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充電装置



農業機械は自動車同様電源としてバッテリが使用されるが、バッテリは充電せずに使用すると能力がどんどん落ち、最後には使用不可になる。

これを防ぐために、エンジン運転中は発電機を回転させてバッテリを充電し続け、さらに他の様々な電装品負荷に電気を供給している。

農業機械や自動車で使われる発電機は交流発電機で、一般にオルタネータやACジェネレータと呼ばれる。

また、ダイナモと呼ばれる事もあるが、これは直流発電機の事になるので違うものである。


交流発電機は単相交流と3相交流があり、エンジンのクランク・プーリからVベルトによって駆動され、その回転速度はエンジンの約2倍である。

トラクタやコンバインなどの農業機械では主に3相交流のものが使われるが、比較的小型の機械には単相交流のものも使われる。

ICオルタネータ左写真のものが、一般的にオルタネータと呼ばれる発電機である。

通常オルタネータは3相交流の電圧を発生させ、内部ダイオードで全波整流して直流に変換し、ロータ・コイルへの電流制御を内蔵のICレギュレータで行い、エンジン回転に関係なく安定した電圧を発生し維持できる。

つまり、3相交流を発電するには、バッテリ電圧でロータ・コイルを励磁する必要があるが、そのロータ・コイルに流す電流を制御する事により発生電圧を変化させる事が出来る構造になっている。

ICレギュレータが回転数や負荷に応じたロータ・コイルの励磁をするので、エンジン回転に関係なく安定した電圧を維持できるメリットがある。

そのため、ICレギュレータ付きオルタネータが現在最も使われる発電充電装置である。

ACジェネレータ(マグネット・ジェネレータ)左写真のものは、一般的にACジェネレータと呼ばれる発電機である。

ACジェネレータは単相交流(3相のものもある)の電圧を発生させるだけのもので、直流への変換(整流)と電流電圧の制御は外部に設けたレクチファイアとレギュレータで行う。

通常、レクチファイア(整流)とレギュレータ(電流電圧制御)は一つのユニットで構成されている。

ロータが永久磁石になっているので、自力で単相交流電圧を発電出来るメリットがあるが、性質上エンジン回転の変化で発電量も大きく変化してしまう。

発生電圧の大きな変化は、安定した電圧を維持する役目があるレギュレータが構造上どうしても熱を持ち易いので、悪く言えばレギュレータが故障し易い。

また、バッテリが完全放電した機械にジャンプ・スタータなどでエンジンをかけて作業すると、バッテリに充電できないためレギュレータが故障する可能があるので注意が必要である。

発電、充電装置の構造
ICレギュレータ付オルタネータの回路例
ICレギュレータ付オルタネータの点検



◎発電、充電装置の構造



オルタネータ



現在、農業機械で多く使われるオルタネータは、単体では発電できない他励式発電機なので必ずDC12Vバッテリが必要である。

左下図のオルタネータは別にジェネレータ・レギュレータが必要な旧式タイプであるが、現在主流のICレギュレータ付(内蔵式)オルタネータと基本は同じである。

オルタネータロータ


クランク・プーリからVベルトを介して回されるところであり、軸であるロータ・シャフトの両端をベアリングで保持し、スリップ・リング(ブラシに圧される面、外周)、ロータ・コア(磁極)、ロータ・コイル(フィールド・コイル)から成る。

ロータ・コイルはバッテリからの電流で磁束を発生する部分で、コイル両端はスリップ・リングにつながれている。

このロータ・コイルにバッテリ電圧(DC12V)がかからないとオルタネータは発電できないので、とても重要な部品である。

ステータ


ステータ・コアとステータ・コイルから成り、エンド・フレームに固定されている。

ステータ・コアは成層鉄心で、ロータ・コアと共に磁気回路を形成している。

ステータ・コイルはコア内側の溝に3個の独立したコイルが付き、Υ(スター)結線で接続されていて、ロータが回転する事でロータ・コアから出た磁束がステータコイルと交差して3相交流を発電する。

ダイオード


ホルダ(ヒート・シンク)にプラス側とマイナス側それぞれ3個ずつ付いている。

ステータ・コイルに発生した3相交流を直流に整流するものである。

ブラシ


常にブラシ・ホルダ内スプリングに押されながら、スリップ・リングに接触し、バッテリ電圧をロータ・コイルへと通電する部分である。

そのため、使用時間に比例して摩耗する消耗品である。

ファン


ロータ・シャフトに固定され、エンド・フレーム外部または、内部(現在の主流)に配置されオルタネータを冷やしている。

ジェネレータ・レギュレータ


ボルテージ・レギュレータとボルテージ・リレーから成り、オルタネータとは別物の単体ユニットである。

ボルテージ・レギュレータは、オルタネータの発生電圧を規定値に保つ装置である。

ボルテージ・リレーは、チャージ・ランプの制御とボルテージ・レギュレータのコイル電流の断続を行っている。

エンジンの回転が上がると発生電圧も上がるが、ジェネレータ・レギュレータは規定値を越えた電流(余った電流)をバッテリに流し(充電)、発生電圧を整えている。


現在主流のICレギュレータは、この作用をIC制御で行い、オルタネータのエンド・フレーム外側に取り付けたものや内装したものがある。

ジェネレータ・レギュレータはリレーを使う接点式だが、ICレギュレータはトランジスタ(Tr)やダイオード(D)などを使う集積回路なので接点がない。



◎ICレギュレータ付オルタネータの回路例(初期型の3ダイオード励磁方式)



ICレギュレータ式オルタネータの回路

動作説明
(現在はチャージ・ランプ・リレーもなく、ICレギュレータにまとめられたものが主流である。)

イグニション・スイッチ(IG・SW)をオン、エンジン停止
IG・SWを入れると、バッテリからの電流はオルタネータのIG端子とチャージ・ランプ・リレー(C・L・R)のIG端子、A端子を通りオルタネータのL端子へ流れる。

そのL端子から入ってきた電流の一部が、ICレギュレータのL端子を通りTr2のベース端子へ流れるため、Tr2のコレクタ、エミッタ端子間にロータ・コイルから来た電流が流れ励磁される。

そして、C・L・Rの接点が閉じチャージ・ランプ(C・L)が点灯する。

初期励磁抵抗はロータ・コイルに流れる電流を制限し、IG・SWの切り忘れ時の無駄な放電を防いでいる。
エンジン運転、オルタネータが発電を開始
オルタネータの発生電圧がバッテリの端子電圧以上になると、B端子からバッテリへ充電が始まる。

この状態になると、励磁Dを経由してオルタネータのL端子の電圧も上がり、C・L・RのIG端子間の電圧差がなくなり、C・L・R内コイルに電流が流れず接点は開きC・Lが消灯する。

ステータ・コイルの電圧が励磁Dを通るが、逆流防止用Dの働きによってバッテリや負荷には流れず、ロータ・コイルとレギュレータのL端子へ流れる。
エンジン運転、オルタネータの発生電圧を調整
オルタネータの発生電圧が上昇するとその電圧を調整しようとする。

この時、レギュレータのS端子から抵抗、ツェナ・ダイオード(Z・D)を通りTr1のベース端子に電流が流れるため、Tr1のコレクタ、エミッタ端子間に電流が流れる。

このTr1のコレクタ端子の手前で、今までTr2を働かせるために保っていた電位はTr1が働いたため急激に低下し、Tr2のベース端子に流れず、つまりTr2は働かなくなり、ロータ・コイルへ電流が遮断され発生電圧が低下する。

オルタネータの発生電圧が低下すると、Z・D、Tr1に電流が流れなくなりTr2が働く。

このように、Tr1とTr2が交互に働きロータ・コイルの電流を断続して発生電圧を調整している。



◎ICレギュレータ付オルタネータの点検



無負荷発生電圧の測定無負荷発生電圧の測定


オルタネータのB端子、2Pコネクタを外さずにそのままの状態で、左図のように、B端子と2PコネクタのIG端子を適当なリード線でつなぐ。

IG端子は2Pコネクタの線側から差し込む感じの固定で良い。

エンジンを始動させ、アイドリング状態でバッテリのマイナスターミナルを外す。

左図のように、B端子と車体間の電圧をテスタで測定する。

DC13~14Vあれば良しとする。

それ以下ならオルタネータのオーバホール、又は交換が必要になる。

また、それ以上なら内蔵のICレギュレータが故障している可能性がある。

ICレギュレータ付オルタネータの簡易点検
(ファン・ベルトは損傷、張り共に異常がない状態)


エンジンを始動させて、バッテリの電圧をテスタで測定する。

エンジン停止時のバッテリ電圧より、エンジン始動時のバッテリ電圧が高いか測定する。


例:エンジン停止時12.7V→アイドリング時~高回転時14V

このようにバッテリ電圧が1V以上変化すれば、オルタネータ、ICレギュレータは正常と判断して良い。


現在のオルタネータは、エンジン回転数に関係なく発生電圧を一定に保つようになっている。



作成日:2006/11