籾摺機とは、適正な水分値に乾燥させた籾を脱ぷする機械で、ゴム・ロール式が主流である。
ゴム・ロール式は、回転数の違う2つのゴム・ロールを適正な隙間をあけて配置し、その隙間に籾を通す事で脱ぷするもので、間隙調整は手動と自動がある。
籾摺機は玄米を排出するために選別する必要があるが、その方式は揺動式、回動式、エア式などがある。
一般に、籾摺機の能力はゴム・ロールの大きさで表される。
ゴム・ロールの大きさは2インチ半~8インチくらいがあり、大きいほど時間当たりの作業能率が上がる。
電源は主に3相200Vが使われるが、3インチまでなら単相200Vでも使う事が出来る。
また、3~4インチ程なら1.9~2.2kwのモータ出力で使う事が出来るが、それ以上では更に出力の大きいモータが必要になる。
乾燥籾は籾供給口シャッタが開くと、左右の回転数が違うゴム・ロール間を通過して次々と脱ぷされる。
しかし、適正な隙間に調整されたゴム・ロール間を通過する籾は、全てが脱ぷされる訳でなく、シイナを含めた1~2割の籾はそのまま通過する。
脱ぷされた玄米とそのまま通過した籾は、「3」の1番横送りスクリュの上に落ちる。
この時、籾殻とシイナは送風機ファンの風圧で吸い上げられ、籾殻は軽いので機外へ排出され、シイナは「3b」の2番横送りスクリュの上に落ちる。
シイナは、「3b」の2番横送りスクリュでそのまま機外に排出される。
また、リターン装置付きの籾摺機では、シイナは「8b」の返り籾スロワに戻り、再び「1」へ送られ脱ぷされる。
「3」の1番横送りスクリュの上に落ちた玄米と籾は、「4」の昇降機で「5」の吊りタンクまで上げられ、次々と「6」の選別板の上に送られる。
揺動する「6」の選別板の上で玄米と籾に選別され、「7」「7a」「7b」の3つの落とし口に送られる。
「7」の落とし口には玄米が落ち、「7a」の落とし口には玄米と籾が混じった混合米が落ち、「7b」の落とし口には籾が落ちる。
「7」の落とし口には落ちた玄米は、「8」 の玄米排出スロワから機外へ排出され、選別計量機に送られる。
「7a」 の落とし口に落ちた混合米は、「3」 の1番横送りスクリュの上に落ち、再び「6」の選別板で選別される。
「7b」の落とし口に落ちた籾は、「8b」の返り籾スロワから再び「1」へ送られ脱ぷされる。
通常、「5」 の吊りタンク内の玄米と籾の量が増えてくると、連動して「1」上の供給口シャッタの開度が狭くなる。
これは、供給量と排出量のバランスを自動でとって詰まらないようにしている。
運転のポイント
送風量
籾摺機において送風量の調整はとても重要である。
籾殻が排出されず循環するようでは詰まってしまうからである。
送風機ダクトを確実に設置した上で、風力の調整は以下の方法で行う。
送風量の調整は、送風量調整ネジを緩めて調節板の位置を変える事で行う。
逆に、風力が強すぎると玄米まで飛んで行く(実際はそこまで強くならない)ので、その場合は風量を下げる。
2番排出口から玄米が混ざり出る場合も風力がやや強いという事なる。
このように運転(籾摺り)しながらの調整になるので、最初に風力をある程度強めにしておいてから調整に入るのが無難である。
2番排出口から出た未熟米(シイナ)等は、箕などで再びホッパに入れて脱ぷさせれば良いが、殆どが選別計量機で屑米として選別される。
送風機ダクトは曲げる、または長くなる程、多くの送風量(強い風力)が必要になり機械的な負担が増す。
したがって、送風機ダクトは径を小さくせず、なるべく真っすぐ取り付け、あまり長くしないのが理想である。
また、空気が漏れないようにガムテープなどでしっかり留める事も大事である。
送風機ダクトを長くせざるを得ない場合は、送風機のプーリ幅を変えて回転数を速くすることである程度は対応できるが、個別で送風機を設けて風力を補助する方法もある。
ゴム・ロールは、左右のロールの回転差による周速度の違いで脱ぷするが、左右のゴム・ロール間は適正な隙間量(0.8~1.2㎜)でないといけない。
狭過ぎると脱ぷ率は良くなるが、玄米は傷が付き割れ易くなる。
また、広過ぎると能率が悪くなる。
ゴム・ロールの間隙量の調整は、以下の方法で行う。
籾摺りを始め、選別板全体に玄米と籾が行き渡るまで待つ。
そして、選別板の玄米と籾の位置が左図のようになれば良いが、そうでない場合は微調整する。
1~2時間程籾摺りして籾の位置が上がってきたら、ロール間隙調整ダイヤルを1目盛「閉」に回す。
以後、これを繰り返す。
ゴム・ロール
ゴム・ロールは消耗品なので、脱ぷ出来なくなったら交換する必要がある。
ゴム・ロールは、ロール・ステイに固定ボルトで取り付けてあるが、取り外しには延長ソケット(エクステンション・バー)が必要である。
ゴム・ロールの交換は、電動インパクトを使って簡単に出来るが、無い場合は以下の方法で行える。
ロール間隙調整ダイヤルを程良く閉めて、ロールが共回りしないようにしてからロール固定ボルトを全て緩める。
それでも共回りするようなら、密着した2つのロールの間に適当な大きさのレンチ(モンキ・レンチの柄など)を挟み込むようにして行う。
ロール間隙調整ダイヤルをロールが外れる位置まで開き、ロール固定ボルトを外しロールを外す。
2つの新品ロールをロール・ステイに確実に取り付け、ロール固定ボルトを締まるところまで締める。
再びロール間隙調整ダイヤルを程良く閉めて、ロールが共回りしないようにしてから、ロール固定ボルトを確実に本締めする。
そして、ロール間隙調整ダイヤルを2つのロールが離れるまで開く。
自動ロール間隙調整のものは、手動に切り替えてから上記手順で行える。
ゴム・ロールは、なるべく2つ同時に交換する。
過去の記載→第17回:籾摺り機のゴム・ロールの交換方法
昇降機バケット・ベルト
バケット・ベルトは、使用時間が進むにつれて少しづつ伸びてくる。
バケット・ベルトが伸びてくると、滑りを生じ易くなり詰まりの原因になる。
バケット・ベルトの張り調整は、以下の方法で行える。
昇降機真ん中の点検口を外し、指でバケットを軽く引き10㎜位のたわみになるように、左右の張り調整ボルトを回す。
そして、昇降機プーリを手で正方向に回しながら、昇降機上部点検口からバケット・ベルトを見て芯出しをする。
昇降機の真ん中と下部からもバケット・ベルトが大体芯が出ているか確認する。
その他には、サタケ籾摺機の昇降機のように、張り調整ボルトの平座が昇降機上部面に軽く接触する程度(スプリングが見えなくなるまで)まで締める事で、適正な張り量に調整出来るものなどがある。
スロワ
スロワの羽ゴム(ブレード)は、使用時間が進むにつれて少しづつ摩耗してくる。
また、スロワ・ケースも摩耗し穴が開く。
羽ゴムの調整(交換)は、以下の方法で行う。
羽ゴムを1周させケース内面と羽ゴムの隙間が一番狭い位置で、約1㎜の隙間になるように調整する。
羽ゴムの固定ボルトを緩め、羽ゴムを手で動かして隙間を合わしてから固定ボルトを締める。
全ての羽ゴムを同じ位置で調整する。
摩耗の酷いものは交換する。
実際にはある程度隙間があっても問題なく使えるので、然程気にする必要はない。
籾摺機は、1つのモータでベルトを介して全てを作動させているので、どれ1つ滞っても全体が影響を受ける。
何らかの原因で詰まって停止した場合、運転レバーは開いたままになっているので、詰まりを取り除いて原因を解決したとしても、それとは別に運転レバーを閉じてロールの上に溜まった籾を取り除かない限り、モータは唸るだけで回らない。
また、
つまり、手で回せない箇所があるなら、そこが未だ詰まっている事になる。
上手な使い方としては、選別板の動きやモータ音の変化などで詰まる前兆を逸早く察知して、詰まり停止する前に運転レバーを閉じ、モータのスイッチをOFFにする事である。
電流計のあるものは、その指針を見てると過負荷(詰まり前兆)が早く分かるので便利である。
症状 | 原因 | 対処 |
モータが回らない | ①電気がモータまで来ていない、欠相している ②モータの故障 |
①差込プラグ、電源元ヒューズ、キャブタイヤ、電源スイッチ点検 ②交換 |
モータが回らない …運転、調整ミスによる詰まり |
①モータを回す前に運転レバーを入れた事によるロール上での詰まり ②運転レバーを閉じる前にモータを止めた事によるロール上での詰まり ③2番排出口の蓋が閉じてある ④送風量調整間違いによる籾殻循環詰まり ⑤タンク混合米排出量とロール入口籾供給量のバランスが極端に悪い (昇降機で詰まる) |
①運転レバーを閉め、ロール一括開閉レバーを引きモータを回す 一括開閉レバーが無い機械はロール正面ケースを開け籾を出す ②①と同様 他、昇降機(スロワ)下部掃除口から詰まりを取る ③蓋を開け詰まりを取る ④調整、上記赤字 ⑤供給量調整、上記赤字 |
モータが回らない …整備不良による詰まり |
①昇降機バケットの摩耗 ②昇降機バケット・ベルトの緩み、片寄り、亀裂 ③各ベルトの消耗、亀裂 ④選別板が動かない、鈍いなどによるタンク内混合米詰まり、昇降機詰まり ⑤返り籾スロワの詰まり ⑥玄米排出スロワの詰まり ⑦横送りスクリュの摩耗 ⑧各ベアリングの焼付き、破損 ⑨吊タンクと供給量連結ロッドの外れによる過度の供給 ⑩掻き込みロールが回らない事によるロール上での詰まり |
①交換、上記赤字 ②調整、交換、上記赤字 ③交換、上記赤字 ④ベルト、テンション点検、交換、上記赤字 ⑤羽ゴム隙間調整、交換 ⑥羽ゴム隙間調整、交換 ⑦交換、上記赤字 ⑧交換、上記赤字 ⑨取付、上記赤字 ⑩ベルト点検、交換、上記赤字 |
モータが回らない …その他の詰まり |
①風の影響による送風量不安定での籾殻循環詰まり ②昇降機(スロワ)の異物混入による詰まり ③返り籾スロワ、その入口出口の異物混入による詰まり ④玄米排出スロワ、その入口出口の異物混入による詰まり ⑤籾の水分が16.5%(大凡)以上あり、全体的に動きが重い (主にスロワを使用している小型機) |
①風の影響を受けない設置にする ②掃除、上記赤字 ③掃除 ④掃除 ⑤再乾燥 |
選別板から籾がこぼれる | ①選別板ベルトの磨耗、亀裂により選別板の動きが悪い ②選別板に隙間がある。 |
①点検、交換 ②隙間テープなどで塞ぐ |
選別が悪い …籾が高い |
①ロールの磨耗 ②ロール調整不良 ③送風量が弱く選別板に籾殻が混じる ④返り籾スロワ入口(選別板からの籾の落ち口)での詰まり ⑤選別板の選別面摩耗 |
①左右入替、交換 ②調整(閉める) ③送風量を強く、ベルトの点検 ④詰まり除去 ⑤交換 |
選別が悪い …量が少ない |
①籾の供給量が少なすぎる、途切れる ②吊タンクの吊りバネが弱すぎる ③吊りタンクと籾供給口シャッタの連結部ロッド又はバネの破損、外れ ④極端に傾いた本体の設置 |
①多くする、途切らさない ②強めに調整 ③交換、付け直し ④設置のやり直し |
2番排出の未熟粒が多い | ①その年、場所、天候、肥料などの影響により籾の実りが違う | ①2番排出量調整ネジを「減」にする、または諦める |
2番排出口から籾殻が出る | ①送風量が弱い | ①送風量を強く、ベルトの点検 |
2番排出口から玄米が出る | ①送風量が強い | ①送風量を弱く、ベルトの点検 |
割れた玄米が排出される | ①ロールの損傷、磨耗、閉め過ぎ ②返り籾スロワの羽ゴムの磨耗 |
①交換、調整、ベルトの点検 ②調整、交換、ベルトの点検 |