては(主に大型)脱穀レバーを使わず、モータを使ってテンション・プーリを作動させるものがある。


刈取レバーは、ミッション・ケース側からの刈取出力軸プーリと刈取部本体側からの刈取入力軸プーリにVベルトが掛けられ、刈取レバーと連動したテンション・プーリがVベルトを張り、刈取部の全てのチェーンを作動させている。

刈取作業をしていて、走行停止したら刈取部だけ動作が止まるのは、ミッション・ケース内のギヤを介してから動力伝達されるからである。

したがって、点検などで刈取部を作動させるには、副変速をニュートラルにして走行主変速レバーを前進に入れればよい。

メーカ、機種によっては(主に大型)刈取レバーを使わず、モータを使ってテンション・プーリを作動させるものがある。

また、主に中型以上のコンバインでは、ミッション・ケースの刈取出力軸プーリにカム・クラッチが使われ、前進時のみ回転し後進時には回転しないようになっている。


籾排出レバーはミッションとは関係せず、エンジン側の出力軸プーリとカウンタ・ギヤ・ケース入力軸プーリにVベルトが掛けられている。

そして、カウンタ・ギヤ・ケース出力軸プーリとアンローダ入力軸プーリにもVベルトが掛けられ、籾排出レバーと連動したテンション・プーリがVベルトを張り、アンローダのスクリュを回転させている。

小型のコンバインではカウンタ・ギヤ・ケースを設けず、エンジン側の出力軸プーリとアンローダ入力軸プーリにVベルトが掛けられ、籾排出レバーと連動したテンション・プーリがVベルトを張り、アンローダのスクリュを回転させている。

メーカ、機種によっては(主に大型)籾排出レバーを使わず、モータを使ってテンション・プーリを作動させるものがある。



作成日:2007/11