インジェクション・ノズルは、ノズル・ホルダに組み込まれてシリンダ・へッドに取り付けられ、インジェクション・ポンプから送られてくる高圧の燃料を、燃焼に最適な状態で燃焼室に噴射するものである。
ノズルの特性
農業機械で使われるディーゼル・エンジンは、主に閉止型の自動開閉ノズルが使用される。
噴口形状は下記のものがある。
ピントル・ノズル、スロットル・ノズル
ピントル・ノズルは、左図のようにノズル・ボディの下部中央に直径1㎜くらいの噴口がある。
規定の噴射開始圧力になると、ニードル・バルブの円錐面に燃料による圧力がかかり、ニードル・バルブが押し上げられて噴口から燃料を噴射する。
ニードル・バルブの先端は真っすぐで噴口より少し飛び出していて、下図のように噴口部と噴口軸が短く、噴射初期から多量の燃料が噴射されるようになっている。
着火遅れ中に噴射される燃料が多くなる事から、ディーゼル・ノックを起こし易いと言える。
スロットル・ノズルもピントル・ノズル同様にノズル・ボディの下部中央に直径1㎜くらいの噴口がある。
噴射の仕組みもピントル・ノズルと同様である。
ニードル・バルブの先端は、噴口より少し小さく円錐状をした細い軸になっていて、噴口より少し飛び出している。
右図のように噴口部と噴口軸は、ピントル・ノズルとは違い長くなっていて、噴射初期の噴射量を少なくする事が出来る。
着火遅れ中に噴射される燃料が少なくなる事から、ディーゼル・ノックを起こし難いと言える。
インジェクション・ポンプから送られてくる燃料の圧力が、ノズルの噴射開始圧力まで上昇するとニードル・バルブは押し上げられる。
この時燃料は、噴口と噴口軸との間に出来るリング状の隙間を通り噴射される。
ニードル・バルブの押し上げ量が小さい噴射初期は、リング状の隙間はとても狭く噴射量を少なく制御出来る。
そして、押し上げ量が多くなるとリング状の隙間は大きくなり主噴射される。
ピントウ・ノズル
ピントウ・ノズルは、左図のようにノズル・ボディの下部中央に直径1㎜くらいの主噴口と、その横に副噴口がある。
規定の噴射開始圧力になると、前項のノズル同様にニードル・バルブを押し上げ噴口から燃料を噴射する。
スロットル・ノズルは、主噴口とニードル・バルブのリング状の隙間よりスロットル行程の噴射を行なってるが、ピントウ・ノズルは副噴口からスロットル行程の噴射をしている。
回転が上がるとスロットル行程時間が短くなり、多くは主噴口での噴射になる。
ピントウ・ノズルは渦流室に取り付けられ上流式と下流式がある。
上流式は、副噴口をスワール(空気流動)の上流に向け、圧縮空気と混合し易くして着火性を良くしている。
また、下流式は反対に副噴口をスワールの下流に向け、燃料を燃焼室の壁面に衝突させて壁に油膜を張り、その油膜が穏やかに燃焼するので、低速時のディーゼル・ノックや振動を起き難くしている。
ホーン・ノズル
ホーン・ノズルは、左図のようにノズル・ボディの噴口部が膨らんでいて、数個の噴口がが設けられている。
また、ニードル・バルブの先端は円錐状になっていて、前項のノズルと同様に規定の噴射開始圧力になると、ニードル・バルブを押し上げ噴口から燃料を噴射する。
ホーン・ノズルの噴口の形状と方向は、燃焼室形状に応じて最もよい燃焼状態を得られるように決められているので、燃焼室に対して取り付ける位置(方向)が決まっている。
ホーン・ノズルには、左図のようなロング・ステム・ノズルがあり、過熱を防ぐため標準型よりノズル・ボディが長く、主に産業機械のエンジンに使われる。
他、冷却型ノズルというものがあるが、過熱を防ぐためにノズル・ボディに冷却油路を設けていて、大型船舶や大型発電機のエンジンに使われる。
ノズル・ボルダは、インジェクション・ノズルをシリンダ・ヘッドに取り付け固定している。
ノズル・ホルダには、燃料をインジェクション・ノズルまで送るための通路が設けられ、入口には、燃料をろ過するためのフィルタが組み込まれている。
インジェクション・ノズルから噴射し余った燃料は、ニードル・バルブや、ノズル・ボディを潤滑しながらオーバフロー・パイプを通り、燃料タンク、インジェクション・ポンプなどに戻され、再びノズル・ボルダに入り、インジェクション・ノズルから噴射される。
ノズル・ホルダは、インジェクション・ノズルの噴射開始圧力を調整出来るようになっている。
取り付け方法の種類
噴射開始圧力の調整種類